第218話 言われてみれば……

 正直、ラーメンを作るって言っても、特に面倒な工程とかない。

 何故なら俺が既に終わらせてしまっているから。


「お湯を沸かして、その間に上に乗せる野菜の準備しましょうか」


 というわけでラベンドラさんにそう指示を出し、鍋に水張ってお湯を沸かしていく。

 これは麺を茹でる用ね。ちなみにコンロ二口態勢。

 それとは別にケトルでお湯を沸かしていく。こっちはスープ用。


「? ……ラーメンなのだろう?」

「ですよ?」


 で、なんでラベンドラさんは鍋の前で固まっておられるので?

 何か分からん事でも?


「お湯を注いで待つだけだったのでは?」


 あ、なるほどな。

 ラベンドラさん達の中だと『ラーメン』=『カップヌードル』なのか。

 確かに、それしか食べた事無いし見た事無いんだからそうなっちゃうよな。


「あれはなんと言うか、保存食でして。お湯を注げばどこでも食べられるので、普段食べるのはもちろん、色んな災害の時にも食べるやつです」


 日本は一億食とか保存してるんじゃないっけ?

 どこかでそれらしきことを読んだ気がする。


「という事は、ラーメンとはあのような食べ物ではない?」

「いえいえ、あれも立派なラーメンですよ」


 カップヌードルをラーメンじゃないって言う日本人は居ないんじゃないかな?

 店で出されるラーメンかって言われたら違うって答えはすると思う。

 でも、普通にスーパーとかでは買うけども。


「とりあえず、前に食べたラーメンではないのだな?」

「ですです」


 とりあえず納得してもらったようなので、野菜を炒めて貰う。

 たっぷりのもやし、キャベツ、そして人参。

 それらをしんなりするまで炒めてもらい、軽く塩コショウ。


「お湯が沸騰しているぞ」


 鍋のお湯も沸いたので、こちらに袋麵を投入。

 一つの鍋に五人前をぶち込みまして。

 都合十人前の麺を茹でていく。

 ……俺はそんなに食わんよ?

 でもこの四人なら、当たり前にペロリしそうだなぁって思いましてね?


「野菜はどうするのだ?」

「麺を盛った後に乗せます」


 野菜も仕上がり、後は麺の茹で上がりを待つだけっと。

 常温放置してた煮卵とチャーシューを持ってきまして、煮卵を漬けてたタレを丼にスプーン二杯……もうちょっとか、三杯入れて。

 お湯を注ぐだけの豚骨スープをそこに入れ、お湯を注いでスープの完成。


「美味そうな匂いだ」

「今まで嗅いだことのない香りですわ」


 で、嗅覚敏感エルフズが即座に反応。

 豚骨の匂いなぁ……。

 なんと言うか、ほんの少しだよ? ほんの少しだけ苦手なんだよね。

 こう、美味しいって言うのは分かる匂いなんだけどさ、若干臭いじゃん?

 独特の臭さが、ほんの少しだけ受け入れられないんだ。

 美味しいんだけどね、味は。


「かなり濁ったスープだな」

「豚の骨を煮出したスープです。濃厚で美味しいですよ」


 興味津々にスープを観察しているラベンドラさんに、軽く説明。

 あ、豚骨ガチ勢の方はお帰りください。

 豚骨スープとしか書いて無いから、このスープが博多豚骨なのか久留米豚骨なのかとか分かんないです。

 長浜では無さそう、とだけ。


「麺も茹で上がったぞ」


 で、そうこうしている内に麺が茹で上がりまして。

 ラベンドラさんの魔法で鍋から麺だけを引き上げ、五等分にして丼へ。

 ……魔法がズルすぎる。

 何がズルいって、鍋から引き上げた麺にお湯が一切絡んでない。

 なんでも、


「対象を麺だけに指定したからな」


 との事らしい。

 湯切り要らずって相当に便利だぞ?

 ……て、ちょっと待って。


「あ、俺の麺もう少し少なくて大丈夫です」


 俺のは麺少な目で。

 当たり前に二人前の麺入れられても食える気しないんよ。


「む、そうか」


 というわけで再び麺が空中浮遊。

 当然、お湯と同じようにスープとか一切絡んでない。

 手品かな? 魔法だよ。


「そしたら、この上にさっき炒めた野菜を山盛りにします」


 ここからは俺の記憶にある二郎系ラーメンを再現していく。

 まずは野菜を山盛りに。

 その側面に、切ったチャーシューを張り付けて。

 煮卵を半分に切り、それらをスープに浮かべていく。

 ちなみに俺以外の四人には卵二個。俺だけ一個。

 ……お昼に卵料理、食べたしね。

 あとはここに、スーパーで見つけた瓶詰のニンニク背脂を乗せて完成!!

 瓶詰だからか、開けたら一気にニンニクの香りが漂って来てさ。

 条件反射でお腹がグー。

 はよ食べたい。


「これで完成です」

「きょ、凶悪なビジュアルだな」


 完成品に対するラベンドラさんの感想が面白いな。

 凶悪なビジュアルだってよ。ワイトもそう思います。


「それがカケルの作ったラーメンか」

「私たちがいただいたものと、随分違いますのね」

「わしの本能が叫ぶんじゃ!! 絶対に美味い!! 今すぐ掻っ込めと!!」


 というわけで全員にお箸を渡し、食べようって時に、


「? ラベンドラ?」


 全然テーブルに着かないラベンドラさん。

 何してるかと思えば、


「……ほぼパスタでは?」


 どうやら袋麺の材料を読んでいたらしい。

 あの、あまり変な事言わないでいただけます?

 僕まだ欧州と戦争したくなひ。

 まだと言うか、未来永劫したくないので……。

 あちらの方々にケンカを売るのはやめてもろて……。


「何をしている! 早く食うぞ!!」

「わ、分かった……」


 我慢の限界が来たマジャリスさんに強く言われ、ようやくラベンドラさんがテーブルに着き。


「「いただきます!!」」


 全員ハモって、食事を開始する宣言をするのだった。

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