第13話 ブタノヨウナナニカキムチ丼トッピングマシマシ

 日本国民の三大義務の一つ。勤労。

 故に、今日も今日とて仕事に励みますわよっと。社会人の辛い所ね、これ。

 にしてもアレだ、週明けの朝ほど憂鬱なものはない。

 ていうかさ、休日だけ明らかに時間の進みが早いよな?

 二倍とか極端な事は言わないまでも、一割とか二割とか、何なら、コンマいくつ単位でかもしれないけど確実に早くなってると思うわ。

 きっとそうに違いない。

 ……まぁ、仕事に関しては特に何事も無かったんだけどさ。

 週末の大量発注から不備の指摘も無ければクレームもなく。

 むしろ、あんなに急な事をして申し訳ないと謝罪すらあったわ。

 まあ? 向こうも切羽詰まっていたみたいですし?

 寛大な精神で許してあげましょうぜ。

 ……二度とするなよ?


「さぁて、今夜はっ……と」 


 というわけで現在帰宅中、帰宅経路にあるスーパーにより、今夜の晩御飯を思案中。

 そうそう、スーパーの前にある宝くじ売り場で宝くじ買ってみたんよ。

 エルフに祈られたから。

 で、スクラッチで千円分購入したらなんと!!

 二千円当たりました~、パチパチ~。

 ……問1、これがエルフの加護が答えよ。

 なんというか、微妙過ぎない?

 いや、嬉しいよ? 倍になったんだもん。

 でもさ、これがエルフに祈られたからって言うにはなんかこう……しょぼすぎない?

 俺が過剰に期待してるだけかもしれないけど、もっとこう……ドーンと当たって欲しくない?

 いや、いいんだけどね? この二千円でビール買ったし。


「豚肉だけは大量にあるし、これとこれと……」


 そんなわけで今夜のメニューはビールに合うもの!

 ……いや、これまでのも全然ビールに合うんだけど。

 というわけで買うもの買ったら帰宅!



 相も変わらずまだまだ残ってるなぁ、ブタノヨウナナニカ肉。

 今日のメニューに使うには薄切りが好ましいから、冷しゃぶした時みたいにしていきますか。

 ワイヤレスイヤホンをセットし、お気に入りの曲をまとめたアルバムをセット。

 少し小さめの音楽で流しながら、リラックスしつつ肉を切り取っていく。

 脂身も程よく欲しいし……この辺をもうちょい……。

 と、五人分の薄切りを用意するために、結構な時間を有してしまった。


「ふぅ……こんなもんか」


 まな板の脇には、大盛りのローストビーフ丼みたいに山になった薄切り肉がどっさり。

 肉を焼く前に米をセットし、炊飯スタート。

 今から作り始めてもちょっと早いんだよね、あの四人が来るまで。

 と、言うわけで人をダメにするクッションに腰を掛け、ダメになりながらスマホを操作し動画配信サイトに。

 推しの動画や配信がないかを確認し、無かったので項垂れながらおすすめの動画から適当にピックアップ。

 それをぼんやりと眺めながら、あの四人がやってくるのを今か今かと待ち続けるのだった。



「お邪魔しますわ」

「来たぞ」

「邪魔するぞ」

「邪魔するわい」


 と、もはや見慣れた魔法陣から四人が姿を出し、それぞれ挨拶。


「いらっしゃいませ~」


 気分は料理店なノリで挨拶を返し、調理の為に人をダメにするクッションから立ち上がる。

 すると、ごく自然に近寄ってくるラベンドラさん。

 いやまぁ、分かるけどさ。

 イケメンに無言で近寄られるとドキッとするよね。


「今日のメニューは?」

「今日は豚キムチにしようかと」


 そんな気持ちを知らないラベンドラさんに尋ねられ、今日のメニューを答える。

 本日は豚キムチなり。仕事のある日はあまり手がかかる様な料理をしたくないし。

 肉切ってキムチと炒めるだけで完成する豚キムチは手軽で美味い。

 だから、割と結構な頻度で作っていたりする。


「というわけで早速作っていきます」


 と宣言し、フライパンにごま油をたらり。

 豚キムチを作るならごま油を使いたい。あの香ばしさがまた美味しさを増してくれるんだよね。

 十分にフライパンに馴染ませ、馴染んだらブタノヨウナナニカ肉をドーン!!

 塊のまま投入し、火を入れながらほぐしていく。

 全体的に色が変わって火が通ってきたら、スーパーで買って来た徳用2㎏のキムチを投入。

 ついでにチューブのおろしにんにくをにゅにゅっと出して。

 後は全体にこれらが絡めば完成。

 ね? 簡単でしょ?


「今入れた赤い野菜たちは?」

「キムチって言う漬物ですね。食べてみます?」


 と、白菜の白い部分のキムチを箸で摘まみ、ラベンドラさんの手の上へ。


「感謝する」


 と言いながらそれをパクリと食べたラベンドラさんは……、


「――っ!? 辛いのか!?」


 まさか辛いと思っていなかったのか、驚き目を見開いた。

 明らかに辛い色合いしてるじゃん……。異世界では赤=辛い色ってわけじゃないのか?


「あ、ごめんなさい。先に言っておくべきでした」


 まさかこっちの常識が通じないとは思わないもの。

 でも、確かに疑問に持つべきだったかも。

 反省反省。


「もしかして辛いのダメでした?」

「いや、食べられなくはないが、食べる機会があまりなくてな……」


 あ~……。言ってしまえば辛いのは香辛料か。

 やっぱ胡椒とかも手に入りにくいんですかねぇ。


「もしアレなら今から別の料理作りますけど?」


 その場合、明後日くらいまで俺は豚キムチを食う羽目になるから、できれば避けたいんだけどね。


「ワシは辛いのは平気じゃから食うぞい!」


 うん、ガブロさん。あんたは何となく想像できていましたよ。


「私も、あまり食べ馴染みはありませんが食べてみたいですわ」

「同じく。むしろ、こうして食べられる機会に食べておきたい」


 とはエルフの二人。

 そしてラベンドラさんも、


「辛いと思っていなくて驚いただけだ。気を使わなくていい」


 との事なので、俺の連日豚キムチは回避されました。……ホッ。


「じゃあ出来上がったのでご飯に盛っていきますね」


 まぁ、盛ると言っても豚キムチ丼にしちゃうんで、米の上に乗せるだけなんですけどね?

 どんぶりにする理由はただ一つ! 洗い物が少ない! これに限る。

 実際洗うの面倒だし、少しでも洗い物は減らしたいしね。

 というわけで丼を用意しまして~、ご飯をよそいまして~。

 豚キムチを乗せる前に、ご飯の上にチーズをペタリ。

 パンとかに乗せる四角形のやつね。とろけるタイプの。

 

「今のは?」

「チーズです」


 ラベンドラさんからすかさず質問が来るけど、こうとしか答えられない。

 後は食べてから納得してくれ。

 後は限界まで豚キムチを丼に乗せ、完成!!

 豚キムチチーズトッピングニンニクマシ。週明けなんだ、これくらい食わないとやってられませんぜ。


「は~いお待たせしました~」


 と丼を持っていこうとすると。


「どれが誰のとかはありませんのよね?」


 リリウムさんが、恐らくだが魔法を使って丼を浮かせ、それぞれの前へと移動させていった。

 ……やっぱ、魔法使えるんだなぁ。

 なんてしみじみ思いつつ。

 飲み物の用意を忘れていたのでそれを用意して、五人で仲良く食事となった

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