第26話 エビダトオモワレルモノクリームパスタ
あー……つっかれたぁ。
疲れたけどあと一日あるんだよなぁ、仕事。
社会人の辛い所ね、これ。
まぁ、明日さえ乗り越えれば休みだし、休みには存分にエビダトオモワレルモノを調理予定。
さぁて、一体どう料理してやろうか。
今日作る分はもう決めてるし、それに必要な材料を買いまして。
さらに、四人に持たせるための料理の材料ももちろん購入。
ちょっと奇をてらった料理かもしれないけど、たまに食べたくなるんだよね、アレ。
というわけで帰宅し、下ごしらえ。
まずは玉ねぎをみじん切り。涙が出てくるけどこれは涙じゃない。心の汗。
そしたらエビダトオモワレルモノを成形し、塩揉みからの塩茹でにしてザルに引き上げる。
エビは多ければ多いほど美味い。古事記にもそう書いてあるのでこれでもかと茹でてやった。
……まだ半分くらい残ってるんだけどね、エビダトオモワレルモノ。
このままだと、ブタノヨウナナニカと同じく冷凍庫行きになりそう。
「お邪魔しますわ~」
と、慣れた様子で四人が帰宅。
……帰宅? 来店?
まぁいいか。
「いらっしゃいませ~」
こちらお冷になります~。
おしぼりはございません。
「今日はどんな料理を?」
三人が座り、ラベンドラさんが俺の料理の工程を見るために近寄ってきて。
「今日はトマトクリームパスタにしようかと思います」
ラベンドラさんにそう返し、調理開始。
「エビの身は塩茹でにしてあります」
と、ザルに山盛りになっているエビダトオモワレルモノの説明をしながら鍋でお湯を沸かし。
フライパンにオリーブオイルを入れ、みじん切りにしたニンニクを投入。
じっくりと炒めながら、ニンニクの香りをオリーブオイルに移していく。
ついでにここで追いオリーブ。
「まずはこうしてニンニクを炒めて、香りを出していきます」
「もう既にいい匂いがしているな」
工程を説明すれば、待機中のマジャリスさんからそんな声が。
「匂いだけで絶対に美味い事が伝わってくるわい」
「今日も楽しみですわね」
なんて期待している三人からの無言の圧を感じつつ、次の工程へ。
アンチョビを少々フライパンに投入して味付け。
なかなか売ってないよね、アンチョビ。
この間業務スーパーで見つけたわ。
そうしたらみじん切りにした玉ねぎを投入。
透き通るまで炒めますわよ~。
んで、次にカットトマトの缶詰を開け、それをフライパンへ。
トマトの水分を飛ばしながら時折潰しつつ、沸騰した鍋のお湯はまだ使わないからいったん火を止めて待機。
そのまましばらく水分飛ばしにご協力くださ~い。
「これはまた……」
ラベンドラさんが静かだなと思ったら、アンチョビの瓶の成分表? を熟読してたらしい。
鰯の塩漬けでしょ? そんな珍しいものでもないと思うんだけど……。
「そっちの世界だと珍しいんですか?」
「珍しい……かもな。肉の塩漬けは聞いたことがあるが、魚はあまり……」
「そもそも魚を保存するっちゅー考えがないわな」
「日が経った魚なんて怖くて食べられませんもの」
「上手く匂いや味を隠されて傷んだ魚を食べさせられた時の翌日と言ったら……地獄と同義だろう」
なるほど?
そもそも魚は新鮮なうちに食べるのが普通なのか。
まぁ、そっちのが安全だろうしなぁ。
別にこの世界じゃ、魚の保存なんてありふれてるけども。
アンチョビもだし、干物とか、くさやとか。
「いい感じに煮詰まったんで、ソースを仕上げますね」
と宣言して生クリームとバターを投入。
そこにたっぷりのエビを投入し、ゴロゴロエビのトマトクリームソースの完成。
……これをもう一回やります。
一度に五人前なんて出来るわけないからね、しょうがないね。
で、作ったものがこちらです。ばばん。
〇ューピーも驚きの三分では済まないクッキングでした~。
「後は麺を茹でて、ソースに絡めれば完成です」
というわけで麺を茹でていく。
……当然、鍋は二つ。
茹でられるか……っ!! 一度に……っっ!! 1㎏も……っ!!!
というわけで断腸の思いで鍋を二つにして麺を茹でる。
考えてなかったよ。五人分かつ大盛りの麵の量なんて。
麺を茹でてる間にソースの味見。
…………うっま。
え? うっま。このソース作った奴誰だよ。美味すぎだよ。天才かよ。
あ、俺か。でへへでへへ。
と、変なテンションになる位美味かった。
市販のソースももちろん美味いけど、こうして自分で作るソースにもまた良さがあるよな。
……とはいえもう少し塩コショウしとこ。
あと雰囲気でブラックペッパーも。
一瞬だけ流行ったペッパーミル、何とうちには流行る前からあるんですねぇ。
というわけでミルを挽いて味を調えて。
アルデンテに茹でたパスタ麺をフライパンにドーン!!
麺全体にソースが絡め、高い所からトングで回すように皿に盛りつける様にして完成。
高さ出してけ~。
仕上げに彩り目的でパセリを振り、みんなに提供。
今回は自信作です。覚悟の準備をしておいてください。
「というわけでお待たせしました。トマトクリームパスタです」
「「おお~!」」
皿を前に置けば、みんな感嘆の声を上げる。
そんな中、
「どうじゃ? 今回の料理は再現出来そうか?」
「これまでに比べればそこまで難易度は高くなさそうに思う。――が、まずは味を見てみないことには」
食べる前から味の再現を気にする二人。
ガブロさんもラベンドラさんも、多分匂いで本能的に美味しいって事が分かるんだろうね。
食べる前から美味しいと分かるのは本能的に美食タイプ。
黄金の鉄の塊で出来たナイトがそんなこと言ってた。
多分、きっと、恐らく、メイビー。
「では早速、いただきますわ」
というリリウムさんの声を合図に、四人はパスタにフォークを差し込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます