第160話 メイン後のメイン

「まぁ! 断面図が美しいですわ!!」


 と、盛られたスコッチエッグの見た目にリリウムさんが反応。

 ……うん。

 完成したスコッチエッグは包丁で半分に割って、中の卵が見える様に盛りつけたんだけどさ。

 この卵、黄身が白いじゃん?

 だから、俺が知るスコッチエッグの断面じゃないんよね。

 衣のきつね色、加熱された肉の灰茶色、卵の白と黄色。

 これが俺の知るスコッチエッグね。

 これから黄色が抜けちゃってるんだよなぁ。

 まぁ、黄身は完全な白ってわけじゃないし、若干黄色も混ざってはいるけどさぁ。

 なんと言うか、想像と違うものが出てくると肩透かし喰らう感じがあるよね。


「早速いただくぞい」


 ガブロさんがそう宣言し、スコッチエッグをガブリ。

 ザクッと衣のいい音がして、みんなに見つめられる中。


「おほ~」


 もうね。

 かなり溶けた表情でこんなセリフ吐くんだぜ?

 誰得なんよ、毎回。

 ……待て? もしかしてコレ翻訳魔法のせいか?

 ひょっとするとガブロさん、毎回こんなオホ声じゃなく、別の感嘆符的何かを口走ってる可能性ワンチャン?

 おのれ翻訳魔法め。

 その内ぎゃふんと言わせてやるからな。


「って、何も付けずに食べたんですか?」

「? 最初の一口は料理そのものの味を楽しむもんじゃろうが」


 ガブロさんてば、折角ケチャップにウスターソース、とんかつソースまで用意してるのにどれも使ってなかったんだよね。

 その事を突っ込んだら、何をいまさら、みたいな表情で言われちゃったよ。

 まぁ、本人がいいならいいけど。


「ん~!! お肉と卵の相性が抜群ですわ!!」

「味もいいな。肉にもしっかり味が付いていて、これでも十分美味い」

「かなり卵の味が濃くなっているな。揚げる工程で焼く、や煮る、と言った調理法よりも高い温度になった事が原因か?」


 で、三人も食べ始めて感想が出てきた。

 ただ、ラベンドラさんは感想ってよりは考察って感じだけど。


「ラベンドラ、この味にあえて何かを付け足すとしたらどれだ?」


 そんな考察中もお構いなしに、マジャリスさんがラベンドラさんに。

 スコッチエッグにかける調味料はどれがいいかと尋ね。


「私の意見でいいならば、だが、私はケチャップを推そう」


 それの返答はケチャップ。

 まぁ、間違いないと思う。


「理由は?」

「肉や卵にしっかり味が付いている以上、ここを壊すのは避けたい。こちらのソースたちはそれ単体でも美味いが、やや味が濃い。その点、ケチャップも味は濃いが、さわやかな酸味とほのかな甘みで全体的に軽めだ」

「素材の味を殺さん、という事じゃな」

「そうだ。加えて、色味もだな。他の黒や濃茶色のソースと違い、明るい赤なのは見た目的にも華やかになるだろう」


 おお、流石料理人。

 どの調味料が合うか、という質問に、ほぼ完ぺきと思える解答を提出してる。

 俺に聞かれても、


「好みの問題ですからね~」


 とかではぐらかしそうなのに。

 あと、ラベンドラさんの説明で俺もケチャップで食いたくなった。

 ……恐るべしラベンドラさん。


「卵とケチャップの相性はオムライスで証明済み。肉、米も同様だ。つまり、この料理に一番合う調味料はケチャップであろう」


 ちゃんと根拠もある、と。

 この人ディベートとか強そうだな。

 人狼とか。いやまぁ、エルフなんだけども。


「ちなみにタルタルソースとかを合わせたりしますね」


 まぁ、水を差すようで悪いんだけど、俺が過去に作った時はタルタルソースで食ったかな。

 結局タルタルが万能かつ最強だった。


「なぬ!?」

「タルタルソース!!」

「あ、ごめんなさい。今日は用意してないです」


 いやその……あなた達来てからタルタルソースの消費が滅茶苦茶早くてですね?

 自分じゃそう高頻度で買うもんでもないから、頭からすっぽりと抜け落ちてましてね?

 まぁ、ケチャップやらソースやらあるからいいか、ってなっちゃてまして。

 だからその……そんな落ち込まないでもろて。


「ラベンドラの言う通りケチャップが合うな」


 マジャリスさんを見習ってください。

 タルタルという単語を聞いた瞬間は耳が上がったのに、今じゃあ普段と変わらない真横にまっすぐ伸びてますよ?

 リリウムさんみたく、斜め下向いてませんよ?

 だからその……元気出してもろて……。


「はぁ……タルタル」


 と、タルタルへの思いを引きずりながらも。

 ケチャップをかけたスコッチエッグを一口食べたら耳は上向き、機嫌は回復。

 

「ラベンドラの言う通りでしたわ!!」


 とか言いながら元気にご飯を掻き込んでましたわ。

 そうそう。その反応が一番ですわ。


「スープも美味いのぅ」


 中華風卵とわかめスープを飲んでそういうガブロさん。

 なんだけど……、


「ガブロ、ひげに卵が付いてる」

「む、そうか」


 ガブロさんの立派なひげの上に、卵がちょこんと乗っててさ。

 狙った? ってマジで言いたくなるような、漫画の一コマみたいな場面が出来上がってた。

 ラベンドラさんが指摘して、慌てて取ってたけど。

 

「しかし、やはり卵という食材は様々な料理に化けるな」

「まぁ、応用はいくらでもききますね」


 で、料理を食べ終えながらそんな事を言うラベンドラさん。

 そりゃあ飲み物にすら使われますからね。

 ミルクセーキとか、酒で言えばカクテルのトムアンドジェリーにも使われるからね。

 おかずからデザート、飲み物、パンにだって混ぜるし、何なら麺にすら使う時もある。

 ……つまり、万能って事?


「ふぅ、美味かったわい」

「ご馳走さまでした」


 というわけでみんな完食。

 なお、マジャリスさんから、


「この卵を使ったタルタルを頼む」


 と言われたので明日にでも作ります。

 使うかはさておき。

 んでですよ。

 食後のまったりタイムみたいですが?

 まだ俺の提供フェイズは終了してないぜ!!

 ドロー!! 俺は冷蔵庫から固まったプリンを取り出し、四人の目の前にダイレクトサービング!!


「……これは?」

「食後のデザートになります。もちろん、卵を使った」


 さぁ、プリンが五個。

 かっとビングの時間だぜ。

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