第369話 必要なもの:エルフ
「やっぱりこの世界の食べ物は最強じゃったぞ!!」
魔法陣から出て来ての第一声がこれ。
最初は何のこっちゃだったけど、多分きっと恐らくは『無頼』さんにジャム食わせたんだろうな、と。
んで、その反応が良かったんだろうな、と。
「どれが一番好評でした?」
というわけで、ジャムを食べさせた読み質問。
果たしてその結果は?
「あのほろ苦いジャムだ」
金柑かな?
確かに美味しかったねぇ。金柑の皮が凄く柔らかくてさ。
で、ほろ苦さもあって、甘さとのバランスが絶妙なんだ。
「あいつも酒飲みだからな。甘いだけのジャムを好まないらしい」
あー……。
まぁ、甘いもの好きな酒飲みもいるとは思うけどね?
甘党と辛党がうんぬんかんぬん。
「よし、カケル。それで? 今日の食事は?」
「コロッケとオムレツ、スープを作りましょう」
「……サラダは?」
「サラダはもう切ってある奴が用意してあるんで」
って言った後に思ったんだけどさ?
ポテトサラダって選択肢があるじゃんね。
えぇと……リボーンフィンチの卵、分身して?
――無理か。そりゃあそんな都合よくならんか。
いやぁ、ポテトサラダ作るなら確実にゆで卵欲しい派なんだけど、残念だなー。
しょうがないなー。
……よし、言い訳完了。これでサラダは買って来た奴を使うしかなくなったな、ヨシ。
「コロッケは後は揚げるだけか?」
「です。タネは作ったんで。ただ、かなり液体に近いんで、魔法で形成とかをお願いしたくて」
「お任せくださいませ! 私が責任を持って形成いたしますわ!!」
魔法でって聞いて、張り切って名乗りを上げたリリウムさん。
えぇっと、バットに小麦粉、卵液(緑)、パン粉を用意してっと。
「コロッケの工程は覚えてます?」
何度か作ったことあるし、大丈夫だろうとは思うけど、念のため確認。
「全く!」
確認してよかった。じゃあ、バットの並びを変えてっと。
「こっちからこっちに向かって、順番に付けて貰っていいですか?」
「分かりましたわ!」
右とか左とか言うと、俺目線かリリウムさん目線かで変わってきちゃうからな。
なるべく排除できるリスクは排除するのが仕事の鉄則。
「で、ラベンドラさん」
お待たせしましたとばかりに声をかけたら、やっとか、みたいな表情された。
「スープとオムレツ、どちらがいいですか?」
「二択か……スープだな」
「じゃあ、侯爵芋と玉ねぎを皮剥いて薄切りにして、炒めてもらっていいですか?」
「任せろ」
というわけで調理開始の宣言をしろ! ガブロ!!
……まぁ、うん。言ってみたかっただけよ。
てなわけで俺はスペイン風オムレツ……トルティージャの調理へ。
入れる具材は侯爵芋と、玉ねぎと……。
どうせ緑なんだしホウレン草も入れちゃおう。
てことで、侯爵芋はいちょう切り、玉ねぎはくし切り、ほうれん草はざく切りにしまして。
まずはそれらをボウルに入れ、オリーブオイルをかけて全体と混ぜ合わせていく。
先にオリーブオイルでコーティングすると、旨味とか水分が抜けないんだって。
デカクカタイタマゴでトルティージャを作った時の翔君とは違うのですよ。
俺は日々進化をし続けている。
「どれくらい炒める?」
「ある程度火が通ったらで大丈夫です。そしたら水と顆粒コンソメを加えて、侯爵芋が柔らかくなるまで煮ます」
「ふむ」
「カケル? コロッケの衣付け終わりましたわよ?」
「あ、じゃあ……ここに並べておいてください」
リリウムさんがちゃんと仕事を終えてくれたらしい。
というわけで後は揚げるだけのコロッケを並べるバットを持って来たんだけど……。
「魔法を解くと形が崩れてしまいますから、揚げるまでこうしておりますわ」
だそうです。
衣付けても流動性は変わらんみたい。
おかげでコロッケに急かされながら料理してるみたいな構図になっちゃってる。
さて、オリーブオイルを纏わせたら、フライパンに具材だけ敷き詰めて蓋をして蒸し焼き。
その間にボウルに卵を割り入れまして。
「カケル、柔らかくなった」
「じゃあ粗熱が取れるまで放置ですね」
忙しいよねぇ、料理って。
一つの料理しか作らないならまだしも、色んな料理を作ろうとすると、ね。
ましてや全部出来立てを食べさせるために、調理時間とか計算し始めるともう……。
某漫画で錬金術は台所から出来た、なんて話、今なら信じられるよ。
「ちなみに冷めた後の工程は?」
「こいつに牛乳とぶち込んで滑らかにした後、塩コショウで味付けて温めたら完成ですね」
「なるほど。ならば魔法で可能だ。このまま進む」
うん、人間に――この世界の人間に出来ない事だから考慮すらしてないんだよなぁ。
まぁ、いいか。
ちなみにこいつってのはフードプロセッサー君の事ね。
「いい匂いがしてきましたわね」
というリリウムさんの言葉を合図に、蒸し焼き中のトルティージャの具を火から降ろしまして。
リボーンフィンチの溶き卵の入ったボウルの中に、ダイレクトイン。
そこに塩コショウ、粉チーズを加えましたら……。
「こっちも焼くだけなんで、揚げの工程と並行しましょう」
油を用意し、リリウムさんに頼んで浮いていたコロッケたちを油の中へ。
ボウルの中のトルティージャの具たちをフライパンに流し込み、ラベンドラさんはポタージュの方に塩コショウ。
これで大体出来上がる時間は一緒だね。 ヨシ。
それじゃあ、盛り付けして食べる直前までカット!
あ、ラベンドラさん。トルティージャをひっくり返すの、魔法でお願いします。
フライパン一杯のオムレツなんて、俺には到底ひっくり返せないからね。
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凄くそう言えばなんですけど、本作はコミックポルカ様よりコミカライズ化が決まっており、現在順調にコミカライズ企画が進行中でございます。
お伝え出来る情報(販売時期など)が出た際にはまたこのように連絡させていただきます。
なお、コミカライズ企画が進行するにあたり、更新頻度などの変更はございません。
先行している『小説家になろう』版に追いつくまでは毎日2話、追いつき次第毎日投稿に切り替わります。
コミカライズの発売、並びに情報の公開を楽しみにしていただけると幸いです。
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