第22話 命名:エビダトオモワレルモノ

 朝起きて、会社に出勤し、昼飯を食べ、仕事を終える。

 その間ずー---------っとあのエビダトオモワレルモノをどう調理しようかと考えてた。

 あの四人が喜びそうで、かつ、エビが主役になり得る料理。

 まず真っ先に思いついたのはエビフライ。

 日本発祥の洋食だったはずだし、絶対に受ける。自信がある。

 ただ、一つだけエビフライ作るならやりたいことがあって。

 それをするなら休日がいいんだよね。

 というわけでエビフライは一旦保留。

 次に思いついたのはエビチリ。

 干焼蝦仁カンシャオシャーレンって言うんだっけ? 中国語だと。

 美味いよねぇ。しかもビールに合う。もちろん、あの四人にも受ける。

 ただ……、


「中華が続くってのもなぁ」


 酢豚、やったばっかだしな。

 これももう少し間を置きたい。

 ……という事で。

 今日の晩御飯はエビが主役であり、エビフライのように日本発祥の洋食。

 エビドリアにすることがここに決定しました~。

 ドンドンパフパフ~。

 というわけで早速お買い物。

 あれと、これと、それと、それからコイツぅ!!

 というわけで買い物を終えて華麗に帰宅。

 また下ごしらえだけしておきますか。

 エビシートと言っても過言ではないエビダトオモワレルモノを、まずは普通のエビの大きさに形成していく。

 冷凍して売ってある奴ね。品種で言うならブラックタイガーくらい?

 そんくらいにカットして、背ワタを……。

 そもそもこいつ、どっちが背? ていうか、見渡す限り乳白色一色なのに背ワタもクソもなくない?

 そんな……。せっかく竹串まで持ったというのに……。

 ま、まぁ、下ごしらえの工程が減るのは楽ですし?

 全然問題有りませんわよ。

 んじゃあ臭みでも取りますかね~。

 カットしたエビダトオモワレルモノをザルに移し、上から塩を振りかけて。


「ん? 片栗粉切れちゃってるや。……ま、いっか」


 塩もみだけでもある程度臭みは取れるでしょ。

 というか、味見で茹でた時に臭みはそんなに気にならなかったし。

 これくらいで充分。

 ある程度揉みこんだら水で洗い流し、下ごしらえ完了。

 後の調理は四人が来てからにしよう。

 その前に米だけ炊いておきますか。


「ドリア作る予定なのに米炊き忘れてちゃ世話無いしな」


 米を研ぎ、炊飯器にセットしポチッとな。

 さてさて、四人が来るまで動画でも見てるとしますかね。

 


「邪魔するぞ」

「お邪魔しますわ」

「飯じゃ飯じゃ」

「また世話になる」

「いらっしゃ~い」


 というわけでやって来ました四人組。

 もう既にご飯炊けちゃったし、ちゃっちゃと作っていきますかね。

 まぁ、思いっきりズルする気満々ですけども。


「カケル、今日のメニューは?」

「今日はエビたっぷりのドリアを作ります」


 ラベンドラさんからメニューを聞かれ、言っても分からないだろうけど答えてみる。

 案の定、腕組んで頭傾けてるから分かってはないっぽい。


「百聞は一見に如かずというんで、早速やっていきましょう」


 別に詳しく説明する気もないのでそのまま出発。

 まずは……。


「俺らの世界だとこんなのがあるんですけど……そちらの世界にはありませんよね?」


 取り出したのは、『エビドリアの素』と書かれたスタンディングパウチ。

 はい。ズルです。ホワイトソース作るの面倒なんでレトルトに頼ります。

 しゃーないじゃん。仕事終わりなんですし? 疲れてますし? お寿司?

 いちいち小麦粉を炒める所からなんて。作ってられませんわよ。


「見たことないな。……いや、中身の話か」


 ぶっちゃけ異世界にパウチとかあったら驚きだよ。

 ……いや、あるかもしれないけどさ。

 まぁ、本題はそこじゃなく、ラベンドラさんの言う通り中身なんだけども。


「後で味見してもらうので、とりあえず作っていきますね」


 と言っても面倒な工程は全部企業努力で終わらせてくれてるから、具材炒めてソース絡めるだけなんだけどね。

 熱したフライパンにオリーブオイル、そこに切った玉ねぎドーン!!

 五人前になると結構な量になるよね。

 こいつをまずは透明になるまで炒めましてー。

 エビーッ!! 追加ーッ!! 倍プッシュ……っ!!!

 と、大量の下処理をしたエビダトオモワレルモノをフライパンへ。

 こいつは透明感が無くなるまでしっかりと火を通し……。

 本命……っ!! ドリアの素……っ!!

 水分少なめでチョイ固めのソースを投入。

 当然五人前。

 で、あとはそのソースが全体に絡まれば具材の完成。


「というわけで出来上がりです。味見どうぞ」


 と、ソースの絡んだエビダトオモワレルモノの一つを爪楊枝で刺してラベンドラさんへ。

 それを受け取り、口に入れたラベンドラさんは……。


「ふほっ!」


 変な声を出した。


「何事だ!?」

「抜け駆けで食うとは許さんぞい!?」

「説明をお願いしますわ。私は今、冷静さを欠こうとしています」


 その声に反応する三人。

 あの、目がマジすぎるんですけど……。


「馴染みのないソースだと思ったので味見をして貰ったんです」


 俺が説明すると、ならば仕方ないか、と、すごすごと座る三人。

 いや怖ぇよ。

 飯を先に食ってたら襲い掛からんばかりの勢いだったぞ?

 んで? 変な声を出したラベンドラさんは……?


「バターの香り……。それにこれは……? ミルクは間違いない。『――』の爪の風味もある……。後は……?」


 なんか一人で色々考えてらっしゃるっぽい。

 多分あれだな。元の世界の食材で味を再現するにはどうすればいいか考えてるんだろ、多分。

 それじゃ、器にご飯盛って、このソースかけて、ピザとか用の細切りチーズをたぁーーっぷりかけて。

 オーブンに入れて、焼いて完成。

 オーブンに『ドリア』ってボタンあったからそれをポチッとな、ってね。

 ……流石に五個一気には入らなかったから、まずは三個。

 第二陣で残りの二個を焼くことに。

 喧嘩にならないと良いけどなぁ。

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