第256話 ひっくり返したれやぁぁぁ!!
「む、今日は既に準備が出来ているのか?」
魔法陣を潜り現れたラベンドラさんは。
テーブルの上のホットプレートと、すでに用意されたお好み焼きの生地からそう判断したらしく。
「です。あとは焼くだけですね」
という俺の言葉に、生地の作り方は? と目で訴えてくる。
「えぇと……刻んだキャベツや人参、もやしなどを小麦粉を水で溶いた物の中に混ぜてます」
……大体合ってるよな? こんな感じの表現で。
「なるほど」
「それで? そのまま焼くだけですの?」
「です。先にお肉やらを焼いて、その上に生地を流して、固めに焼けたらひっくり返す。もう片面も焼けたら完成ですね」
「聞くより見た方が早いわい」
だそうなので、一度俺がデモンストレーション。
まずは豚肉を二枚引いて、片面が焼けるまで待ち。
焼けたらひっくり返して、その上から生地を流しまして。
焼けるまで適当に待ちつつ、焼けたらひっくり返すっと。
――てかさ、
「そうまじまじと見られるとやりづらいというか……」
そうガン見しなくていいじゃん?
変に緊張するって。
「いや、焼き加減などを把握する必要がある」
「単純に興味が湧いているだけですわ」
「ひっくり返すのだろう? ほら、早く」
マジャリスさんは煽らないの。万が一失敗したらどうするのさ。
……よっと。よし、綺麗にひっくり返せた。
「で、焼けたら完成ですね」
「なるほど。理解した」
「具材はお肉だけなのでしょうか?」
「一応シーフードも用意しましたけど」
「シーフードも先に焼いた方がいいのか?」
「シーフードは生地に混ぜちゃってもいいと思いますね。豚肉はしっかり火を通さないとダメなので」
という、ある程度のお好み焼き具談義をした後、いよいよラベンドラさん達も焼き始めることに。
「あまり生地を流し過ぎると焼くのに時間がかかるので、控えめがいいですよ」
「確かに」
「私は最初シーフードからいきますわ」
「わしは当然肉じゃわい」
「カケル、両方というのは有りか?」
「大いに有りです」
てなわけで各々焼き始める中、俺のは完成したので、お皿にあげまして。
お好み焼きソースをビューッ! のマヨネーズをビーッ!!
鰹節ファサァッ! の青のりパッパ。
完成! お好み焼きスタンダード!
「それじゃあお先しまして、いただきます」
デモとして焼いてた都合上、俺のが誰よりも出来るの早いからさ。
そのままいただいたわけ。
で、味なんだけど……。
「美味い」
そりゃあもう、ね。不味いはずないよね。
なんたってお好み焼きだぜ? 不味く作る方が無理じゃろ。
マンドラゴラの頭葉……まぁキャベツなんだけども。
このキャベツがかなり味が濃くてさ。
主に甘みが、ソースの味の後ろからじんわり進出してくる感じ。
キャベツっぽい青臭さって言うの? あの野菜感のある匂いは全然しなくて、甘さとうま味しか感じない。
後から来た人参もいい感じだなこれ。人参はちょっと特有の匂いはしたけど、逆にそれが人参も居ますよーって主張になってる。
もやしの瑞々しさもあるしで、生地に混ぜられたとはいえこのマンドラゴラたち、屈してない。
お好み焼きに使われたとて、抗ってやがる。
現代料理に。
「よっ!」
「ふん」
「それー」
「ほい」
で、四人は各々ひっくり返しタイム。
……ガブロさん以外魔法で宙に浮かせてひっくり返してるけどね。
やっぱ魔法ってズルいよ。
そう言うの、いけないと思いますボク。
「カケルの食べているお好み焼きのビジュアルがほとんどテロだ」
「早く食いたいわい」
「ソースの匂いが美味しそうで美味しそうで」
「カケル、このお好み焼きには目玉焼きは乗せないのか?」
で、みんなの視線を集めながら食べてたら、ラベンドラさんからの質問が。
「生地に卵使ってるんで……。とはいえ、目玉焼きを乗せるお店とかもあると思いますよ?」
合わないわけ無いしね、お好み焼きに目玉焼きは。
後は……広島焼きだと目玉焼きも使うよね。
焼きそばとかと一緒に。
……広島焼き、一度しか食べた事無いけどあれはボリュームが凄かった。
具もさ、牡蠣が入ってるやつで、流石広島だって思ったもんだよ。
……ラベンドラさんなら難なく作りそうだな。
――焼きそば麺が今家に無いけど。
「焼けたか?」
「ですわね」
「スマン、ソースをくれぃ」
「俺が先だ」
なんて思い馳せてたら、ようやく四人のお好み焼きが焼き上がった模様。
ソースの取り合いからマヨネーズに変わり、鰹節、青のりと取り合いが続きまして。
「よし」
「それでは」
「頂くぞい」
「もう待ちきれん!」
「「いただきます!!」」
しっかり手を合わせ、四人で合唱のいただきます。
そして、
「美味い!!」
「最高じゃわい!!」
「お野菜の味がしっかりと感じられますわね」
「たこ焼きのソースと似ているが、あちらほど甘みは感じないな……」
という反応。
「フワッとした軽い生地で、いくらでも食べられそうだ!」
「その生地のおかげで、ソースやマヨネーズが受け止められていますわね」
「肉から滲み出た脂が生地に染み込んでアクセントになっているな」
「シーフードはどんな感じじゃい、リリウム?」
「エビやイカの食感がいいアクセントになっていますわよ? 所々で貝類のうま味が感じられますし」
「シーフードも美味そうだ、次はシーフードだな」
「ミックスを試したい。肉とシーフードが喧嘩しないのか気になる」
「ソースが全体をまとめ上げるじゃろ。さらにはマヨネーズまである」
と、一口食べてからお好み焼きに関する会話が止まらん止まらん。
……あと、サラッと流したけど言われてみたら確かにたこ焼きソース程甘くないね。
なんと言うか、醤油感が強く感じる気がする。甘さが抑えられた分、酸味を感じるようになったかも。
酸っぱいってわけじゃなく、調和された酸味だけど。
「食べている間に焼き始めないと間に合わないぞ」
「私はお次はミックスですわ」
「私はシーフードを」
「にーく! にーく!」
「生地を取ってくれぃ」
なんて賑やかに二枚目を焼き始めましたわね。
……俺? ウップ。
結構大きく出来ちゃったか、一枚でお腹一杯ですの。
後はゆっくり、四人が食べる姿を眺めてますわ。
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