第142話 ほんわかホイ
「それで!? 今日は何をするんだ!?」
あの、ラベンドラさんのテンションが高い……。
俺の家に来た瞬間はそうでもなかったんだけどさ。
用意された、ぶつ切りのニンテイタコカイナとたこ焼き生地。
その他、ネギやら紅しょうがやら天かすを前にして、未だに知らぬ未知なる料理と理解した瞬間、声のトーンが二段階くらい上がった。
珍しいよね、ラベンドラさんがこんなテンションになるの。
……材料を見ただけで美味しい事が分かるのは本能的に料理人タイプって事か。
「まず、プレートの上にこれを設置して温めます」
と、説明しながらホットプレートにタコ焼き器をセット。
コンセントを差し込んで、ホットプレートを熱しまして。
「で、油を引いて、生地と具を流し込んで火を通します」
ちなみに俺流のたこ焼きは油を多めに引き、揚げ焼きに近い感じで作っていく。
こうすると、外はカリカリ中はトロリとなるんだべや。
なお、俺はどんなたこ焼きだろうが美味しく食べる。自分で作る時はこうってだけ。
こう、どことは言わないけど大阪の人とか、たこ焼きには一家言ありそうだからなぁ。
間違っても出身が分からない人の前でこういう話をしてはいけない。
「具は全部入れるのか?」
「大体好みですけど、まずは全部で」
タコ、ネギ、紅ショウガ、天かすそしてこんにゃく。
それらをそれぞれに入れたら、火が通るまで待ちまして。
「そろそろ良さそうなんでひっくり返します」
ラベンドラさんに竹串を二本渡し、まずは俺がお手本を。
カリカリになっている外側に竹串を刺し、くるんと一回し。
これを、二本の竹串で行っていく。
「おお~~」
「慣れると簡単ですよ」
というわけでラベンドラさんも挑戦。
果たして最初の挑戦はいかに……っ!?
――まぁ、問題なく出来ちゃうよね。
知ってた。
「後はひっくり返した先が固まれば完成です」
「なるほど。……これは楽しいな」
と、笑顔でたこ焼きをひっくり返しながら言うラベンドラさん。
イケメンが無暗に笑顔を振りまくな?
それが許されるのはアイドルだけだぞ?
じゃないとときめいちゃうからな?
「で、焼けたのはお皿に移しまして……」
全員の目の前で、まずはソース!
有名なお面のやつ!! 続いて青のり!! 歯にさえくっ付かなきゃもっと愛されるだろう食材!!
そして鰹節!! あるとないとじゃ大違いだぜ!
最後にからしマヨネーズ!! たこ焼きにはこれしかねぇよなぁっ!?
「これで完成。我が国の誇る最強の粉物……たこ焼きです」
とまぁ説明したんだけど、目の前のたこ焼きに釘付けで聞いちゃあいねぇでやんの。
んじゃ、焦らすのもアレだし早速どうぞ。
「カケル」
「なんでしょう?」
「これはどうやって食べるのだ?」
で、そこまで言われて気が付いた。
爪楊枝刺してねぇや。
いつもみたいに箸やフォークが出て来ないから不思議そうに聞かれちゃったよ。
そりゃあ困惑するよね、スマソスマソ。
「ごめんなさい」
というわけで爪楊枝をそれぞれのたこ焼きに突き刺しまして。
「この料理はそれで食べる決まりなので、そちらでどうぞ」
と促しました。
宗教上の理由でな、たこ焼きを爪楊枝以外で食う事は認められてないんだ。
「じゃあ早速……」
「あ、熱いんで気を付けてくださいね」
うん、遅すぎた。
みんな出来立て焼き立ての熱々たこ焼きを一口で頬張るんだもん。
あー、やったわ、と思ったけども……そういやこの人達、熱いの全然平気だったね。
みんな吐き出したりとかすることなく、普通に咀嚼してたよ。
「むほっ!!」
「まぁ!!」
「ほぅ」
「美味い!!!」
えー、ガブロさん、リリウムさん、ラベンドラさんが感嘆の声を上げて、マジャリスさんが美味いって言ったのか。
「外はカリカリ、そのカリカリを破ればトロリと流れてくる中身!!」
「『――』の身の生臭さは一切ありませんし、どころかその身から美味しい汁がたっぷりと出てきますわ!!」
「中に一緒に入れた具材もいい。正直食い物か分からなかったあの塊も、プルプルとした食感がたまらん」
「極めつけはこのソースだ!! 甘めの濃いソースで深い風味がこの料理に合う!!」
色々言われたけど一番気になったのはラベンドラさんの言葉。
こんにゃくをそう思ってたのか……。
そう思うか。作り方とか見せたら絶句しそうだな。あとで見せよ。
「カケル、これは冷凍して塩揉み以外に何かしたか?」
「それだけで処理しましたよ。ただ、塩は結構使いましたね」
口の端にソースを漬けながら、更にはたこ焼きを食べながらタコの身の処理について聞いてくるラベンドラさん。
マジで塩だけはかなりの量要るよ、こいつ処理するのに。
「しっかりと処理できる、という事か……」
で、それを聞いたラベンドラさんはメモ取ってた。
多分、向こうの世界で広めるんじゃないかな。
さてと……俺もいただきますか。
――あっふ! ハフハフ……あっつ、熱ぅい!!
あの人たちが当たり前に一口で食べてたから感覚麻痺ってたわ。
普通に熱い!! と、とりあえず皿の上で半分に割って……。
少し冷ましてから食べよう。
「カケル、提案なのだが」
「なんれしょう?」
「これならば他の三人でも作れそうだ。今日は自分の食う分は自分で作らせる、というのはどうだ?」
熱さで涙目になりながら、俺は、ラベンドラさんの提案を当然受け入れたのだった。
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