第592話 質より量

「ふぅ……食った食った」

「少し……ケプ。食べ過ぎてしまいましたわ」

「お腹……はち切れる」


 リリウムさん、マジャリスさん、アメノサさん……角煮の美味しさの勢いに合わせて食べてたせいで、自分の胃袋の許容量を見誤ったな。

 それに対してラベンドラさんを見てみなよ。

 普段と変わらない感じで静かにお茶を飲んでるんだから。

 

「美味かったわい」

「まだ飲み足りねぇが、これ位にしとくか」


 飲兵衛たち?

 多分普段通りですよ。

 ガブロさんの鼻の頭がちょっと赤くなってるくらい。


「さて、カケル。デザートなのだが……」

「もうしばらく時間を置きます?」


 綺麗に甘いもの大好きな三人が満腹で苦しんでるし。

 俺としてはもう少し時間を置くのもやぶさかではない。

 ――だが、


「デザート!」

「すぐにでも行けますわ!」

「爆速吸収。甘いものは別腹」


 復活しました、三人とも。

 やはりスイーツは別腹ってのは万国共通……どころか異世界でも共通なんだね。


「じゃあ、持って来ますね」

「頼む」


 と言う訳で冷蔵庫から取り出したるは……紙パック。

 これが俺の最終兵器だ。


「それは?」

「今出しますね」


 と言う訳で紙パックを開封し、大きなお皿に放出。

 すると……、


「プリンか?」

「こっちは羊羹ですわよ?」


 デロン、と、紙パックの中身が勢いよくお皿に移動。

 そう、業務スーパーとかに売ってる、紙パックスイーツなり!!

 プリンに水羊羹、レアチーズケーキに抹茶のテリーヌ。

 果てにはパンナコッタなんてものまで買って来てみた。

 あ、杏仁豆腐もありますわよ。


「結構量があるな」

「余ったら持ち帰っていただいて構いませんよ」


 俺一人で食べきれるわけがないんで。


「いいのか!!?」

「カケル、太っ腹!」


 誰の腹が太いって?

 ち、ちゃんと健康には気を使ってるもん。

 定期的にジムとか通ってるもん!

 体重や体脂肪率は一応標準の範囲内だもん!!


「……どれから手を付けよう」

「とりあえずわしと『無頼』にはこの羊羹をくれ」

「甘くねぇのか?」

「酒に合う」

「なるほどな」


 と、選り取り見取りのスイーツたちを真っ先に選ぶは飲兵衛組。

 選んだ基準はもちろん酒に合うから。

 今回は焼酎の温ロックで楽しむようです。


「私は抹茶のやつを貰おう」

「テリーヌですね」


 ラベンドラさんは抹茶のテリーヌ。

 包丁で切り分けたんだけどかなりずっしり感があって重た目な印象。

 しっかりしてる感じ。


「私はプリンですわね」

「この白いの」

「……俺もプリン」


 と言う事でマジャリスさんとリリウムさんがプリン。

 アメノサさんが……白いのってどっちだ?

 レアチーズケーキか? それともパンナコッタか? 杏仁豆腐も白いな。


「アメノサさん、こっち? それともこっち? またはこれ?」

「こっち」


 レアチーズケーキの方か。

 じゃあ俺は……パンナコッタを食べるかな。


「甘ぇは甘ぇがスッと消える甘さが酒に合うな」

「じゃろ? この甘さが消えた余韻が酒の美味さを引き立てるわけじゃ」

「食事にもデザートにも合う酒……今研究中なんだっけか?」

「じゃな。試作品は出来てはおるが、まだここまで洗練されたものではない」

「まぁ、簡単には作れねぇわな」


 今思ったんだけどさ、甘いものとお酒の組み合わせって、普通は生活習慣病まっしぐらな組み合わせじゃない?

 異世界組とはいえ大丈夫かな……。

 まぁ、大丈夫か。

 冒険者なんだし、自分の体が資本なのくらいは理解してるでしょ。

 人間ドックとかきっと行ってるはずだよね、うん。


「甘くて美味しいですわ」

「っぱプリンだ! 美味い!!」

「甘いけど程よい酸味とコクがある。……ベリー系のジャムとか合いそう」


 甘党トリオも舌鼓中。

 ……下手にお店でケーキ買うより安いからな。

 これで満足してくれりゃあ御の字よ。


「かなり濃厚で甘さの中のほろ苦さや香りがしっかりしている。美味いな」


 抹茶テリーヌのラベンドラさんもご満悦。

 抹茶のテリーヌは俺も気になるから後で食べよう。

 ……にしても、パンナコッタって美味いな。

 牛乳や生クリームのゼリーみたいな感じだったはずだけど、普通に牛乳プリンみたいな感じ。

 そしてしっかり甘い。

 程よい……とかじゃない。

 デザートです!! って主張してる甘さ。

 あ~^、仕事や家事で疲れた脳みそに甘いものが届くんじゃ~^。


「次杏仁豆腐!」

「カケルが食べてたの!」

「私は抹茶のやつをお願いしますわ!!」


 まだカケル君が食べてるでしょ!!

 ……まぁ、よそいますけども。


「カケル、これ系統の物は他にもあるのか?」

「果汁系のゼリーやコーヒーゼリーなんかがありましたね」


 ゼリー系は今回買って来てないんよな。

 あと、マンゴープリンは売り切れてた。

 業務スーパーで売り切れることあるんだ……って感じだったな。

 ……ハッ! 久々に姉貴に頼んで高級マンゴーとか異世界組に食べさせちゃおうかな。

 宮崎県産のたっかいやつ。

 俺も食べたいし。


「果汁ゼリーは気になるな。それに、コーヒーゼリーもあるのか」

「ありましたね」

「……と言う事は明日はそれらか?」

「……考えておきましょう」


 久しぶりだな、ラベンドラさんの瞳が『食べたい!』って訴えてくるの。

 ほな明日は果物ゼリー系か。

 ……さて、ここで問題です。

 今日買って来たデザートの中で一番先に無くなったのはどれでしょう。

 ――正解は、


「? もう無くなっちまったのか?」

「ずーっと食っとったからのぅ」


 飲兵衛たちに食いつくされた水羊羹でしたー。

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