第46話 みんな大好き唐揚げ

 姉貴の小腹も満たし終わったところで、唐揚げの続きと行きましょう。

 あー……醤油味と塩味の二種類作るか。

 となるとボウルは二つ。

 一方に、酒、みりん、醤油、チューブの生姜、同じくチューブのニンニクを加えてよくかき混ぜる。

 ……ちょっと麺つゆも加えておこう。

 そしたらもう一方にも酒、チューブの生姜を入れて、塩と味の素を振り振り。

 そこに焼き肉用の塩ダレを加えまして、隠し味に味覇……っ!!

 中華最強の万能だし……っ!! 半練りタイプ……っ!!!

 こちらもよーくかき混ぜて、と。

 ブライン液に漬けていた肉をザルに揚げ、水気をキッチンペーパーでしっかり切って。

 それぞれのタレの中に肉を沈める。

 これで衣つけて揚げるだけ。

 付け合わせのキャベツは千切り済みのをスーパーで買ってきたし、レモンもホホイと切るだけだし。

 あとは四人が来てからで大丈夫かね。

 とりあえずご飯だけは炊いといて、と。

 そしたらちょっとリラックスタイムとしましょう。

 ……そう言えば、


「姉貴」

「ん~?」

「いつドイツに行くん?」

「明日?」

「何故疑問形だし。……朝飯は?」

「いるー」

「りょ」


 姉貴のスケジュール聞いて無かった。

 とはいえ明日にはドイツに出発するらしいし、これで少しは負担が減るな。


「ドイツの後は中国経由して帰宅?」

「分かんない。中国までは確定だけど、そこから一旦アメリカに戻るかも」

「決まったら連絡くれ。一昨日みたく急に帰って来られても飯があるかの保証はないぞ?」

「翔はお姉ちゃんを餓死させる気?」


 なんだろう。

 目を潤ませて上目遣いをされてるんだけど、俺って変なこと言ったか?

 帰ってくるなら連絡しとかないと飯は知らんって話なんだが……。

 あと、人間一食抜いた程度じゃ死なんよ。

 俺が保証する。


「連絡さえしとけば用意する。ただし、帰宅する二十四時間以上前に連絡する事」

「横暴だー」

「姉貴はどうせ帰宅の五分前とかに連絡寄越しそうだからな」

「姉貴の心を読むな」

「弟に心を読まれるな」


 全く……。

 なんてやり取りをしていたら、魔法陣が登場。

 そして、程なくして四人も登場。


「いらっしゃ~い」

「お邪魔しますわ」


 リリウムさんを歓迎のハグで迎え入れた姉貴は、そのまま流れる様にテーブルに着席。

 ラベンドラさんを除く三人もその流れに従って。


「お茶くらいは自分で注げよ?」

「あいあいさー」


 人数分のコップとお茶を渡せば、ちゃんとみんなにお茶を注いで配ってた。

 まぁ、それくらいはしないとね。


「む? 今日も準備がある程度終わってるのか?」

「今日の料理は肉に味を染み込ませる工程があるんで、先にそれだけやっちゃいました。お肉なんですけど……」


 既に準備万端の肉を見て眉をひそめるラベンドラさんだけど、勘弁してもろて。

 今はオムレツで誤魔化されているとはいえ、四人が来てから一から作っていたら、クウフクアネキザウルスが暴れかねない。

 俺の安全のためという事で、ここは一つ……。


「ブライン液という、砂糖と塩を混ぜた水に一時間くらい浸します」

「その目的は?」

「ざっくり言うと、美味しくなります。もう少し詳しく言うと、ジューシーになります」

「…………?」

「とりあえず、美味しくするために必要な工程です」


 いや、説明が下手なの分かるよ?

 でも、そうとしか認識してないんだからしょうがないじゃん。

 そんな首傾げられても困る。


「で、一時間浸して水気をよく切ったら、こっちのタレに漬けこみます」


 話題を切り替えタレの説明に。

 タレに使った調味料とかを説明し、


「後はこれに唐揚げ粉をまぶして油で揚げて完成ですね」


 と。

 ね? 簡単でしょう?

 まぁ、言うだけなら、ね。

 ちなみに、俺は小麦粉でも片栗粉でもなく、メーカーが発売してる美味しく揚げる唐揚げ粉みたいなのを使ってる。

 味もついてて、そのまま使って便利な奴。

 もう個人でどうこうするよりもね、市販されてるものを使った方が楽だし美味しいんですよ。

 個人の努力とメーカーの努力、どっちが大きいかって話。

 ……楽をしたいだけとか言わない。

 大事なんだぞ。適度に手を抜くのって。


「タレから引き揚げて、粉をまぶして、熱した油に入れていきます」


 シュワーって言う油の音が部屋に響くと、耳ざとく聞きつけた待機中の四人が一斉にこちらを見てくる。


「この音だけでテンション上がりますわね」

「分かるー。絶対美味しい音してるもんね」

「音も楽しめるというのは新しい発見だな」

「そも油で揚げるという調理法があっちの世界じゃ浸透してないからのう。そもそも油を安定に手に入れる方法もちと面倒ではあるし」

「まぁ、植物油とか無さそうだよねー」


 油談議で盛り上がってるわ。

 まぁ、こっちはこっちでラベンドラさんが瞳キラキラさせて揚がってるお肉見つめてるけど。

 そういやこのトリッポイオニク、脂身が少ないんだよな。

 生ハムの原木っぽいとは言ったけど、全部が赤身と言うか。

 薄っすらと脂はあるんだけど、こう、豚みたいな脂の層はない。

 ついでに言うと皮も無いから、鳥皮のから揚げとかは出来ないんだよね。

 残念。

 というわけで揚げ終わった第一陣をバットに引き上げ、第二陣を投入。

 今回は一度揚げと二度揚げの二種類も作りますわぞ~。

 味は塩と醤油、揚げ方は一度揚げと二度揚げの二種。

 計四種のから揚げとなってござい。

 一度揚げのしっとりした唐揚げも美味しいし、二度揚げのザクザクした唐揚げも美味いよね。

 どっちが好きかと聞かれればどっちもと声を大にして言うわ。

 さてさて、このまま揚げていきますわよ~。

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