第215話 ラベンドラリスペクト

 ……軟弱者め。

 結局ブラックでコーヒーを飲んでるのはガブロさんだけか。

 ラベンドラさんとリリウムさんはバカデカアーモンドッポイミルクを入れたし、マジャリスさんなんかミルクと砂糖と練乳までぶち込んだぞ。

 全く……ん? 俺? やだなぁ、砂糖しか入れてませんよ?

 ――ブラック、苦いし。


「慣れると、確かに嗜好品として理解出来るな」


 なんて大層な事言ってますけど?

 言ってるのマジャリスさんだからね?

 激甘カフェオレにしちゃってるマジャリスさんだからね?


「お前のじゃあ純粋な香りが楽しめんじゃろがい」

「嗜好品なのだから俺が楽しめる味にするのは当然だろう?」


 なんてブラック派のガブロさんと言い合ってたけど、確かに一理あるかもしれない。

 楽しむものなのだから、別に誰かに強要されるものじゃないしね。

 飲みたい味にすればいいと思うよ。


「ストレートで苦くとも、甘くしてしまってはデザートと打ち消し合ってしまいません事?」

「まぁ、それは無いと言えば嘘になるが……」


 ただまぁ、マジャリスさんが飲んでいるカフェオレ、コーヒー牛乳プリンとほぼ同じ味付けと言っても過言ではない。

 つまりは、味が似通っちゃってるんだよね。

 俺は別にいいと思うけども。


「ふむ。ミルクを入れはしたが、このcoffeeと言う飲み物は気に入った」

「ですわね。飲むと頭がすっきりしますわ」


 ……翻訳魔法さん、まだちょっとブレてるな。

 頑張ってもろて。


「目覚ましやリラックス効果があるって言われてますね」


 で、カフェインの説明。

 ……合ってるよね? 実は眠くなるとか、緊張しやすくなるとか読んだ覚えもなくはない。

 でもまぁ、一般的にはこう言われてるよね?


「目覚めの朝にこれを飲めれば、一日のスタートがシャッキリ決まりそうじゃわい」

「風味だけなら再現は可能かもしれんが、効能まで同じかどうかは保証できんぞ?」


 なんて言いながら、コーヒーとプリンを完食。

 

「ふぅ。美味しゅうございました」

「甘いデザートと苦いコーヒー。とてもいい相性だった」

「またご馳走してくれると嬉しいぞい」

「その……あまり苦くないコーヒーをだな……」


 満足そうにそう言ってきた四人に手を振りつつ、お見送り。

 そのタイミングで、


「そうだカケル、一つ、可能ならばで良いがリクエストをお願い出来るか?」

「なんでしょう?」


 ラベンドラさんから、これまで無かったリクエストの要望が。

 そりゃあ、出来る範囲で応えますけども。


「我々がこの世界で最初に食べた料理があるだろう?」

「最初に食べた……?」


 えーっと? ……確か、カップラーメンを振舞ったよな?


「ラーメンですか?」

「それだ! あの麺料理、今一度食べたい」


 思えば、あれは料理って呼べるものじゃなかったもんな。

 いや、一人暮らしの最高な味方で、何なら俺もこれまで何度も頼ってきたし、お世話になったけどさ。

 流石に料理ってくくりじゃないじゃん? カップ麺って。

 袋麺ですらギリくらいの認識だし。


「ん~……分かりました。出来る限り用意します」

「頼むぞ!! それでは!!」


 なお、俺が答えたら四人がガッツポーズをとった模様。

 しかもそのまま魔法陣に消えて行ったし。

 にしてもラーメンか……。

 冷蔵庫にあるウマイウナギマガイは使わないかな……流石に。

 ラーメンの具にするぐらいなら俺は単体で食べる。

 探せばあるかもしれないけどね、鰻ラーメン。


「あるし……」


 で、興味本位で調べてみたら、あったわ。

 しかも意外とイメージそのままな感じで。


「いや、流石にこれは……」


 ただこう……家でするもんじゃないな感が凄い。

 やめとこ。

 やるにしても俺一人でするわ。味が保証出来ん。

 美味い不味いの話じゃなく、スープは何味がいいとか、その辺すら手探りの行き当たりばったりが怖すぎるって話。

 無難に醤油? でも醤油スープだとタレと喧嘩しそうだし……。

 豚骨……はタレと混ざるよなぁ? 塩もタレに負けそう。

 ――味噌か? ギリ味噌ならありか?


「いやいや、やんないから」


 と、無意識に頭の中でレシピを考えてたのを振り払い、気を取り直してリクエストのラーメンを考えていく。


「確か、味が違うように出したんだっけ……」


 記憶を遡り、四人が来た日の事を思い出して。

 ……ガブロさんがカレー味食ってたのは覚えてる。

 お代わりでチーズ入れてたし。

 ……マジャリスさんとラベンドラさんが醤油味だっけか。

 マヨとバター入れてたもんな。

 完全に思い出したわ、リリウムさんがシーフードだった。

 ――てことは豚骨ラーメンを食してない?

 ははーん? てことはスープは豚骨に決定ですな?


「どうせやるんなら家系にしよう」


 味噌豚骨か醤油豚骨で、野菜を山盛り乗せて、そこに背脂ニンニクをダーッと。

 チャーシューも分厚いやつが欲しいし、煮卵も当然乗せる。


「ご飯欲しがるかもしれんな……」


 家系と言えば、ご飯とセットですわよね?

 ……なんか途中まで次郎系とごっちゃになってる気がしなくも無いが、そこはそれ。

 俺の家ではこうなんだよ! と言えば、誰も反論出来まい。

 となると、やることは決まったな。


「明日は朝から煮卵と、チャーシューの作成だな……」


 朝一買い物に行き、材料の調達。

 豚骨スープはお湯に溶かす奴買えばいいし、麺も三人前二百円くらいの奴をいくつか買えばいいでしょ。

 良し、明日は朝から夜に食べるラーメンの仕込みでもしましょうか。

 ……朝と昼にはウマイウナギマガイを頂いて、英気を養う。

 んっんー、完璧な作戦だな。

 んで、忘れずにデザートも作ろうか。

 コーヒーも評判良かったし、となれば作るのはアレしかないよね?

 というわけで就寝!!

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