第377話 ピザも多様性の時代
「はぁ……微発泡の赤が肉の脂やチーズにあう……」
「薄い生地の方はカリカリ感が良かったが、生地の厚い方はもっちりしっとりしていて具材との調和が合うな」
「生地自体が美味いからこそ成り立つ厚さじゃな。我々の世界の麦だとこうはいかん」
「どの具材でもしっかりと特徴があって差別化出来ていますのね。美味しいですわ」
焼き上がったトマトソースワイバーンバジルピザを、ワイン片手に楽しんでる四人。
こう、一人一切れずつ食べてる都合上、俺も結構な味にありつけるの、ちょっと嬉しいかもしれない。
一人暮らしだとそもそもピザを食べようって気分にならんのよね。
いや、たまになるけど、その時もピザ一枚でギブアップでさ。
こう、いくつもの味を楽しむためには、ちょっと値段のする半分でトッピングが違うハーフ&ハーフみたいな商品にするか、クォーターで四つの味が楽しめる奴にするしかない。
んでもそうすると、食べたい味を十分に堪能できるってわけじゃあないし……。
というわけで大体が照り焼きチキンかホワイトソースのシーフードピザに落ち着くんだよな。
「こっちのは……? おお、『無頼』からの肉のやつか!!」
「ソースが美味しいですわ!! 少し甘くてピリリと来る刺激!」
「肉との相性はもちろん、ピザとしての完成度もかなり高い」
「そして当たり前にワインに合うのがいいわい」
で、プルコギ風ピザなんですけど、まずね、ヒツジナゾニクが茹でた時と全然違うの。
なんと言うか、脂身が無くて食感がしっかりあるのはそうなんだけど、締まった様な感じの歯ごたえは無くなっててさ。
代わりに、チーズの油分を吸い込んだみたいに、しっとりとした肉感。
しかも噛んだら肉の旨味とチーズの旨味が混ざって流れ出てくるもんだから最高だった。
「こいつはチーズとの相性がいいな」
「やや特有の臭さがあったが、このソースが上手い事隠してくれている」
「どうせなら羊肉用のソースも買っとけばよかったですね」
プルコギより、ジンギスカンだよね。
羊肉と言えば。
ラム肉だともっと幅が広がるかもだけど。
「次は?」
食べてる間にもピザは焼かれてて、お次は四枚目のピザ。
そのピザとは……。
「クリームソースのシーフードピザだ」
はい、俺がリクエストしたシーフードピザになります。
いやぁ、ダメもとでエビダトオモワレルモノとか、カニミタイナカタマリとか。
後はカイルイフシギキノコ頼んだらさ。
たっぷり乗せてもらえました。
蟹、エビ、ホタテに牡蠣。こんなの、なんぼ乗っててもいいですからね。
もちろん、それら全部がチーズに絶対に合うし、何なら最後に満遍なくかけたマヨネーズも最強。
と言うわけで、いざ!!
「むほっ!」
「これは美味い」
「赤ワインに合わない事だけが不満だが……」
「それはそれとしてとても美味しいですわ!!」
ピザの先端に辛うじて乗ってるカニミタイナカタマリにかぶりつき、そこから溢れるスープを口の中でチーズやピザ生地とマリアージュ。
飲み込んだら次は大ぶりなエビダトオモワレルモノで、プリッとした食感と強いうま味を名残惜しくも飲み込んで。
笠キノコを口一杯に頬張れば、チーズとマヨネーズの塩味と酸味で頬がほころぶ。
仕上げに柄きのことハンドトス生地の耳とを一緒に食べれば、最後まで笑顔たっぷりシーフードピザ、完食です。
べら美味かったな……。
「ピザにすらここまで多様性が?」
「そういえば、海鮮系ってあんまり食べなかったんですっけ?」
四人が俺と同じくシーフードピザに驚いてると思ったらさ。
どうも驚き方が違うくて。
どうやら、ラベンドラさん含めてピザとシーフードが結びつかなかったらしい。
俺がどれだけシーフード作ったと思ってるのよ、四人に。
そもそも、エビのクリームパスタとか、ウニクリームパスタとか食べた時点で気付け。
小麦粉と海鮮は間違いない組み合わせだって。
コロッケだってそうじゃん。
「我々の国ではそもそもピザと言うのはある程度具材が決まっているんだ」
「あ、そうなんですか」
「生地にマンドラゴラ、肉類、チーズ。これだけが乗っているのがピザと呼ばれている」
なんだその決まり。
神様、そちらの世界どうなってるんですか?
(わしに言われても困るわい。決めたのはわしじゃなく過去の統治した国王じゃろう)
どんな国王だよ。
……って、あまり言えないんだよなぁ。
この世界にも、とある国ではとあるものを明確な基準で定めてるし。
とあるものってのはカクテルで、度数やら使う材料まで明確にして、この要項が守られてないなら認めないって奴。
過去に読んだ記憶があるけど……なんだったっけな。
「てことはシーフードピザは初?」
「たこ焼きの時と同じく革命じゃろうな。また漁業の売り上げが上がると漁村ではお祭り騒ぎになるじゃろ」
「だが、こうして焼いて出すことは出来ない。ピザとは認められないからな」
「じゃあ、包みピザにしたらどうですか?」
「???」
と言うわけで包みピザをレクチャー。
まぁ、とはいっても普通にピザ生地で具材を包んで、大きな餃子みたいにするだけなんですけどね。
「焼き加減とか大変でしょうけど、そこは我慢で」
「うむ。任せろ」
流れでシーフードピザが連チャンになるし、何ならピザ一切れ以上の量を追加することになったけど……。
お腹の方はまだ余裕あるし、食べようじゃあないの。
美味しかったしね、シーフードピザ。
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