第595話 正気度チェックは不必要
山芋マンドラゴラをすりおろし、めんつゆを加えてよく混ぜる。
ご飯の上にかけたらワサビを乗せ、鰹節をパラリ。
味噌汁はインスタント、卵焼きは甘め。
ご機嫌な朝食だ。
「朝から一仕事した甲斐がある美味しさ……」
そりゃそうだって話だけど、昨日味見した短冊切りと、すりおろしたとろろとじゃあ味わいが全然違う。
噛んでしばらくしてから美味しさが滲んできた短冊切りとは違い、とろろ汁は最初から美味しさマックスで訴えてくる。
そこに鰹節の旨味とワサビのツンと来る刺激がたまんなくてな。
とろろご飯を掻っ込んだ後に、ゆっくりとすする味噌汁が最高に美味い。
卵焼きの甘さもいい塩梅で、大変満足度の高い朝食でございました。
「イクラの醤油漬けとか、ウニとかも合いそう」
そして食べてみて思う、相性のいい食材たち。
旨味が強く、香りが爽やかでほのかに甘い。
そんなとろろ汁に合う食材は……かなり多いと思う。
まぁ、手が出るかは別の話なんだけれども。
「……仕事行くか」
洗い物をちゃっちゃと済ませて、いざお仕事。
帰りに色々と買って来なくちゃなぁ……。
*
ただいま、と言う事でね。
買って来ましたよ色々と。
まぁ、紹介はみんなが来てからって事で。
……すりおろすのだけやっとこうかな、とも思ったんだけど。
絶対に魔法でやって貰ったほうが早いんだよね。
と言う事で、これもラベンドラさん達が来るまで待機。
となるとやることは……。
「ご飯炊いて、味噌汁は作っとかなきゃだな。あとは……」
これらの作業に加えて……。
「山芋マンドラゴラの分離作業……かな」
聞きなれない作業も必要になるよねって言う。
まぁやることは、人数分のとろろが確保出来る位の量を、山芋マンドラゴラから切っては再生させ、切っては再生させ……とやるだけ。
冷蔵庫を開けたら、
「今から自分、切られるっすか!?」
みたいな表情でマンドラゴラが見てくるけど気にしてはいけない。
君たちは食材なんだ、いいね?
「異世界にはヴィーガンとか居なさそうだよな」
結局野菜も動き回ってるしね。
何なら、表情とか無駄に豊かで心が痛むぞ?
冷蔵庫開けた時は怯えた表情なのに、俺に捕まれた瞬間に何かを悟って覚悟を決めた表情になるし。
やめてくれマンドラゴラ、その表情は俺に効く。
「軍手、ヨシ」
まぁ、関係ないんですけど。
炒り塩水に浸した軍手を装着し、山芋マンドラゴラの三分の一を切り落とし。
炒り塩水にぶち込んだら、再生するのを待ち。
再生したらまた切って……を繰り返す。
再生してホッとした表情のマンドラゴラに包丁を向ける度にビクッとするの、本当にやめて欲しい。
俺は……止まるわけにはいかないんだ……。
「こんなもんか」
切り落とした量は寸胴鍋に半分くらい。
これだけあれば十分に足りるでしょ。
「はいはい、泣かないの。明日もよろしくね」
散々再生と切断を繰り返された山芋マンドラゴラは泣いちゃってるけど、これで終わりじゃないんだな。
明日は明日の風が吹く。
……人の心? そこに無ければないですね。
「皮だけは剝いておくか」
すりおろす時に邪魔になるし、解呪の終わった山芋マンドラゴラの皮を包丁で剥き。
結構時間が掛かっちゃって、剥き終わる前に『夢幻泡影』と『無頼』アメノサ組が登場。
「……取り込み中か?」
「気にしないでください。皮剥いてるだけなんで」
「ふむ……」
あごに手を当てたラベンドラさんが指パッチンを一回。
すると、皮が付いたままの山芋マンドラゴラが宙に浮いて……。
「ふん」
秒で全部の皮が剥かれる。
……魔法って便利だなー。
「今日のご飯は?」
「お好みとろろご飯とお味噌汁です」
「私の作業は?」
「芋をすりおろすことですかねぇ」
「分かった」
と、ラベンドラさんに晩御飯の情報を最低限伝えたところで……。
登場するはすり鉢。
すりおろし器を使ってもいいんだけど、すり鉢ですった方がとろろが滑らかになるんだよね。
短冊切りの後にとろろを食べて思ったんだけど、細かくした方が旨味がより強くなる説がある。
と言う訳で検証の為にすり鉢でおろしましょ。
「これに擦り付けておろして貰っていいです?」
「任せろ」
で、魔法によって山芋マンドラゴラがすり鉢ですりおろされていくんだけど……。
あの……ルーレットでさ、玉が転がる様子があるじゃん?
ビジュアルがアレ。
しかも玉役の山芋マンドラゴラが次々追加されていくから、カジノのルーレットよりはメダルゲームとかのそれに近い。
ちょっと見てたい……けど。
「カケルは何を?」
「とろろと合わせる出汁を取ってます」
「ふむ……」
「とろろの総量の倍くらいの出汁を合わせたいんですよね」
俺が見てる動画投稿者が言ってた。
それくらいの比率が一番美味いって。
「出汁は鰹節で取るのか?」
「だけじゃないですけどね。あごだしと煮干し出汁も合わせます」
「魚の出汁で攻める訳か」
「ですね」
あごだしのシャープなうま味に、煮干しや鰹の大きく膨らむようなうま味。
これらは、絶対にとろろに合う。
「ちなみに取れた出汁はみそ汁にも使います」
「うむ」
って出汁を取ってるうちに山芋マンドラゴラがすりおろし終わったみたいなので……。
「少しづつ足して混ぜて、混ざったら足してを繰り返して貰っていいですか?」
「任せろ」
とろろ汁の方をラベンドラさんに任せまして、俺はみそ汁へ。
と言うか残りの人ら静かだな、何してるんだろ……。
「あの量のマンドラゴラを確保するのに何度再生と切断を繰り返したんだ?」
「当たり前に呪いを克服している事実」
「やっぱ規格外だよな、カケル。人間じゃねぇンじゃね?」
「能力値見ても人間でしかないですわよ。……多分」
俺を観察するな俺を。
あとリリウムさん、そこはもっと強く言い切って欲しかった……。
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