第66話 汗かきべそかき
まずは合わせ調味料から。
醤油、料理酒、塩コショウに砂糖。
これらを混ぜ合わせまして~。
登場! 甜面醤!
こいつを加えて混ぜ合わせる。
さらに追加で豆板醤を加えたら、合わせ調味料の完成。
そしたら麻婆の具材に入りまして。
本日の豆腐は木綿。絹の喉越しの良さもいいんだけど、今日はしっかり食感を楽しみたいからね。
麻婆豆腐は飲み物だと主張する過激派は迷うことなく絹ごしを使うと良いよ。
こいつを十パック買って来てみました。
……多いよね、うん。
一人二パック計算で買ったらこうなったんだ……。
まぁ、残っても豆腐なんてどんな料理にも使えるから問題ないでしょ。
最悪そのまま塩かけて食えるし。
というわけで様子見の六パックの豆腐に包丁で穴をあけ、水切り。
水切りしながら他の具材を切っていくぅ。
……あ、そうだ。
「ラベンドラさん、工程を一つ任せてもいいですか?」
「む? なんだ?」
「こいつを粉々に砕いてほしいんですけど……」
ラベンドラさんにも手伝って貰おうって事で、花椒の粉砕をお願いした。
粉末状のやつじゃなく、ただ乾燥させただけのやつを買ってきたからね。
「お安い御用だ」
ビニール袋に入れた花椒を渡すと、何か呟いたラベンドラさんは。
「どれくらいに砕けばいい?」
と尋ねてきて。
「粉状になるまでお願いします」
と返せば。
「分かった」
短く応え。
そして、
「出来たぞ」
秒で袋を返してくる。
「へ?」
思わず変な声出ちゃったよ。
いやだってあなた、袋持ってただけでしょ。
……って、魔法か。
そりゃそうか。
いいなー。魔法、便利そうだなぁー。
「あ、ありがとうございます」
とりあえず袋を受け取り、綺麗な粉末になっている花椒を確認。
すっげぇや。
じゃ、じゃあ、気を取り直して材料のみじん切りへ。
ショウガ、ニンニク、ネギを刻んでいく。
特にネギは入れ得。二本丸々刻んでやったぜ。
そしたら取り出したるはギュウニクカッコカリ。
こいつも人力でミンチっぽくなるように叩く。
この前作った餃子で思ったんだけど、ひき肉よりもこうして塊が少し残った様な肉の方が俺は好きかもしれない。
なんというか、文字通り噛み締めてる感が凄く好き。
ひき肉だとその辺薄くてなぁ……。
あんまり肉を食ってるって実感が沸かないんだよね。
というわけで肉を切り出し、包丁二本で叩いて人力ミンチへ。
そしたら刻んだこいつらを鍋に入れて炒める……前に!!
ごま油をたっぷりと垂らし、そこに砕いてもらった花椒をイン。
まずは花椒だけを油で炒めて香りを際立たせていくぞ~。
いい感じになったら八角をイン。こいつも油に香りを移すように炒めまして。
トドメに輪切りにした唐辛子を追加。
都合三本ほど輪切りにいたしました。
「その工程は何を?」
「香辛料の香りを油に移して際立たせてるんです」
ラベンドラさんの疑問に答えながら作業を続ける。
続いてたっぷりのネギ、生姜、ニンニクを加え、叩いたギュウニクカッコカリを投入。
……山椒、いつ入れるんだっけ?
まぁいいや、この辺で山椒も投入。
あとは肉に火が通るまで炒めて、っと。
あ、豆板醤入れなくちゃ。あとコチュジャンも追加わぞー。
んで、先程作った合わせ調味料も投下し、全体に味を馴染ませていくっと。
……このままだと辛いだけになるか? ……中華スープ的なのも作って入れとくか。
ボウルにポットからお湯を出し、味覇……っ!! 中華最強の万能だし……っ!! 半練りタイプ……っ!!!
を溶いて、鍋に投入。
そしたら本命、水気を切った豆腐を、手の上で適度な大きさにカットして鍋に入れてっと。
「カケル!?」
うわぉびっくりした。
ラベンドラさん? どうしたんです?
「何をしている!?」
「何をって、豆腐を切ってるだけですけど……」
「手が切れるぞ!!」
「? 大丈夫ですよ? いつもやってますし」
どうやら豆腐を手の上に乗せて切る事を注意したみたい。
大丈夫だって、ただ上から押してるだけなんだもん。
包丁ってのは引く動作が無いと切れないようになってるから、上から押すだけじゃあ手を切ったりはしませんよ。
説明するより見せる方が早いだろうから、豆腐を切って鍋に入れ、手の平をラベンドラさんに見せて。
「ね? 大丈夫でしょう?」
と傷が無い事を見せれば、
「……確かに」
納得してくれたよ。
じゃあ、残りの豆腐も入れていきまして~。
個人的にとろみがあった方が好きだから、片栗粉を水に溶かして、完成直前に入れる。
片栗粉が多すぎると全体的に汁がガッタリなっちゃうから、やや少なめ位の感覚で入れると失敗しない。
あとは豆腐に火が通るまで待って、片栗粉回して完成っと。
……ちょっとだけ味見。
「んほぉぁっ!」
か、からひ。
結構思ってたより辛かった。
そもそもあんまり辛いの得意じゃないからな、俺。
……でもあれだ。
辛みの後から来る旨味が凄い。
最初の辛みで脳天まで突き抜けて、その後から舌を痺れさせる辛さが襲ってくる。
その辛さの奥から、雪崩のように旨味が押し寄せてくるんだよな。
肉を噛むとそこに溢れる肉汁が追加されて、一時的に口の中の痺れを緩和。
そうすると辛みに隠されてた旨味がさらに顔をでかくして主張してきて。
肉の脂が引くころには、また辛みがこんにちはしてくる。
味見の一口でこれだ。レンゲで口に放り込んだらどうなってしまうんだろうなぁ!!
「完成へす」
辛みでやや舌が回っていないが、ラベンドラさんに完成であると告げ、お皿へ持っていく。
ご飯と麻婆豆腐のみのシンプル飯。
だが、その麻婆が渾身の力作。
さぁ、異世界人たち! この絶品辛旨麻婆豆腐。
――おあがりよ!!
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