第357話 俺だよ俺、ハンバーグだよ!

 最初だからという事で、始めはお猪口に少しだけ注いでもらい。

 その間に『無頼』という人について聞いてみる。


「どんな方でした? 『無頼』って方は」

「なんと言うか……物凄く荒々しい人でしたわ」

「口調も粗暴でな。肉寿司――ジライヤの舌を薄切りにして炙ったんだが、それを次から次に口に放り投げていってな」

「……「こりゃうめぇ!」って大騒ぎしとったぞい」

「ラベンドラの再現マヨネーズもご機嫌にたっぷりと付けとったし、何より食うわ食うわ」

「おかげでこちらのジライヤタンがかなり減ってしまった」


 ふむふむ。まぁ、ソロでSランクになるような腕の立つ人だし、なんか勝手にそう言うイメージだったけど。

 粗暴というか、豪快というか、がさつというか。

 解釈一致ですね。

 こう、俺としては侍であったりしてくれると嬉しいんですけど。


「よし、注ぎ終わった」

「では、異国の酒を味見してみよう」


 なんて話をしていたら、全員分のお酒がお猪口に注ぎ終わりまして。

 ……言ったらアレだけど、色味的にはほぼみりんだな。

 透明じゃない。

 ……香りは無臭。

 そんなことある? 酒でしょ? 匂い無いのマジ?


「ふぅむ……」


 ちなみに真っ先に口を付けたのはガブロさんです。

 というか、ガブロさんが口付けるまでみんな待機してたというか。


「どうですの?」

「悪くは無いと思うぞい。ただ、ううむ……癖があるな」


 あの酒好きのガブロさんがちょっと言い淀んだ?

 大丈夫かこのお酒?


「強いか?」

「そこまでじゃないわい。ワインと変わらんのじゃないか?」


 大体14%前後くらいか……。

 日本酒だともうちょい高いのが基本だし、飲んで大丈夫そうか。


「うぐっ!?」


 口に含んだ瞬間ラベンドラさんが嘔吐えづいたけど、飲んで大丈夫か?


「大丈夫か?」

「思ったよりキツい……」

「純粋なアルコールを楽しむ飲み物って感じですわね」

「美味しくない!!」


 ラベンドラさんが思ってたよりもキツいのか。

 で、リリウムさんの評価から何となくの味の想像が出来た。

 あと、マジャリスさんはストレートに言い過ぎね? もう少しオブラートに包みましょう。

 ――さて、んじゃあ俺もチロっと舐めてみますか。

 ……ぶへっ!?


「美味しくない!!」


 マジャリスさんゴメン。あなたの言ってることは正しかったよ。

 この異世界のお酒の感想を言うなら簡単。

 水に砂糖とアルコールをぶち込んで混ぜた飲み物。

 以上。

 香りも無い、ただ甘くてアルコールがグッと来る。

 口直しにお茶お茶。


「やはりカケルには合わんか」

「合う合わない以前に本当にお酒ですかこれ? 調味料って言われた方がまだ納得できますよ?」


 ちなみに、この異世界の酒とみりんって選択肢だったら俺はノータイムでみりんを手に取る。

 それくらい美味しくない。


「さて、今回の晩御飯に移ろう」

「ですね」


 気を取り直しまして、本日の晩御飯へ。


「ジライヤタンを使ったハンバーグを作りたくて」

「いいな。あれは美味かった」

「国王も大絶賛じゃったからな」

「今から涎が止まりませんわね!!」


 うん。俺がハンバーグにしようって決めたのはこれよ。

 俺がレシピを教えた時点で、この人らなら絶対に作ると思ってた。

 んで、そうなると俺の手助け要らんよね?

 

「ちなみにソースは?」

「希望有ります?」

「デミグラスソースがいい」

「……分かりました」


 要るみたいですね。

 そうか、ソース……忘れてた。

 自分でハンバーグ作る時は、大体タネにウスターソースやらとんかつソースやらケチャップ入れて味を調えちゃうから。

 にしてもデミグラスソースか……。作るか……。


「俺、ソース作るんで、ハンバーグはお任せしますよ?」

「任せろ」


 というわけで俺はソースに注力しませう。

 デミグラス、デミグラス……とりあえず玉ねぎをみじん切りに致しまして。

 これをたっぷりのバターできつね色になるまでじっくり炒めまして。

 きつね色になったらそこに赤ワイン、顆粒コンソメ、ケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、砂糖をぶち込んで。

 赤ワインのアルコールを飛ばし、とろみが付いてきたら完成っと。

 ちょっと味見……。

 うん、かなり赤ワインが効いてるけど美味い。

 絶対に肉に合うって自信があるソースが出来たな。

 あと、玉ねぎの甘みが凄くいい。

 ……これ、ご飯にかけて食べても美味いな。


「カケル、後は焼くだけだぞ」

「あ、そっちは手伝います」


 で、俺がソースを作ってる間にハンバーグのタネを作ってくれてたラベンドラさんから報告が。

 んじゃあ焼いていきますか。


「ちなみにツナギとかは?」

「……つなぎ?」


 ふぅ、焼く前に聞いといて助かったぜ。

 このハンバーグ、ジライヤタン100%か。

 それはそれで美味しいと思うんだけど、やっぱりハンバーグはあのフワフワした食感がすこな訳よ。

 というわけでアレンジのターン!!

 ラベンドラさんが作ったハンバーグのタネに、恐れ多くもまずはタマゴ!

 そこにパン粉! そして少量の牛乳!

 これを加えて更に混ぜ混ぜ。

 かなり粘り気あるな……。ジライヤタン、こんな手触りなのか。


「何を?」

「つなぎと言って肉がまとまりやすくなるんです。肉100%だと、ひび割れとかしませんでした?」

「したな。国王に提供した時はひび割れした面を下にして……」

「そう言うのを防ぐんです」

「なるほど」


 という事でラベンドラさん作のハンバーグアレンジverが完成。

 後はペチペチ叩いて空気を抜いて、フライパンで焼けば、ジライヤタンのハンバーグの完成ですわ。

 それじゃあ焼いていきますわぞ~。

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