第213話 汝は空腹なりや?
まずは白焼きをそのまま味わおうって事で、レモンと塩でいただくことに。
箸で何の抵抗もなく切れる身を少し切り分けたら、そこに塩とレモン汁をちょちょいとね。
箸で割っただけなのに肉汁と言うか、うま味のスープが溢れ出して来てますわよ。
という事で実食!!
「む! とてもサッパリとしているな!」
「かば焼きや唐揚げの時とはまた打って変わって……」
「ガツンと来るパンチ力ではなく、じんわりと噛み締め広がっていく美味しさですわね!!」
「癖も無く臭みも無い。……タレを塗って焼いた時の香ばしさは無いが、それでも十分に美味いぞい!!」
「うめぇや」
四人の感想にほぼ同意。
タレ焼きとはまた違った美味しさが出てくるね、白焼き。
まず、俺が思ってた白焼き程香ばしさは無い。
皮は無いし、今日はグリルで焼いたから、先日のかば焼きに比べちゃうとそれはもうしょうがない。
ただ、表面に脂の膜って言うの?
なんと言うか、表面張力じゃないけど、身にうま味の汁が浮いててさ。
それが箸で掴んでも、レモン絞っても何ともないのに、口に入れた瞬間に決壊して溢れてくるの。
身は相変わらずホロホロで柔らかくて。
フワフワとした感じなのに、箸では持てるとか言うギリギリの固さ。
脂はサッパリで、そこにレモンの風味が加わればよりサッパリ。
朝からかば焼きはちょっと……ってなる日もあるだろうけど、この白焼きは毎日朝ご飯に出てきても文句ないな。
むしろ毎日これ出してくださいレベル。
「それじゃあ、カケルの作った調味料を使ってみるか」
で、俺が感動してたら、四人はねぎ味噌と酢味噌にそれぞれ手を伸ばしてて。
まずはマジャリスさんが、ねぎ味噌をちょっと乗っけてパクリ。
「む! 香ばしさが加算され、舌の根に届くような強いうま味だ!!」
「ほほぉ!! 確かにうま味は強いし味も濃いが、決して身の邪魔はしとらんな!!」
追っかけて食べたガブロさんも合わさり、感想デュオを結成。
「たまに来る強い風味がまた美味い」
「火にかけることで風味や香りがより強くなるんじゃろうな! 酒に合いそうじゃわい!」
とまぁご機嫌にねぎ味噌乗っけて食べ進めまして。
「確かに、説明があった通り甘みがあるな」
「酸味もありますがかなり丸いですし、その酸味と身のうま味、お味噌のうま味と甘みのカルテットが最高ですわ!!」
一方こちらは酢味噌で食べてるラベンドラさんとリリウムさん。
こちらもかなりご機嫌に食べてるよ。
「ラベンドラ、そちらのも寄越せ」
「交換しろ。そちらのをこちらへ」
で、それぞれ使ってた調味料を交換しまして。
「おぉ!! 確かにこちらは甘みがあるな!!」
「塩味が確かに強いが、それでもバランスの範疇だな」
と、またそれぞれの感想会。
「ふむ。悪くは無いが、わしはねぎ味噌の方が好きじゃな」
「私もねぎ味噌ですわね。この香ばしさとうま味は癖になりますわ!」
結果、ガブロさんとリリウムさんがねぎ味噌サイド。
「ふぅむ……。身の美味さを最大限引き出しているのはこちらの調味料だろう」
「この甘さが丁度いい。塩味一辺倒で無いのが気に入った」
ラベンドラさんとマジャリスさんが酢味噌陣営となりました。
なお、この組み分けには特に意味はない模様。
「あ、すげぇサッパリ」
で、俺は酢味噌からいただきまして。
さっきのうざくで酢とウマイウナギマガイの相性は確認済み。
特に抵抗なく頂けたんだけど、塩とレモンよりサッパリだと感じた。
酢の香りと酸味がやっぱりデカいね。
で、それのおかげで身の甘さとか美味さが引き立つ感じ。
そこから白味噌の塩味と甘みがやってきまして。
口の中でいい感じに混ざり合うんですねぇ!!
そこに掻っ込む米の美味さよ!! これ日本酒とかでも最高に合うだろうなぁ……。
「あ、こっちは結構ドッシリ」
続いてねぎ味噌。
タレ程ではないんだけど、やっぱり塩レモンや酢味噌に比べてさっぱり感は無い。
でもその分、味噌の味と香り、味噌を焼いた香ばしさから来るどっしりとしたそのうま味は。
これまた酢味噌のように口一杯にそのうま味が広がりましてですね。
米を掻っ込む手が止めらんねぇのよ。
あと、多分酒ならこっちの方が合う。
いやでも……アレだな、甘口の酒ならねぎ味噌が合って、辛口の酒なら酢味噌が合うかな。
……俺飲まないけど。
「『――』の調理にはタレが必須だと思ったが、こうして食べるとどちらも引けを取らないくらい美味いな」
「ですわね。もう頭の中ではタレありきな素材だと思っていましたのに」
「タレでもイケて、味噌でもイケる。最悪塩でも美味いのがいい」
「塩で食う場合は柑橘系の実が欲しいところじゃがの」
俺としては、ラベンドラさんが作ったと言ってた唐揚げなんかも気になりますがね?
と言うか、よく唐揚げにしようと思ったな。
まず間違いなく焼く方が簡単だろうに。
「唐揚げはどんな素材で作ろうともレベルの高い合格点をオールウェイズ出してくれるからな」
……心、読まんでもろて。
にしても、ふぅ。
満足満腹。
たまにはこうして白焼きで食べるのもいいな。
店で食べるとまた違うんだろうし。
それこそ、その店こだわりの味付けで出てくるんでしょ?
絶対に美味しいやつじゃん。
「さて……カケル」
「デザートですわね?」
「今日は何を作ったんじゃい?」
んでまぁ、食べ終わったらそうですわな、と。
「本日はコーヒープリンを作りました。今持ってきますね」
はてさて、四人はこのデザートにどんな反応を示すのかしら。
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