第214話 頑張れ翻訳魔法さん
というわけで冷蔵庫からしっかり冷えて固まったコーヒー牛乳プリンを取り出しまして。
四人の前に持って行けば。
「プリンか」
「でも、なんだか色がパッとしないような……」
プリンであることは見抜きつつも、コーヒーには辿り着かない。
やっぱりコーヒーは知らないのかな? とりあえず聞いてみるか。
「コーヒーという飲み物? の風味と味を付けたプリンです」
「……焙煎豆抽出飲料? なんだそれは?」
こっちの台詞だが?
なんだ焙煎豆抽出飲料って。
……コーヒーか。
嘘は言って無いな。まんまコーヒーの説明か。
いやいや翻訳魔法さんよぉ……。
なんでコーヒーをそう翻訳しちゃったんですか?
コーヒーはコーヒーでいいの。おーけー?
「昔は薬として飲まれてたみたいですけど、今じゃ嗜好品として飲まれる飲み物ですね」
昔の日本、何でもかんでも薬認定しがち。
お茶然り、コーヒー然り、バター然り。
「美味しいのか?」
んで、我慢が出来なくなったかマジャリスさんが一番知りたいことを単刀直入に聞いて来た。
ふっふっふ。
「保証します」
病みつきになって元の世界で食べられない事に絶望するがいいわ。
……まぁ、砂糖に練乳まで入ってるし、苦みより甘みが強いだろうし。
バカデカアーモンドッポイミルクの癖のない感じと相まって、不味い事は絶対に無い。
「では、いただきますわね」
というわけでコーヒー牛乳プリン実食。
みんな少し掬って、恐る恐ると言った感じで口に運んで行ったよ。
で、結果は――。
「む!」
「いけますわね!!」
「香りの香ばしさがとてもいい……」
「こりゃ美味いわい」
当然絶賛、と。
「ほのかに感じる苦みがまたいいな!!」
「チョコの時にも感じましたけど、甘さと苦みの上品なバランスがスイーツとして本当に完成されていますわね」
「この珈琲とは一体何なのだ?」
「本来は飲み物なんですけど、よくこうしてデザートとかにも用いられるんですよ」
気付いたら珈琲呼びになってるし。
翻訳魔法さん、お疲れ様です。
「元は木の実と言うか……こちらをご覧ください」
なお、説明が面倒になったのでコーヒーが出来るまで、と言う動画を見せることに。
その間に俺も食べよ。
パクリ。
「うん、美味い」
知ってた。
凄く美味しい。
牛乳感のあまり強くないバカデカアーモンドッポイミルクのおかげか、結構コーヒーの味と風味がしっかりわかる。
まぁ、それらも練乳が全て包み込んでるんですけど。
アレだな。子供のころに飲んだ、砂糖とミルクたっぷりのコーヒー牛乳。
アレを思い出させるような味わいのプリンに仕上がってる。
甘いは甘いんだけど、口の中でべたつかないサッパリした甘さになってるのいいな。
凄く美味しい。
「こんな黒い液体が飲み物……?」
「見た目呪いを具現化したものそっくりだぞ?」
「炭じゃろ、もはや」
「こ、この世界の方々はこんなものを飲んでいますの?」
……いつぞやも思ったけどさ。
無意識なんだろうけど、たまにとんでもない事言い出すよね、この四人。
見ただけで何が分かろうかい!!
ケトルに水を入れてセット!! 人数分のカップにインスタントコーヒーOK!!
「飲んでみますよね?」
準備しながらニッコリ笑顔で言ってやれば、四人ともコクコク頷いて。
素直でよろしい。
で、お湯が湧いたら注いで完成っと。
「もう出来たのか?」
「先ほどの映像ですと、飲むまでにかなり時間が掛かっていたみたいですけど……」
「すぐ飲めるように、ある程度の品質を保証して簡易化したコーヒーなので」
最初だしね。
これで最初っから本腰入れて作ったのに、一口飲んで無理でした、とかなったら悲し過ぎる。
というわけでこちら、呪いにしか見えないとか言われた飲み物、コーヒーです。
「ほ、本当に飲み物なんだろうな?」
「飲み物ですよ、ホラ」
誰も試さないので俺が最初に毒見として飲む。
まぁ、淹れたてで熱いのでしっかり冷まして……。
「……」
四人に見守られながら一口。
……うむ、コーヒーである。
「体に異常は?」
「あるわけ無いでしょ。『鑑定』でも何でもしてください。ちゃんとした飲み物ですから」
俺に言われて、それもそうだとエルフ三人がコーヒーを注視。
多分、言われた通り『鑑定』してるんだろうな。
「見た目以外は確かに飲み物のようだ……」
「どころか、最高級嗜好品なんて結果が出ましたわよ?」
「世界は……広い」
異世界では?
とはいえ、自分の『鑑定』スキルで確認してようやく飲み物だと納得したらしい。
恐る恐る口にカップを近付けていき……。
「かなり苦いが鼻に抜ける香りと風味が癖になるわい」
『鑑定』スキルが無く、とりあえずと先に飲んでいたガブロさんがそんな事を口にして。
「かなり複雑な味じゃな。酸味、甘みが苦みの奥底に混在しとる」
ゆっくり目を閉じ、静かにカップを傾けながら。
「時間を忘れたいときや、休息中に飲みたいのう」
もう完全に、コーヒーを楽しんでた。
それを受けて、ようやく覚悟が決まったらしい三人は、それぞれカップに口をつけ。
ゆっくりと一口。
……反応は?
「悪くない」
「凄く香ばしいですのね」
「……苦い」
三者三様の反応を見せたのだった。
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