第410話 わーにんわーにん
姉貴警報発令。
姉貴警報発令。
姉貴が今日帰ってくるとの事。
各員、衝撃に備えろ。
「ただいま~」
「お帰り」
というわけで帰ってきました姉貴。
帰って来た理由は……。
「早速馬刺しぷりーず」
馬刺しです。
いやぁ、本当に現金だね、我が姉ながら。
「美味~い!」
言われてたから馬刺しは既に準備済み。
馬刺しというか、ケルピー刺しだけども。
「この肉でしゃぶしゃぶしたんでしょ?」
「めっちゃ美味かった」
「食べたい」
「流石に連日しゃぶしゃぶはちょっと……」
今度昼に用意してやるから我慢して欲しい。
さて、ケルピー刺しを作る上で出た、呪いが溶け込んだ塩水は庭に……。
「? 何してるの?」
あ、そっか。
姉貴はゴーレム君が出来た事知らないんだっけ。
「庭に四人が窯を作ってくれてさ。そこでピザとか焼いたりしてるんだよ」
「で、なんで水を持ってくの?」
「異世界産の窯だぞ? 水くらい飲むわ」
「そういうもんか」
それで納得するのもどうかと思うけどね?
あと、飲むのは水だけじゃない。
液体肥料大好きだぞ。
「見に来る?」
「面白そうだし行く」
この聞き方をすると絶対に付いてくるという確信があった。
さて、ゴーレム君を見た感想は?
「え、なにこれ可愛い」
まぁ、姉貴だしな。
その反応でも納得するわ。
「え、いいなぁ。私も欲しい」
「どこに置く気だ……」
「キャリーバッグの中?」
「虐待かな?」
飛行機とかどうする気だ?
荷物検査で引っ掛からない? んでも土だしなぁ。
「いいじゃん! 毎日ちゃんとお水やる! 散歩もする!」
「どこに連れてく気だよ……」
割と食費(土)かかるぞ? ……と言うか、姉貴からの金でゴーレム君のご飯代を賄ってるから、実質姉貴が世話してることになるのでは?
「お姉ちゃんだよ~」
「ンゴ~?」
もう馴染んでるし。
後ゴーレム君、俺と姉貴を交互に見ない。
……ゴーレムって、人の顔をちゃんと区別出来てるんだろうか?
俺も姉貴も同じ顔に見えてる、だから困惑してる、って説ない?
「さて、戻って馬刺し食べるけど、お姉ちゃんから弟に素晴らしいプレゼントがある」
「……なんでせう?」
まぁ、浮かんだ疑問は頭の隅に押し込み、リビングに戻り。
姉貴が、自分が持って来た発泡スチロールをポンポンと叩くと……。
「今が旬の真牡蠣」
「お姉ちゃん大好き!!」
「……オェ」
「はっ倒すぞ」
折角乗ったのに……。
んでも真牡蠣かぁ。
最高じゃんか。
「牡蠣を確保した功績により、晩御飯のリクエストをする権利をやろう」
「チゲ! 牡蠣がたっぷり入ったチゲ!!」
姉貴知ってるか? チゲというのは鍋料理の総称で、辛い物という意味は無い。
まぁでも、言わんとしてることは分かる。
「キムチ鍋に牡蠣……季節的にも最高だな?」
「当たり前では?」
「白菜、もやし、油揚げ、豆腐、ネギ、しめじ。他にいる具材は?」
「無し。良きに計らえ」
「御意」
さて、というわけで、晩御飯のメニューが決まったところで……。
牡蠣の殻剥き、やっていくわぞ~。
*
……ふぅ。この後に美味しくいただくことを考えれば、牡蠣の殻剥きも全然苦じゃない。
ちなみに剥いた殻は細かく砕いてゴーレム君にあげた。
……姉貴が。
もうすっかりペット感覚でさ。
「私がやる!」
って聞かなくて……。
腐葉土と牡蠣の殻を混ぜた奴を、シャベル――片手で使う方ね。
西日本と東日本ではスコップとシャベルが真逆になるみたいな話、昔あったなぁ……。
とりあえず、小さい方で少しずつゴーレム君の口に腐葉土と牡蠣の殻を混ぜた奴を放り込んでた。
で、
「あの鍋なに?」
ゴーレム君の口の中……つまりは窯の中にある寸胴鍋も気になったらしく……。
「ラベンドラさん達に頼まれてるやつ。なんか、こっちの世界の塩が、向こうの世界の呪いを解呪する力が強いんだって。だからそれをこっちでやってくれって頼まれてさ」
「あー……。浄化の塩とか護摩の塩とか言うから……かなぁ?」
「胡麻塩?」
適当に説明しときました。
ちなみに姉貴の言った護摩とは……まぁ宗教的な行事の事かな。
詳しくは知らん。
「翔も働いてるんだね……」
「普通に会社員ですが?」
なんで涙ぐんでるんですかねぇ。
何なら、働いてる実年数は姉貴より上だが?
「はー、美味しかった」
「まだまだ数回分あるから、家に居る間は馬刺しを楽しめるぞ」
「最高かよ」
最高だよ。
「俺、買い出し行ってくるけど、何か欲しいものは?」
「マシュマロとか食べたい」
「マシュマロ……あ、ついでに何かスイーツの案無い?」
「?」
「いや、あの四人に毎回スイーツを付けてるじゃん? 最近それのネタがさ……」
「あー……時期だし、イチゴの何かでいいんじゃない?」
「適当過ぎる……」
「だってこっち戻って来たばっかだし、こっちのトレンドとか分かんないし」
「さいですか」
ダメだこの姉貴、役に立たねぇ。
まぁ、また色々と考えてみるか。
とりあえず鍋の材料買って来なくちゃ。
というわけで買い出し、行ってきます。
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