第487話 まだ足りない
……冷凍食品、舐めてたかもしれない。
解凍しただけなのに、焼きたてのパンケーキみたいにフワフワなんだけど?
あと、これは完全に個人的な感想なんだけど、一袋に五個入りなのが凄くいい。
『夢幻泡影』と俺で丁度五人だし。
「それが今回のデザートか」
「です……今川焼きになります」
さて、翻訳魔法さんはどう翻訳する?
ちなみに日本にはざっと百近い呼び方があるってウィキ先生が言ってた。
「中身は何が?」
「左から、粒あん、カスタード、抹茶ですね」
「抹茶は生地の色から違うのぅ」
「漂ってくる匂いでもう美味そうだ」
あー……分かる。
甘い匂いがするんだよな。
……多分蜂蜜の匂い。
「よし、早速その大判焼きとやらを頂くとしようか!」
「ふふ、鉢楽饅頭、楽しみですわね」
「御座候、か。名前からは想像がつかんが……」
「ベイクドモチョチョ」
おい待て翻訳魔法さん。
最後のガブロさんは本当にこの食べ物の名前を言ったのか?
絶対その単語を言わせたいだけだろ。
あと、その名称はネット民の悪ふざけの果てだから、正式な名前じゃないぞ?
大丈夫か?
「ふんわり柔らかい」
「この世界のパンと同じ柔らかさですわね」
「生地はしっとりでパサつくことなく、中の餡が生地と合わさってしっかりとスイーツになっている」
「甘すぎることはなく、普通に美味いのぅ」
分かる。
マジで冷凍食品と思えないフワフワ感なんだよな。
あと、ヘタすると店で買って食べるおやきより冷凍食品の方が美味い。
中身のあんこもたっぷりで、普通にクオリティ高いよ。
「この太鼓焼きには緑茶が合いそうだな」
「確かに。淹れますね」
天輪焼に何が合うか考えたけど、確かに緑茶が合いそうだな。
カスタードや抹茶の時はコーヒーとか紅茶って答えそうだったけど。
まぁでも、材料とか考えるとほぼどら焼きだし、どら焼きは最近多様性で色んなものを挟んでるし。
カスタードや抹茶を緑茶と合わせても誤差だよ誤差。
「次はカスタードだ」
「ちなみにカケル、これは私が想像する作り方で間違いないか?」
「どんな想像してるかは分かんないですけど、生地焼いて、中にクリームやあんこを乗せてまた生地。ひっくり返して焼く、で間違いないと思いますよ?」
「たこ焼き、のような焼き型を用いる認識で間違いないな?」
「です」
「ガブロ」
「んむ。明日には作ろう」
さぁて、異世界でもえびす饅頭が食べられることになりそうですが?
さてさて、一体どんな名前になるんだろうね?
エルフ焼きとか? ……すっげぇ語感いいな、エルフ焼き。
異世界でそうならないかな。
「お前ら、カスタードは食べたか!?」
「まだじゃが?」
「寄越せ!!」
「断る!!」
なんかマジャリスさんが暴走モード入ってますけど?
カスタードがそんなに美味かったのか?
「これは革命だぞ!!」
「なにがどう革命なんじゃ……」
呆れながらもガブロさんがカスタードを一口。
「お、美味いのぅ。あんこよりこっちの方がわしは好きじゃわい」
「しっとり生地にカスタードがすこぶる合いますわね」
「む、確かに美味い」
「え、すげぇ美味い」
言われた通り、マジで美味い。
これ冷凍食品ってマジ? 普通に店売り越えてるでしょ。
「食うな! 俺のだぞ!」
「私達のですわ」
ちなみに今のところ一袋しか解凍してないけど、まだまだ冷凍庫にはあるんだよなぁ。
冷凍食品の良い所、値段がリーズナブル。
まぁ、今までがケーキ屋さんだのデパートだので買ってたってのもあるけど、それらと比べるとやっぱり値段は控えめなのよ。
それでこの美味さ?
企業様様ですよマジで。
「まぁ、まだ解凍すればありますよ?」
「お代わり!」
「せめて抹茶も食ってからじゃ!」
「食べ終わる前からお代わりを要求するな!!」
まぁ、食い意地が張ってるとは思われるね。
もはやそんな事解り切ってるし、マジャリスさんだしなぁ、くらいの感想しか出ないけど。
「抹茶も美味い」
「やや風味が弱いように感じはするが、それでもしっかりと抹茶であるとは分かるな」
「あら? そうですの? 当たり前に美味しいですのに」
ラベンドラさんって嗅覚鋭いのかもね。
思えば今まで、食べ物の風味に感想を伝えてることが多かったようにも思う。
俺は別に、抹茶味って言っても千差万別だし、全然普通に食べれちゃうけど。
ていうか抹茶味も美味いな。
カスタードの時も思ったけど、これクリームが美味いわ。
冷凍食品ってスゲー。
「三種類味わったが、私は最初のあんこが好きだったな」
「全部!」
「私はカスタードですわね」
「わしは抹茶じゃな」
マジャリスさんは外すとして、他三人が好み別れたか。
でもまぁ、どれかが突出して美味いってわけじゃないって事だし、普通に凄い事だよ、うん。
「ちなみにカケル」
「はい」
「これは一度凍らせるのが一般的な作り方か?」
「いえ、保存や手軽さの観点からそうしてるだけで、本来はその場で焼いて食べますね」
「凍らせないのか!?」
「まぁ……」
冷凍食品なんで。
もしかしてあれか? アイスとかと同じ系列だと思われてた?
そんなアイスを温めるなんて……似たような事やったなぁ。
フォンダンショコラで、アツアツのチョコソースとアイス、合わせたなぁ。
「理解した。ならば尚更この食べ物は凄いぞ。一度凍らせるという本来は不要な事をしてなお、この味を保っているのだろう?」
「です」
「固くなってもおかしくありませんのに、こんなにフワフワなんですものね」
「そもそも温めなおしただけでそこまで戻るのか?」
「前から思っとったんじゃが、この世界にも魔法使いが何人か紛れ込んどりゃせんか?」
さもありなん。
まぁ、そこまで言って貰えると嬉しいかな。
――で、一体後何個食べるつもりなのでして?
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