第167話 バリエーションオムレツ

「なるほど、把握した」


 本日の晩御飯についてを説明したら、ラベンドラさん即把握。

 説明が短くて済むの素晴らしいよ。助かるぜ。


「ならば、私が普段作っているのをまずは作ろう」


 という事で、まずはラベンドラさん流異世界オムレツを作ってもらう事に。


「皆で取り分けるんだ、少し大きく作ろう」


 なんて言って、一つのオムレツにデカクカタイタマゴを二つ分も使って作り始めたよ。

 で、肝心の具なんだけどさ。


「カケル、これらを使わせてもらうぞ」


 ラベンドラさんが手に取ったのは、トマトと玉ねぎ。

 玉ねぎは薄く切って、トマトは角切り。

 それらを塩コショウで炒めて、卵で包む際にチーズをふりかけ。

 オニオントマトチーズオムレツの完成。

 普通に美味そう。


「よし、次はどうする?」

「じゃあ、こいつと玉ねぎを同じように炒めて貰えます?」


 で、二つ目。

 渡したのは油をきった後のツナ缶で、二個目のオムレツはオニオンツナオムレツ。

 我が家の定番とも言っていいオムレツで、約束された安定の美味しさをオールウェイズ提供してくれる。

 ……買い物中に思ったんだけど、最近ツナ缶高くない?

 値段見て、思わず手に取るの躊躇ったんだけど。

 ……いや、買ったんだけどさ。


「そろそろ肉が欲しいぞい」


 で、俺とラベンドラさんでオムレツを仲良く作ってたら、待ちきれないのか様子を見に来たガブロさんが一言。

 そんなに言うなら次は肉にしましょうという事で、


「こいつをこのソースで炒めてください」


 鶏ミンチを照り焼きソースで焼いた、鶏テリオムレツに。

 照り焼きの魔力ったらねぇよな。匂いで食欲が湧いてくるぜ。


「海鮮は無いのでしょうか?」


 まぁ、ガブロさんが見に来たら他にも見に来るよねって事で。

 リリウムさんからは海鮮系のリクエスト。

 ははーん? さては手巻き寿司でこの世界の海鮮にハマったな?

 くくく、この沼は深ぇぞ。安心して沈め。


「じゃあ、エビをこいつで……」


 冷凍エビ(解凍済み)を、鮭クリームパスタソースで炒める。

 ソースの水分がある程度飛ぶまで炒めたら、ずぼらエビクリームの完成。

 こいつを卵に包んで、エビと鮭のクリームオムレツ完成っと。

 ……なお、ここまで全てラベンドラさんが作っている模様。


「中に甘いものを入れることはしないのか?」


 えー……ここで爆弾投下です。

 マジャリスさんから甘いもの、とのリクエストです。

 ――が、甘いぞマジャリス!! リバースカードオープン!!

 既に作られたシュークリーム!!


「デザートなら既に作ってありますよ?」

「む、そうか……」


 ふはははは、見事にカウンターが決まったな!!

 ――待てよ?


「ラベンドラさん。こんなオムレツもあるんですよ」

「……ほう。面白そうだ」


 あるじゃん。

 マジャリスさんが欲してそうなオムレツが。

 その名もスフレオムレツ。ふわっふわで生地がジュワっと口の中で溶けるあのオムレツ。

 作り方は普通のオムレツと比べて面倒だけど。

 というわけでお願いラベえも~ん。


「最初は白身だけを泡立てて、角が立つまで混ぜます」

「ふむ」


 なお、かき混ぜる作業は全て魔法で行われる模様。

 泡だて器が空中に浮いて、残像を残しながら泡立てるさまは非日常ですありがとうございました。


「そしたら、そこに塩と砂糖を少々」

「ふむふむ」

「で、卵黄を入れて軽く混ぜます」


 で、指示通りに作ってくれているラベンドラさんを尻目に、俺も一つオムレツを作る。

 まぁ、一般的なオムレツじゃあないけどね。

 使う材料のメインはじゃがいも。

 もうわかるよね?


「そしたらそこにコショウを入れてフライパンで焼きます」

「かなり生地が軽いな」


 というわけで焼く工程。

 その生地の軽さに驚いてるようだけど、異世界にもメレンゲくらいはあるでしょ。

 ……そもそも卵が貴重だったわ、すまんな。


「こ、これは大丈夫なのか?」


 と、俺がスペイン風オムレツを作ってたら隣からラベンドラさんの困惑した声が。

 生地が膨らんで驚いたか? と思って隣を見たら、カップケーキか? ってくらいに膨張したスフレオムレツが。

 いや、そんななるの知らんが?

 当たり前に予想できない事起こすのやめてくんない?

 これだからエルフは。


「火さえ通っとりゃあ食えるじゃろ」

「ですわ」

「面白いじゃないか」


 なお、見学者たちは食べる気満々みたいですよ?

 ほな大丈夫か。


「さ、皿に乗らないから一度畳むぞ」


 と、よく知る折られたスフレオムレツの形状にはなったものの、俺が知るスフレオムレツの大きさというか、ぶ厚さじゃない。

 こう、ホットケーキミックスにさ、重ねられたホットケーキの美味しそうなイメージ図、あるじゃん?

 大体あの高さ位。折られて。

 デカすぎんだろ……。

 一応完成って事で、ケチャップとパセリを振りかけてっと。

 こっちのスペイン風オムレツも出来上がったので、それも皿に盛りつけて。

 本日のメニューは、様々オムレツとなっております。

 ご飯と、スープはオニオンコンソメスープをチョイス。

 それじゃあ皆さん、手を合わせてください。


「ところでカケル、食後のデザートなのだが……」


 ……ちゃんとあるから。

 食べ終わったら出すから。

 食前のいただきますくらいはちゃんとしなよ、マジャリスさん。

 甘党なのは分かったからさ。

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