第662話 翻訳魔法「(´・ω・`)」

「カケルが用意してくれた肉を焼く……と」

「です。ちょっと手羽先を食べたくなりまして……」


 リボーンフィンチの合間に手羽先を挟む。

 箸休めならぬ口休めというか、胃休めというか……。

 あまりにも美味しい食べ物の連発だと口とか胃がびっくりしちゃうからね。

 手羽先という食べ馴染んだ食材を挟むことで、この後の美味しいの濁流に備えるって寸法よ。


「鳥の手の先?」

「かなりちいせぇ鳥だな」

「そっちの鳥たちが軒並みデカいんですよ……」


 鳥に限らずデカいけどね。

 そういえば、昔の地球に存在した生物たちは体が大きかったらしいね?

 酸素濃度が濃かったからとか言われてるけど……もしかして異世界も酸素濃度が濃かったりするのかな?

 とすると異世界組が前日へとへとのボロボロだったのに、翌日にはピンピンしてるのも高酸素の影響か?

 高酸素カプセルとか、プロアスリートが利用してたりするし……。


「骨ごと食うのか?」

「止めはしませんけど、鳥の骨は折れたら尖るので怪我しますよ?」

「じゃあやめとく」


 流石に鳥の手羽先を骨ごと行く人は見た事無いなぁ。

 もしかしたら骨ごと食べられるように柔らかくなるよう手間をかけてるお店とかもありそうだけど。

 ちなみに手羽先は串には刺してない。

 手羽先は手で持って食べてなんぼでしょ。


「焼けたぞい」

「あち、いただきます」


 折角なので熱さと格闘しながら焼きたてにガブリ。

 むほほほ、これよこれ。

 リボーンフィンチの旨味には負けるけど、手羽先バーベキューだけでも十分に美味い。

 何より皮が付いてるのが嬉しいね。

 抜群の火加減でパリッとサクッと焼かれた皮は、歯が突き立てられるとジュワッと肉汁を噴射。

 口の中を火傷しそうになりながらも身にかぶりつき、溢れる肉汁を吸いながら骨から引きはがす。

 うんめ。

 姉貴のタレの味付けも抜群だね。

 やや甘めのタレに、カレー粉の風味が鼻に抜ける。

 いやぁ、ビールが美味い。


「いけるな」

「皮の食感、肉のジューシィさ、そしてタレの味付け。どれもシズル感を感じさせる」


 ……シズル感ってなんぞ?

 異世界語か?


(んな訳なかろう)


 マジか。という事は現代語か。

 ちょっと調べてみよう……手拭きが無い。

 ウェットティッシュ持って来よう。

 ――要は食欲を刺激するような様々な要因って感じの言葉なのか。

 初めて聞いたわ。


(伝わらなくて翻訳魔法の精霊が悲しんどるぞい)


 悲しむくらいならもう少し分かりやすい表現にしてくれ……。

 

「やっぱ手羽先よね」

「皮も軟骨も美味しい要素全部あるからね」

「手羽先一本で鶏肉を味わい尽くせるのよね」


 ただし内臓系は除く。

 あと、どうしても口いっぱいに頬張る感じはもも肉や胸肉の大きい部位が強いけどね。

 それでも、鶏肉で一番好きな部位は? って聞かれたら手羽先って答えるかな。


「冷やしトマトがうめぇ」

「文字通り、染みる」

「合間の野菜でリフレッシュ出来るのも嬉しい所ですわ」

「それらも軒並み美味いしな」

「酒が進むぞい」


 お通しとして出した冷やしトマトも、気が付けばサイドメニューへと転身。

 いやまぁ、美味しく食べてくれてるから特に文句も無いんだけれども。


「続いてはぼんじりじゃな」

「リフレッシュした後に丁度いい部位だな」


 無限キャベツで俺も口をリセットし、来たるべきぼんじりの脂に備える。

 しゃぶしゃぶした時ですらあの脂だったんだ、焼き鳥にしたらどうなっちまうんだよ。


「脂のせいでタレが流れるからな、この部位は塩のみじゃ」

「マジか……」


 結論は脂のせいでタレが塗れない程、でした。

 いやマジか。

 声に出したけどもう一回心の中で呟いとこう。

 マジか。

 そんなゴテゴテの脂なんて、本当に美味しいのかしら……。


「むん!」


 ……姉貴、その反応はどう受け取ればいいの?

 せめて弟の俺には伝わる表現をしてくれたまへ。


「……あ、うま」


 で、聞くよりも噛むが易し。

 自分で体験するためにぼんじりを口へと入れましたところ……。

 まずは恒例の、ジュワッと溢れる肉汁。

 ただ、さっきまでのサラサラとした肉汁とは違い、こっちは結構重ための肉汁。

 そのせいか、今までよりも濃厚な旨味とコクが感じられる味わいで、飲み込んだ後の後味が、スッキリとした甘さを残す。

 そこに掻っ込む白米!!

 ……あ、ウェットティッシュ持って来た時についでによそって来ました。

 そろそろ我慢出来なくなったんで。

 白米一粒一粒に口内でぼんじりの脂がコーティングされ、米の甘みと脂の甘みで口の中が凄い事に。

 そこに流し込むビールがまたたまらんのよ。

 ……これでビールを飲み干しちまったな。


「このギュッと濃縮された脂の旨味が酒にすこぶる合うな」

「白米にも合う」

「くどくはなく、飲み込んでも胸焼けもありませんわ」

「ほぼ肉汁爆弾と言える代物だった……」


 と、リボーンフィンチのぼんじりを食べたラベンドラさんからあまりにも的確な言葉が出て来た。

 肉汁爆弾、言い得て妙。


「ふぃ~……。ビールが美味いわい」


 ……ガブロさん、今、何本目?

 ちなみに今回はロング缶のビールをダンボール箱ごと買って来たんだけど、もう既に五本は飲み干してるな。

 ペースが速いて……。

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