第45話 事件現場
月曜とか言う憂鬱な朝だけど、美味いもん食えたのでそこそこに気分はいい。
タルタルソースにエビダトオモワレルモノを小さく切って塩茹でにしたものを混ぜ、それを食パンに乗せ、チーズを乗せてトースターで焼いた。
ピザ風エビタルトースト、とでも名付けよう。
姉貴は起きて来なかったので焼くだけの状態にして冷蔵庫に入れ、テーブルにメモを残して出社したよ。
コーヒーも淹れてあるからレンジで温めりゃホットで飲める。
……甘やかし過ぎか?
いやでも、姉貴の生活力の無さは目を見張る時があるからなぁ……。
過剰か? くらいで丁度良かったりするもんなぁ。
――いっけね、だとすると昼ごはんをなんも用意してこなかったぞ?
……流石に何とかするでしょ。
――多分。
*
仕事を終え、今日の晩御飯の材料を買い。
帰宅した俺が目にしたのは、玄関でさながら殺人現場のようにぐったりと横たわる姉貴であり。
そのすぐ脇に、
『犯人はかける』
と書かれたメモがご丁寧に置かれていた。
そして、俺が靴を脱いで家に上がった瞬間。
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~、と盛大な腹の音が。
……まさかな?
「姉貴? 生きてる?」
「死んでる」
「昼飯は?」
「用意されてなかった」
「いや、冷蔵庫とかに色々あったから適当に作ればよかったのに……」
案の定、昼飯を抜いたらしい姉貴は、俺がそう言うとガバッと立ち上がり。
「料理できる奴が言う適当に作るって言葉は、料理が出来ない奴からしたら気合入れて作る以上の意味になるの!!」
なんて、大声で言いだして。
「大体、自分で作るよりあんたが作った方が美味しいんだから、あんたが作るのを待つに決まってるでしょ!!」
「じゃあ大人しく待っといてくれよ」
「私は一食抜いたら餓死するの!!」
理不尽極まりない事を当たり前に言ってくる。
「で? 今夜のご飯は?」
「唐揚げ」
「全部許す。はよ作れ」
まぁ、こうして姉貴の好物を作ると言えば、手の平を返すわけだけど。
「ラベンドラさんから調理工程を見せてくれって言われてるから、作るのはあの人たち来てからだけど?」
「前言撤回。お前は私を餓死させる殺人者である」
姉貴の手の平は回転しまくって忙しそうだな。
ん~……。
「冷蔵庫にあるもので適当に作っていいなら軽く何か作るけど?」
「翔は私の自慢の弟だよほんと」
そろそろ姉貴の手首が取れないか心配である。
まぁ、マジで大したものは作れないけども。
というわけで唐揚げの下準備をしつつ、姉貴の空腹を誤魔化すものを作ることに。
と言っても、どっちもそんなに大変じゃないけどね。
*
というわけで唐揚げの準備。
トリッポイオニクを切り出し、ある程度の大きさに。
このトリッポイオニク、歯ごたえが凄いから俺らの想像する唐揚げの大きさよりも、薄く切ってとり天くらいのサイズ感の方がいいと思う。
あんまり分厚いと噛むの大変そうだし。
で、切り出した肉はブライン液へ浸す。
ブライン液ってのは塩と砂糖を溶かした水の事。
こいつに一時間くらい浸しておくと、ジューシーな唐揚げになるって寸法よ。
……元からだいぶジューシーだけど、ジューシー過ぎて困るって事はないだろうし、やっていこう。
ちなみにこれは味を付ける目的じゃないから味付けは付け終わった後にする。
さて、姉貴を満足させるものでも作っていきますか。
なお、当人は既にテーブルに着いて、ぐで~んとテーブルに伸びてる。
行儀悪いぞ~?
「ちなみに何作るの?」
「オムレツ」
「はよ」
ちなみにオムレツも姉貴の好物である。
と言うか、オムレツが嫌いって人、俺は知り合いに居ないな。
何気に卵料理って人気だよね。
タマゴかけごはんとかは賛否出てくるけど。
というわけでボウルに割り入れたタマゴに塩コショウとちょいマヨネーズ。
細かく刻んだトリッポイオニクとネギを入れてよくかき混ぜ。
熱したフライパンにバターを落とし、溶けきる直前に卵を流す。
あとは熱しながらギリギリまでかき混ぜて、形を整えて出来上がり。
皿に移し、ケチャップと箸と共に姉貴に持っていくと……。
「スプーンがいい」
わがままめ。
日本人ならお箸使いなさいお箸。
お箸さえあれば大抵の料理は問題なく食えるんだから。
「…………めっちゃいい匂い」
「まぁ、どうあったってオムレツは不味く作れんよ」
ちなみに例外はある。
が、オムレツに限らず料理を不味く作る人はそう言う才能の持ち主であるというのが俺の持論。
料理には不味くなる条件みたいなのがあって、普通の人はその条件をほとんど満たさないんだけど、才能ある人は無意識にその条件を揃えちゃうんだよね。
レシピ本でも買って、そのレシピを忠実に再現してればおのずと無くなるよ。
間違っても、アレンジしようとは思わない事だな。
「卵の殻とか入ってない?」
「姉貴じゃあるまいし」
「むぅ。いただきます」
食べる前に、オムレツに☆マークを描いた姉貴や、そっとオムレツにスプーンを入れて。
出来立てで、まだ湯気が出ているオムレツを掬うと、そのまま口へ。
「…………ウッマ!」
だから言ったじゃん。
オムレツは不味くならないって。
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