第411話 魔の家電
その時、翔に電流走る。
そう言えばだけど、グミとか、あんこ玉で当たり前に蜜柑味とか説明してたけどさ。
そもそもこの世界の蜜柑……食べさせてなくね?
スイーツかと言われると違うだろうけど、でもデザートではあるよな?
スイーツではないけどフルーツではあるし。
似てるしいいな、ヨシ。
「折角だし、いい奴を買おう」
で、見渡したるはデパートの中。
何となく、蜜柑と言えば愛媛県ってイメージが強いし……。
愛媛産の蜜柑を買っていけば間違いないでしょ。
えーっと、『紅まどんな』って品種らしいです。
なんと言うか、いかにも高級っぽい売られ方してる。
桃みたく網ネットに包まれて、二個だけ包装されてパック売りって言うの?
一人1パックずつでいいかな。
さて、買い物終わったし帰宅帰宅。
*
「……ゴーレム君に何したの?」
「本当に何もしてないんだって!」
家に帰りついてもリビングに姉貴の姿はなく。
どこに行ったか探してみたら、庭に出てゴーレム君と何か話してたっぽい。
ただ、ゴーレム君、姉貴と目を合わせようとしないし、俺の姿を見たらまるで縋るような目でこっちを見てくるし。
「ゴーレム君がここまで嫌そうにしてるの、初めてだぞ」
「マジで何もしてないって。宝石を見せただけだもん」
……凄く嫌な予感がするのは俺だけ?
「ゴーレム君」
「ンゴ?」
「宝石食べたい?」
「ンゴ!!」
「食べたいらしいよ?」
「私の商売道具だが!?」
これ、自分が貰えるもんだと思ってたのを、姉貴が引っ込めたもんだから拗ねてただけっぽい。
流石にこれは俺も姉貴に宝石をあげろとは言えないな……。
明らかに土よりも値が付くものだし……。
「確かにゴーレム君は可愛いけど、流石に宝石はあげらんない」
「俺もあげろとは言わんから。ゴーレム君、諦めて」
「ンゴ~~~~!」
「駄々こねない」
全く、このゴーレム君は……。
一体誰に似たんだか。
「ちなみに、デザートは見つかったの?」
「ん? ああ、蜜柑にした」
不意に姉貴から聞かれるも、抜かりはない。
サムズアップと共に返しといたよ。
「蜜柑……それで大丈夫?」
「まぁ、多分大丈夫だと思う」
ブランド蜜柑のクオリティ次第だけどね。
さてと、
「姉貴、ちょっと手伝って」
「ほいほい。何するの?」
「冬、鍋、蜜柑とくれば必要なものがあるでしょ?」
「? ……あぁ、納得」
というわけで、『夢幻泡影』の四人が家に来るまでの間に一仕事。
寒くなって来たし、そろそろ出そうと思ってたんだよね……炬燵。
*
「はぁ~……あったか~い」
「絵に描いたようにだらけてんな」
炬燵を出し、セットしたら。
マジで滑り込む様に入り込んだ姉貴。
判定はセーフ。
「早くご飯」
「四人が来てからな」
なんてやり取りをしていたら、魔法陣出現。
「お邪魔しますわ」
「は~い」
「む、姉上、久しぶりじゃな」
「はろはろ~」
と、いつもの四人がやって来たのに姉貴が挨拶すると、速攻で把握する『夢幻泡影』。
まぁ、姉貴が帰ってくる理由なんて一つしかないのでね。
「部屋の模様替えをしました?」
「模様替えというほどでは……」
「ほらほら、炬燵に入った入った」
模様替えというか、出しただけだし。
あと、姉貴。
炬燵に引き込むのはいいけど、ラベンドラさんだけは出しといてくれ。
この後の鍋の準備を手伝って欲しいから。
「暖房魔道具ですの?」
「持ち運びには不便そうじゃが……」
「人間は変なものばかり思いつく……」
と言いつつ炬燵に入っていくリリウムさん、ガブロさん、マジャリスさん。
あーあ、もう二度と、抜け出せないねぇ。
……ラベンドラさん? 入りそうになるのを引き留めましたよ?
キムチ鍋の素を見せたらこっちに寄って来たからね。
「今日のご飯はこれか」
「です。姉貴がたくさん牡蠣を持って来てくれたので、牡蠣たっぷりの鍋を作ります」
というわけで早速調理開始ぃっ!!
ま、豆腐切って、野菜切って、鍋にキムチ鍋の素を入れて、具材を煮て完成なんですけどね。
ちなみに今回のキムチ鍋の素は、スープタイプのやつ。
出来上がった鍋に入れるペースト状のタイプとか、そもそもキムチを入れて作るやり方もあるけど、圧倒的に楽なのはこっち。
最初からキムチ鍋のスープ使うのがそりゃあ当然楽だよね。
「後は蓋をして煮込めば完成です」
「鍋は具材を切るだけでほぼほぼ調理が終わるのがいい」
「味もスープ次第でいくらでも変わりますしね」
「これもその内大会の課題にしてもいいかもしれない」
「そういえばですけど、大会の方は順調です?」
特に話すことも無いので話題に出た大会について聞いてみることに。
ちなみに現在使ってる鍋は三つ。
『夢幻泡影』で二つ、俺と姉貴で一つの計算。
「あー……決勝大会が延期というか、開催が伸びたな」
「なんでまた……何かトラブルでも?」
「前回よりも参加者が跳ねあがった。予選をその分多く開催することになってな」
「あー……なるほど」
その内こっちの世界で言う甲子園みたいになったりして。
毎年の課題を考えるのが大変そうだけれども。
「そちらのルビーなどはいかがでしょう?」
「ん~……いいけどそれだともう少しおまけして欲しいかな」
「しかし驚きだな。こちらの世界でもこれほど魔力に満ちた宝石に出会えるとは」
「私らなんて絶対に何も感じないからねぇ。リリウムさん達から見れば掘り出し物の宝庫だったりするかもよ?」
ちなみに姉貴たちは炬燵の上に宝石広げて何やらお話し中。
どうでもいいけどそろそろ片付けてね? 鍋が三つそっちに行くんだから。
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