第307話 キーーンッ!!

 デザートの出す順番だけど、まぁ最初はシャーベットからよな。

 ジェラートの方はバニラアイスと混ぜてるし、濃厚さで言ったらそっちのが上だろうし。

 というわけで冷やしていたバットを取り出しまして。


「? 先ほど作っていたのではないのか?」

「そっちも出しますけど、まずはこれからですね」


 マジャリスさんにジェラートの事を聞かれるけど、慌てなさんな。

 出すから、ちゃんと。

 ただ、何事にも順番ってもんがあらぁな。

 というわけで、目の前でシャーベットをほぐしていくわぞ~。

 フォークで引っ搔くようにシャーベットを削っていくと、バットで綺麗に凍っていた状態から一気にシャーベット状に。

 ……シャーベットって言うか、ほぼかき氷だなこれ。

 氷の粒というか、塊が結構荒い。

 でも、それはそれで美味しいだろうし。

 雑にそのままほぐしまして、お皿へと移していく。


「色味的に果汁を凍らせたものか?」

「ですね。果実一つから絞った果汁で作りました」

「……一つからこの量が?」

「そういう果物なので」


 スイカって、思った以上に水分あるからね。

 そういう果物って異世界に存在しないんだろうか?

 なんと言うか、そういう極端な物って異世界の方がありそうなんだけども。


「まだまだ不思議が多いな……」


 どの口が言いますかね?

 そっくりそのまま熨斗のし付けてお送りしますわ。

 ……というわけで取り分けが終わりまして。

 スプーンと一緒に全員に配って、と。


「最初のデザートはスイカのシャーベットです」


 という俺の言葉が合図になり、四人が食べ始め……。


「ん! かなりスッキリしている」

「サッと溶けて広がって、スッと消えるような甘さですわ」

「口の中がべた付かない爽やかな甘さだ……ガブロ? どうした?」

「ぐぉおぉおぉおおおぉお!!?」


 ――あのさぁ、一口の量位考えなよ。

 そんなスプーン山盛りのシャーベットを思いっきり口に入れたら、そりゃ頭がキーンってなるでしょうに。

 アイスクリーム頭痛だっけ? ……あれ正式名称?

 ちょっと調べよ……。

 ほーん? 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛、が正式名称ね?

 ――結構そのまんまだな。アイスクリーム頭痛の方が分かりやすいまである。

 

「このシャクシャクとした食感が面白い」

「氷に味を付けるという発想が面白いですわね」

「恐らくだが違う。先程の会話から果汁を凍らせているんだ」

「……なるほど。確かにそちらの方が味も濃くなりそうですわね」

「まぁ、氷に味を付けるってデザートもありますけどね」


 まさしくかき氷の事だしね。

 今のかき氷は凄いぞ~。昔はイチゴかメロンかブルーハワイ、みたいなところだったけどさ。

 今じゃコーラやレモン、グレープにプリンまであったりする。

 まぁ、俺は基本的に『すい』ばっかり食べてたけど。

 ただのシロップのやつ。これ食べてると姉貴に狙われないからね。


「あんたって前世カブトムシ?」


 とか言われてたっけ……。

 お前のせいじゃい! って話だけどな。


「ふぅ……酷い目にあったわい……」

「何をしていたんだ?」

「多分ですけど、一気に冷たいものを食べると頭が痛くなるんです。それじゃないかと」

「その通りじゃわい。キンッ!! とこめかみの部分に鋭い痛みがずっと続いておったんじゃ……」


 そういう事。

 つまり、食いしん坊は報いを受けるって事だよ。

 分かってる? マジャリスさん。その量を食べたらガブロさんの二の舞だからね?


「ザクザク、シャクシャクとした食感が本当に美味いわい」

「この果実の香りもいい。清涼感が感じられる」

「凍らせても分かる。この果実の瑞々しさが」

「重たくないのも素晴らしいですわよね」


 ようやく戻ってきたガブロさんも食レポに加わり、思い思いに感想を言い合ってくれてる。

 じゃあ、俺も食べますか。

 ……んー! サッパリ!!

 スイカの味を知ってる分、衝撃度は低いけど、貰ったスイカ結構甘いな。

 けど、甘すぎる訳じゃない。程よい甘みと瑞々しさ……潤いっていうの? しっかりと感じられる。

 あと普通のスイカと違ってシャーベットだと、繊維質が気にならないね。

 スイカ食べてる時にさ、舌に繊維質が当たってちょっとやだなって思った事無い?

 俺はある。

 でも、このシャーベットだと全然気にならない。

 なんでだろ? 凍らせたから繊維が砕けたんかな? よく分かんね。


「これは砂糖とかを足したりするのか?」

「少しだけ。でも、ほとんどスイカの甘さですよ」


 確かに砂糖も足したな。

 でも、ほんの少しだしね。

 あと、砂糖の甘さって言われても分からん位だと思うよ。

 それくらい馴染んでる。


「あっさりさっぱりとしていて、すぐに食べ終えてしまった……」

「コース料理の途中で、口直しとして出てくるようなデザートでしたわね」

「食欲を落とさず、口の中をサッパリとさせる。確かに口直しに持ってこいじゃな」

「もちろん最後のシメとして出て来ても満足だろう。さっぱりとした清涼感で、一日の終わりを想起させるような一品だからな」


 ……言われてみれば、確かに。

 ていうか、まんま口直しとして出されるような物だなこのスイカシャーベット。

 そこに気が付くとは……やはり食いしん坊か。


「さて、口の中もリフレッシュされた。次はもちろん……?」


 あの、逃げませんし隠れませんから。

 ジリジリと寄って来ないでもろて。


「次はスイカのジェラートですね」

「ひゃっほう!!」


 ひゃっほうて……。

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