第324話 心臓に悪い
ふふ。
ずっと作りたかった料理があったのよ。
ただねぇ、どうしても食材がね。
あと、一人前で作るの躊躇うような料理なの。
という事で、今回のラベンドラさん達が来たのをこれ幸いと作っちゃおうという事で。
買い物済ませて帰宅。
「帰ったか」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」
びっくりしたぁっ!!?
マジでびっくりした。
帰りついたらもうラベンドラさん達スタンバってたもん。
心臓に悪いて……。
「き、今日は早いですね」
「少し、話がしたくてな……」
お? 何やらシリアスムードっぽい?
ハイハイ、翔さんに聞かせてみなさい。
「実はな……今度、王国総出の昇格会に呼ばれてな」
「……?」
どうしよう、聞かせてみろとは思ったけど、全く何のことか分からんぞ?
昇格会ってなーんぞ。
お誕生日会の親戚?
「各ランクの昇格式とでも思って頂ければ遠くありませんわ」
「普通は各ギルド支部で行うものなのだが、例外的に国王主催で行われる場合がある」
まさかのお誕生会ニアピン説ある?
にしてもなんだか……聞かない方がいいような気がする。
「Sランクへの昇格の時がそうなんじゃが、まぁわしらが対象なんじゃ」
「あ、とうとうSランクになるんですね。おめでとうございます」
なんだっけ? 『OP』枠外れてBランクになったんだっけ?
んで、そこからSランクになるのか……。
ん? 飛び級? 俺が知ってるランクって、Bの次はAなんだけど……。
異世界だからBの次がSって説は……。
「だが、Aランクを飛ばしての昇格という事で、多方向からの反感を買う恐れがある」
あ、ちゃんと間にあるんだ。
んで、反感買うんだ……。まぁ、そりゃそうか。元々Aランクのパーティからしてみたら、自分らを差し置いて……ってなるもんな。
「そこで、昇格会を大規模に開き、我々の功績を周囲へと見せつける必要があるわけなのだが……」
なるほど? お誕生日会亜種にもしっかりとした意味があるわけね?
「その中で、一つ、未知なる食材の調理が組み込まれていてな」
「その食材を手に入れたパーティとは知り合いで、どのような材料なのか、情報と実物を頂いたのですけれど……」
「正直、我々が普段食べないような食材なのだ――が、ここでは食べたことがある食材でな」
「そこで、俺がどうにか出来ないか、と?」
「うむ」
ははーん? つまり、異世界人が普段食べないような食材を俺が美味しく調理しろ、と。
……無理では? いや、食材にもよるんだろうけど……。一応、過去の俺が出した事あるらしいんだけど……。
「……一応、食材を教えていただけます?」
「うむ。ガブロ」
まぁまずは? 見ない事には始まらないけどさ。
あまり期待しないでいただけると……。
「これが現時点で唯一のSランクパーティ『ヴァルキリー』が手に入れた食材……。――『ジライヤ』の舌じゃ!」
と言って出てきたのは。
妙にピンクなベロ。
そう、ベロ。ただ、デカい。こう、牛のベロを一とするなら、多分五百とか?
形はまぁ、ベロって分かるだけで、何に似てるとかは正直……。
ぶっちゃけ、舌だって説明無かったら、俺は触手と認識してた。
それくらいには想像するベロとは離れてたね。
そうか……ベロ――舌――いわゆるタンか。
海外だとあまり食べないんだっけ? 好まれてないだけなんだっけ?
美味しいのにね。
ああ、思い出した。それこそ焼肉の時だ。
俺が用意した肉の、トップバッターが牛タンだったじゃん。
なるほどなぁ。
「流石にカエルの舌は初めてですねぇ……」
そもそもこの世界のカエルの舌って食べるの?
……調べたくない……。
「一応血抜きはしっかりしてあるし、焼けば食えると思うが……」
「まずは試食してみますか」
とりあえず食べてみようという事で。
おっと、その前に……。
「買い物だけ冷蔵庫に入れちゃいますね」
「うむ」
買って来たものを冷蔵庫へ。
押して詰めて、組んで乗せてっと。
「じゃあ、まずは焼肉の時みたく、薄切りで」
包丁片手に、ジライヤタンをスライス……。
ジライヤタンってなんか響きが嫌だな。こう、ジライヤって名前の女性キャラを愛でてるみたいで。
まだポポノタンの方がいい。
「タン先なんで、かなり薄く切りますよ?」
牛タンにも部位がありまして。
いわゆるベロの先であるタン先は、肉質固め。
という事で極力薄切りに。
……牛じゃなくてカエルだけど。
「そしたらフライパンで焼いて」
「レモンを頼む」
マジャリスさんからレモンをって言われたけど、タンにはレモンって相場が決まってるんだ。
韓国の壁画にもタンにレモンを絞る様子が描かれている。
万能壁画ね。
ちなみに今のところ全員でフライパンを囲んでいてね?
ちょっと身動き取れないかなーって。
「味付けはシンプルに塩とレモンだけにしたい」
「分かりました」
というわけで両面しっかりと焼き。
塩を振り、レモンを絞り。
爪楊枝で突き刺して、全員へと行き渡らせる。
刺した時の感触だけど、表面が弾力あってプリッとしてる感じ。
見た目も完全にタンだし、そうそう変な物じゃあないはず。
ジライヤの物という事を除けばただのタン。
そう言い聞かせ、目を瞑ってジライヤタンを口の中へと放り込んだ。
――そのお味は?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます