第163話 姉貴からの贈り物

 姉貴に日本が誇る海鮮を送ってくれと連絡して結構経ったと思うんだけど、その理由というのが何ともね。

 

「あ、ゴメン。忘れてた」


 だとさ。

 困るんだよねー、まったく。

 伝えたことを忘れちゃう人はさー。

 ……はい、スイマセン。ボクモワスレテマシタ。


 というわけで届いた海鮮たちを見ていきましょう。

 まずはドン!! これ目当てで来日する人も少なくないであろうマグロ!!

 こちらなんと、赤身と中トロと大トロの柵がそれぞれ入ってた。

 こう見ると色の違いがハッキリしてて一発で分かるな。

 お次は……?

 

「うぉう!?」


 奇麗に箱詰めされたウニが出てきた。

 ……ダメだ。美味そうが過ぎる。

 粒が一粒一粒ピンと立ってて、特に詳しくない俺でも物がいいと理解出来る。

 それも二箱も入ってた。なになに? 説明書きによるとムラサキウニらしい。

 名前だけは聞いたことあるからポピュラーなはず。

 他はインパクトで言うとバフンウニとかね。


「で、ウニときたらこいつも入ってるか」


 個人的にウニと対を成す存在と勝手に思ってる、海の宝石筆頭。

 当然イクラ。

 語源はロシア語で魚の卵を意味するんだっけ?

 ぷっくり丸く膨れた一粒が、光を反射して真珠みたいに光ってますわ。

 これもかなりお高めのイクラですわね。


「他には……」


 そのほかに出てきたのは、柵状態の鯛、ブリ、そして甘えび。

 甘えびは殻を剥いて尻尾付きの状態でパックに詰められてた。

 値段がどれくらいだったかは聞かないけど、結構なものを買ってくれたらしいな。

 帰ってきたら腕を振るってやるか。


「で、これらをあの四人に食べさせるわけだけど、流石に刺身定食とか言ったらアレだし」


 よくSNSで話題になるよね。刺身でご飯が食べられるかって。

 ちなみに俺は全然いける。何なら醤油ぶっかけただけで米食えるからな。

 というわけでこの海鮮を活かして、異世界じゃあ絶対に食べられないアレを振舞うとしますか。

 そうとなれば買い物買い物!



「邪魔するぞい」


 というわけで今回のターゲットは異世界人四人です。

 内訳は男性三、女性一。

 男性はエルフが二人にドワーフが一人。女性はエルフとなっております。


「……カケル、これは?」

「姉に頼んでいた海鮮が届きまして、皆さんに是非食べて貰いたいなと」


 柵になったお魚さん達は俺が事前に寿司ネタ程度の大きさに切ってるし、ウニやいくらは取りやすい様に小さめのティースプーンを添えた。

 甘えびも尻尾を外してお皿に並べてある。

 ……そして、キュウリを拍子木切りにして盛り付けたし、厚焼き玉子もきゅうりと同じくらいの太さに切った。

 カイワレもバラシて、葉脈を除いた大葉と共にお皿に鎮座している。

 そして、テーブルには竹で出来たおひつと、大きなままの海苔。

 おひつの中には当然酢飯がたっぷりと。

 そう! 本日のご飯は手巻き寿司なり!!

 ……一応、生魚系がダメだった場合も考えて、冷蔵庫の中には別のご飯も用意したけどね。


「という事は、生魚ですの?」

「です。……食べられそうです?」


 まぁ、聞くよね。

 一応。

 海外の人の反応を見ても、チャレンジしてみたら全然食べられたって人もいれば、そもそもチャレンジすら無理っていう人とで千差万別。

 ここで拒否られたら諦めるしかない。

 なんて思ってたんだけどさ。


「一応『鑑定』したが、特に何も無かったぞ」

「どころか、状態が『新鮮』と出て、『生食可』と表示された。こんな事は初めてだ」

「その二人がそう言うんなら、まぁ生でも大丈夫じゃろ」

「ですわね。それで? これはどうやって食すものですの?」


 との事らしいです。

 ほんま、『鑑定』スキルって凄いな。

 魔法の力ってスゲー。


「まず、海苔を一枚持ちまして、この上に酢飯をほどほどに乗せます。そしたら、ここから好きな具材を乗っけて……」


 というわけで四人に説明がてら俺が実践。

 最初だし、マグロの赤身にしとくか。

 赤身とキュウリ、カイワレを乗せたらくるりと巻いて。


「こう巻いて、醤油に付けて食べる。これだけです」


 というわけでいただきます。

 ――うっま。


「うっまい! あぁ……久しぶりにマグロ食べた……」

「ゴクリ」


 というわけで俺の様子を見ていたリリウムさん達が唾を飲み込み。

 我先にと海苔とおひつに群がった。


「カケル! これは何だ!?」

「甘エビです。……えーっと、エビチリとかで使ってたやつの小さい個体的な?」


 マジャリスさんは初手甘えびをチョイス。

 小さな身からは想像できない濃厚なうま味と、ギュッと締まったねっとりとした甘み。

 プリプリとした身の食感が最高な、大人から子供まで大人気の寿司ネタだよね。


「カケル、この奇麗なのは?」

「魚の卵です。プチプチしてて最高に美味いですよ」


 ラベンドラさんはイクラをチョイス。

 表面を噛んだ瞬間に溢れる旨味と香りがたまらない、苦手な人も居るけど好きな人はとことん好きな寿司ネタ。

 イクラ丼とかもやりたかったな。


「この得体のしれん物はなんじゃい?」

「ウニですね。……棘皮動物って分類で、正直あまり分かってません。でも美味いですよ」


 未知の人にウニを正しく教えられる人は尊敬する。

 俺には無理だったよ……。


「カケルが食べていた身とよく似た色の身があるのですけど、こちらは何か違うんですの?」

「魚的には同じなんですけど、部位が違います。あと、脂の乗りが違いますね」


 という説明で、リリウムさんには伝わったらしく。

 さんざん悩んで、中トロをチョイス。

 それぞれ自分で巻いて、醤油に付けて一口。

 ――って、あー!!!

 忘れてた!! 寿司屋に行くと俺が必ず注文するアレ!!

 作ってたんだった!!

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