第41話 選んだのはポン酢でした

 ……へへ、肘が笑ってやがる。

 つっっっっっっっっかれたンゴねぇ!!

 なんかもう、どうせだしブタノヨウナナニカを使い切っちゃえ! って思っちゃって、結局餃子三百個包みましたわよ。

 その内百個がエビ餃子。

 んで、百個がノーマルな肉餃子。

 ……ノーマルっつっても、ブタノヨウナナニカとトリッポイオニクの合い挽き(手動)だけど。

 ほんで、残った百個の内半分が大葉入り、もう半分はチーズを入れました。

 もうね、時間掛かり過ぎるからラベンドラさんへの調理工程は全カット。

 口頭だけで説明して、後はもう適当に焼いてる所を見てもらうわ。

 あんまりにも疲れたので、手に付いた粉を落とすという名目で風呂に入りました。

 ちょっと熱めの風呂に、入浴剤入れて。

 ゆ~っくり体の疲れを落とし、もうすっかり夕方じゃな。

 風呂上りに買ってたカフェオレを飲みまして、準備完了。

 ご飯だけセットして、人をダメにするクッションにダイブ。

 あの四人が来たら姉貴が起こすでしょ。

 というわけで起こされるまで仮眠なり。



「お邪魔しますわ」


 って言うリリウムさんの声で目が覚めたわ。

 おっと……涎垂れてた。


「ん、いらっしゃい」

「何か見たことないものがテーブルの上に並んどるが、これは?」


 部屋に来るなり目ざとく餃子を見つけたのはガブロさん。

 酒に合うからね~。きっとおつまみセンサーでも反応したんでしょうや。


「これが今日のご飯ですよ」

「なに? 今日は過程は見せてもらえないのか」


 すでにご飯があると聞いて、少ししょんぼりするラベンドラさん。

 そんな顔しないの。ちゃんと説明するから。


「この料理、準備が凄く時間掛かっちゃうので、あらかじめ俺が作っちゃいました」

「なるほど?」

「でも、作り方は単純なんで、説明するだけでラベンドラさんも作れるようになると思いますよ?」

「早速説明してくれ」


 と、いつものようにラベンドラさんは俺の方に寄ってきて。

 残りの三人は、一足先にテーブルに着席。

 じゃあまぁ、焼きながら説明しますか。


「これは餃子と言って、小麦粉で作った皮に具を包んだ料理です。具にしているのは今まで貰った肉とエビですね」

「なるほど」


 フライパンにサラダ油を引いて、餃子を並べ。

 中火にて焼いていく。


「肉にもエビにも、それぞれニラとネギを刻んで入れています。肉には追加でシイタケと白菜も刻んで入れてますね」

「それは必ず必要な食材か?」

「必ずではないですけど、かさ増しにもなりますし、美味しいんで俺は入れますね」


 シイタケとか苦手な人もいるし。

 あの独特の匂いがダメって人は結構いると思う。

 ……俺大好きだけど。シイタケのバター焼きにレモン汁かけて食うのめちゃめちゃ好きだけど。


「ふむふむ」

「エビの方はほとんど一緒ですけど、こっちはかさ増しせずに作りました」


 こんな機会じゃないとエビばっかりのエビ餃子なんて作る事なんかないしね。

 俺のやりたいようにさせてもらったわ。


「あと、別に必ずしも焼く必要はなくて、蒸したり、茹でたりしても美味しいです」

「そうなのか」

「はい。お昼に食べましたけど、水餃子も滅茶苦茶美味しかったですね」


 まだ残ってるんで消化お願いします。

 いや、ほんと。切に。


「いい感じかな? 焼き目が付いたら、水を入れて蓋をして、蒸し焼きにしていきます」


 そろそろ餃子がいい感じなので、水を入れて蒸し焼きに。

 ついでに水餃子を温めるためにそちらにも火をつける。

 そんな俺がラベンドラさんに餃子の事を説明している一方、姉貴はと言うと……。


「じゃあ、やっぱりダイヤモンドはそっちの世界でも希少なんだ」

「そうですね。見た目の美しさもですし、魔力の伝導率も高いので、魔法を扱う者は杖に仕込んだり致しますし」

「ダイヤモンドはよく冒険者の間でも、価値の下がらない資産として手元に持っておく奴がいる。そのせいもあって、市場には中々に出回らない」

「入手経路も難しいからのぅ。高ランクのダンジョンの宝箱くらいからしか採れんわい」


 仕事の話……と言うか、姉貴が異世界に対して疑問に思ったことを聞いているらしい。


「鉱山とかからは採れないの?」

「ダイヤモンドが採れる鉱山となれば、国が保有しますわ。当然、採掘されたものは国に」

「貴族間でオークションにかけられたりもする。要は、身分の高い連中が半分独占している状態というわけだ」

「金に困った貴族が冒険者に売り出すこともあるがのう」

「なるほど……」


 なんというか、ダイヤモンドってどこでも希少なんだな。

 さて、そうこうしている間に焼けましたわよっと。


「ラベンドラさん、お皿取ってもらっていいですか?」

「これか。ほら」

「ありがとうございます。……ほいっと」


 皿を被せ、フライパンごと逆さまにし、皿に乗せる。

 見事なきつね色の焼き目の餃子の焼き上がり。


「さ、俺は次を焼きますんで食べてください。……姉貴~? 仕事~」

「なに? 私話するのに忙しいんだけど?」

「水餃子とご飯よそって。それくらいはしてくれ」

「はいはいっと」


 姉貴を使って他の準備をして貰い、俺以外は食べられる状態に。

 いいんです。フライパンの大きさの関係上、一度に大量に餃子が焼けないんで。

 ……ちなみに俺の家では餃子にはポン酢を使う。

 この事で会社で話になった時、驚かれたわ。

 塩コショウだとか、酢醤油って人は居たけど、ポン酢は俺だけだったなぁ……。

 聞いた話だと、九州だとポン酢が一般的とか何とか。

 美味しいよ? ポン酢。


「いただきます」


 というわけで焼いている俺の背中に五人の声が聞こえてきたので。

 一体どんな反応をするだろうと、ワクワクしながら第二陣の餃子の焼きに入るのだった。

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