突撃！ 隣の世界の晩御飯！

第127話 ラベンドラ大興奮

　というわけで完成しました、秋刀魚の甘露煮。

　ただいま減圧中にござい。　

　ほんとね、圧力鍋を使うときの注意ね。

　しっかり減圧してから蓋を開ける事。

　じゃないと大変な事になるよ（二敗）。

「今の間に他を盛りつけちゃいましょう」

　その時間でご飯を盛り、みそ汁を作り。

　漬物を切って、それぞれテーブルへ。

　本日の味噌汁は具だくさんな茄子のお味噌汁。

　具が多いってだけでお得感あるよね？　俺だけ？

　そして漬物はワサビ菜の醤油漬けにて候。

　……漬物よな？　醤油漬けって言ってるから漬物で間違いないよな？

　鼻にツーンとくる刺激がたまんなくて、結構な頻度で買ってたんだよなぁ。

　んで、思ったわけよ。

　リリウムさんたち、ワサビ大丈夫だったし、これもいけるんじゃないかってね。

「そろそろ減圧終わったみたいですね」

　しっかり減圧出来ている事を確認し、フタをオープン。

　ちなみに圧力鍋に流水を当てて減圧の時間を短くするやり方もあるんだけど、俺はやらない派。

　減圧の時間込みで調理の時間と考えてるからね。

　というわけで蓋を開けましたら～、

「む、いい匂いだ」

「この世界のご飯の匂いですわ～」

　匂いだけで飯を食いそうなエルフ二人が即反応してた。

　煮つけの匂い――というか醤油の匂いってさ。

　脳みそにダイレクトに来るよね。特に醤油が焦げる匂い。

　どうやらそれは異世界人でも同じらしいよ？

「かなり柔らかくなってそうだ」

「骨があったら、骨まで柔らかくなってるくらいですね」

　それぞれ身をお玉で掬ってお皿に盛り付け。

　箸でも持てるけど、ちょっとの力加減で崩れちゃうし。

　お玉で盛るのが安定よ。

「骨まで……それは凄いな」

「まぁ、無いに越したことはないです。でも、骨を全部取るのは大変だったでしょう？」

　わざわざ俺に渡すために骨を抜いてくれたんだもんな。

　解体士のガブロさんがやってくれたんだろうけど、マジで感謝。

　骨のない魚がどれほどありがたいか、これは日本人じゃねぇとわかんめぇ。

「？　『太刀魚』の骨を抜くのは普通じゃろ？」

　落ち着け。俺の知ってる太刀魚の事じゃない。

　俺の知ってる太刀魚の事じゃない。

「そうなんですか？」

「そうじゃ。『太刀魚』は捨てる所がない魔物なんじゃ。鱗はそぎ切りにして武器や防具に、ヒレも同じく武器防具じゃな」

「骨は毒の浸透率が高くてな。毒矢はもちろん、毒を武器に仕込むために必須と言ってもいい素材なんだ」

「軽くて丈夫で柔軟性もある。とても重宝される素材ですのよ」

「…………本当はダシを取りたかったが反対されたんだ」

　素材について熱く語る三人だけど、ラベンドラさん拗ねてますよ？

　大丈夫そ？

「私たちも活動資金は必要ですもの。魔物の素材は極力お金に変えませんと」

「分かっている……だが……ダシは……」

「素材にならんような骨で我慢しとくんじゃな。グリフォンとかどうじゃ？」

「いや、俺にどうじゃ？　とか聞かれても……」

　グリフォン……どんなのだっけ？　なんか、鳥とライオンが混ざった様な魔物だっけか？

「鳥骨……というか、鳥からダシを取ったスープをラーメンとかに使ったりはしますけど……」

　鳥白湯スープとかそれじゃないっけ？　知らんけど。　

　あー、後は漫画で読んだ烏骨鶏のスープとかもあったな。

　あれは美味しそうだった。

「……ラーメン？　――ラーメン！！」

　その時、ラベンドラに電流走る。

「そうだ！　何故思いつかなかったんだ！！　ラーメンならば向こうでも問題なく再現出来る！　しかもスープは自由度が高い！！」

「ラベンドラ？」

「黙っていろ！　今レシピを脳内で組み立てている！　……マンドラゴラが数種欲しい。魚介からのダシも合いそうだ。あとは――」

　と、何やら一人の世界に行っちゃったよ。

　今から秋刀魚の甘露煮実食なんですけど……。

「カケル！　この世界には私達が食べたラーメン以外にどんなスープがある！？」

「へ？　へ！？」

　いきなり肩掴まれて揺すられながら聞かれちゃった。

　えーっと、そもそも四人に何食べさせたんだっけ？

「醤油、塩、味噌、豚骨が基本です……？」

「醤油は私が食べたやつだな。……豚骨？」

「はい、濃厚でこってりしていて、ハマる人はとことんハマる味になってます」

「なるほど……他には？」

「思いつきませんけど……酸辣湯とか、あ、塩も魚介塩と鳥塩に別れてたりします。あとは……豚骨醤油とか、味噌醤油みたいにベースを合わせたスープも存在しますよ？」

　俺の持つラーメン知識は所詮こんなもん。

　袋ラーメンの、それも自分の好みのやつしか買わないからね。

　ちなみに家に常備してあるのは卵を乗せる窪みが作られてるやつ。

　結局シンプルイズベスト。

「ラーメン一つ取ってもそこまでの多様性があるのか……」

「乗せる具材でも差別化されますしね」

「！？　具体的には！？」

「チャーシューとネギは多分お店ならどこでも乗せてますかね？　そこに海苔だったり、もやしだったり、本当に色んなものがトッピングとして存在してますよ？」

　俺が店でラーメン頼む時は煮卵を必ず付ける。

　これ、ラーメンを食べる時のライフハックね。真似していいよ。

「のぅ」

「そろそろ食べません事？」

「美味そうな料理を前にお預けを食らう俺たちの身にもなれ」

　ラベンドラさんとラーメンの話してたら、他の三人から催促されちゃった。

　というか皆さんちゃんと待っててくれたんですね。