第166話 苦肉の策

 う~~む……。

 晩御飯のメニューに困った。

 卵って食材さ、確かに大体なんにでも使える万能な食材ではあるんだけど、メインにって考えると急に選択肢狭まるよね。

 正直、俺の持ってるレシピだと既に枯渇気味なんだよなぁ……。

 というわけでこんな時はどうするか。

 そう、職場にいる人に聞いてみるのだ。

 上司や同僚、あと後輩とかにね。


「いきなりだけど、好きな卵料理何?」


 って感じで、聞いてみたわけ。

 そしたら、


「卵料理?」


 みたいな感じでみんな最初に少し考えてさ。


「オムレツとか?」


 だとか、


「オムライスかなぁ」


 という答えが返ってきたわけですよ。

 んで、オムライスやったしなぁ……と思った後に、ふと閃いた。

 このアイデアは今日の晩御飯に活かせるかもしれない。

 会社のみんなのおかげで今晩のメニューも決まった事だし、ちょいと作りたいスイーツも思いついたし。

 しっかり買い物して帰るとしましょう。



 ただいま! という事でね。

 買って来た材料はツナ缶だったり、ソーセージだったり、冷凍のエビだったり、諸々パスタソースだったり。

 本日のメニューはオムレツ!!

 しかもただのオムレツじゃあない。

 ド級のオムレツ――ドムレツだ!!

 ……冗談はさておき、オムレツって、具を変えればかなりのバリエーションがあるじゃん?

 で、それらを食べ比べながら自分好みのオムレツを探していけたら、あの四人も楽しいと思うわけですよ。

 なので、色んな具のオムレツを作っていこうかと。

 ……具さえ用意すればラベンドラさんが焼いてくれるだろうし、洗い物もフライパンだけで済むしね。

 という事で晩御飯はもう特に気にする必要もない。

 問題はスイーツさ。

 何を隠そう、本日のスイーツはシュークリームを作る予定。

 プリンであんだけ喜んだんだもん。シュークリームも喜ぶやろ。

 というわけで、絶対に晩御飯よりも時間のかかるスイーツ作り、開始開始。


「えーっと、まずは生地……と」


 鍋に水を入れ、バターを加えて加熱。

 沸騰したら薄力粉を投入し木べらで混ぜて一塊に。

 そしたら濡れ布巾の上に鍋を移し、冷ましながら卵液をすこーしずつ入れて混ぜ合わせていく。

 なお、今回はデカクカタイタマゴ二個分ほど使いました。

 ……この後出来上がる生地の量なぞ知らずに。

 で、完了したら、こいつをオーブンで焼くわけですよ。

 レシピ見たら、絞り袋に入れて天板に絞る、とか書いてるの。

 ねぇよ。絞り袋とか。

 というわけで何かで代用できないかと調べてみたら、普通にスプーンで掬って置いてもいいっぽい。

 それを採用し、スプーンで天板に並べていったわけなんですが……。


「多くね?」


 この辺で、生地を作り過ぎたことに気が付きました。

 デカクカタイタマゴが普通の卵より大きいため、この重量に合わせて他の材料を調整したんだけどさ。

 計算したら、50個分くらいは作れる計算になってた。

 そもそもそんなに天板に乗らないし……。

 よし。この生地だけをラベンドラさんに持たせて、向こうでシュー生地を作れるようにしときました、と気が利く事をした風な雰囲気を醸し出しておこう。

 んっん~、名案だなこれは。

 というわけで天板には15個ほどの生地を並べまして、こいつをオーブンへ投入。

 予め200度に熱しておいて、大体30分ほど加熱。

 ……する前に、霧吹きで生地の正面を湿らせておく。


「じゃあ次はカスタードクリームと」


 焼き上がるまでに中に詰めるクリームの用意。

 と言っても、ぶっちゃけプリンの時と作り方はそんなに変わらない。

 ――と思っていたのか?

 どうやら電子レンジで作るやり方もあるみたいだから、今回はそちらで作ってみようと思う。

 というわけでまずは薄力粉をふるいにかけ、砂糖と混ぜ合わせましてー。

 次いで、牛乳を少し入れては混ぜ、入れては混ぜ、を繰り返し。

 ダマが無くなるまでかき混ぜたら、ここにデカクカタイタマゴの卵黄を投下。

 なお混ぜる。

 ……デカクカタイタマゴの比率的に、このままだと卵白部分だけ残りそうだな。

 ――マカロンでも作って、会社で配るか。

 いや、会社はアカンな。

 色々と何かあった時に責任がとれん。

 まぁ、ラベンドラさん達に持たせよう。拒みはしないだろ。

 で、卵黄とよーく混ざったのを確認し、電子レンジ500Wで二分半。

 行ってこい!!

 熱したものがこちらになります。

 で、これをよ~~~くかき混ぜて、もう一度電子レンジ500Wで二分半。

 終わったらまたよ~くかき混ぜて。

 ラストに500Wで一分半ほど加熱し、バニラエッセンスを垂らしてまたまたよーくかき混ぜる。


「あ、知ってるカスタードクリームになって来た」


 そして俺はここで気付く。

 カスタードクリームを作ったはいいが、どうやってシュークリームに入れるのか、と。

 なんだよ、やっぱり絞り袋って要るんじゃんか!!

 というわけで粗熱を取り、クリームを冷蔵庫にぶち込んで。

 四人が来るよりも先に買って来なくては、と勢いよく家を飛び出しスーパーへ。

 ついでに業務スーパーにも寄り、冷凍の搾り袋に入った生クリームを購入。

 生クリームとカスタード、ダブルクリームシューとかも作ろうかな、とね。

 帰ってきたときには焼けていたシュークリームの生地に絞り袋の先端をねじ込み、中にカスタードと生クリームを絞りまして。

 そうして、15個のシュークリームを完成させ、冷蔵庫に押し込んだタイミングで、魔法陣が出現。

 タイミング完璧かよ、絶対見てただろ。

 なんて言葉が喉元まで上がって来たけどこれを飲み込み、四人を迎え入れた。

 さぁ、後はラベンドラさんが頑張る番だ。

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