第391話 ゴーレム活用術

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年はコミカライズ化の決定というこの作品の大きな出来事がありました。

 発売に向けて今年も毎日投稿を続けますので、どうぞよろしくお願いします。


 ────────


 さてさて、過去に俺だけが堪能し、あの四人には提供しなかった料理がある。

 使った食材はカイルイフシギキノコ達。

 匂いで感づかれはしたものの、どんな料理かまでは把握されていないはず!

 というわけで、本日のご飯はアヒージョなり。

 その為の材料も買って来ましたわよっと。


「これだけは妥協出来なかったんだよな」


 ちなみに一番値が張ったのはもちろんオリーブオイル。

 これの美味しさが、文字通りアヒージョの美味しさに直結するわけで。

 多少高かろうが、いい奴を買って来ましたわよ。

 ちゃんとエキストラバージンオリーブオイルね。


「あと、試したい事があるんだよな」


 というわけである食材を持って庭に移動。

 移動した直後に目が合うゴーレム君。

 俺の手に持つ土の袋と液体肥料を見てもうニッコニコなんだが……すまない。

 ただでやるわけにはいかないんだ。


「これを燻製して欲しいんだけど……出来る?」


 と取り出したるは、ヒツジナゾニク。

 いや、アヒージョにベーコンって定番じゃん?

 で、ベーコンって燻製してるじゃん?

 じゃあ、ヒツジナゾニクも燻製したらベーコンの代わりにアヒージョに合うんじゃないかって安易な想像をしましてね?

 窯があるならそっちで燻製出来ないか、とね。

 で、ゴーレム君の反応なんだけど……。


「……フッ」


 鼻で笑われたんだが?

 お? やるか? 飯抜きにしてもいいんだぞ?

 と、喧嘩腰になっても仕方がないので、まずはご機嫌取り。

 腐葉土と抗菌土の盛り合わせにしっかり希釈した液体肥料のドリンク。

 あと、買って来た粘土をデザートに沿えて……どうだ?


「ンゴ~」


 めっちゃふにゃふにゃな声出てるんだけど?

 猫かな? ゴーレムだったわ。


「出来ない?」

「ン~~ゴ~~」


 へい神様、あるいは翻訳魔法さん、翻訳して。


(神様使いが荒い奴じゃのぅ。……燻製とは? と言うとるが?)


 あ、そもそも何をすればいいか分からなかった系か。

 だったらしょうがないな。


「えぇっと、今から中で物を燃やすから、その煙を外に逃がさずに窯の中で充満させて?」

「ンゴ!」


 お、なんかやってくれそう。

 一応再確認。


「やってくれるかな!?」

「ン~ゴゴ~!」


 大丈夫そうね。

 というわけで桜のウッドチップを窯の奥に大量に投入し、窯の手前にヒツジナゾニクブロック。

 着火剤に火をつけウッドチップで覆い隠しまして。


「じゃあ、お願いしとくね」

「ンゴ!」


 任せてくれ、と聞こえなくもない力強い反応を頂いたところで、他のアヒージョの素材の下ごしらえをしますわよ。

 何せ、いっぱい買って来たからね。



 とりあえず冷凍ものは全部解凍し、解凍してる間に出来る事をやる。

 用意した野菜は芽キャベツ、こいつは下ごしらえ不要。

 侯爵芋、一口大の大きさに切り出して揃えた。

 マッシュルーム、洗って同じく一口大に。

 ブロッコリー、同じく洗って一口大。

 プチトマト、ヘタを取って洗って終わり。

 うし、野菜はこんなもん。

 ……なお、五人前なのでこれだけでボウルが一杯になる模様。


「いやぁ、しかし、まさかうまくいくとは……」


 ゴーレム君に任せた燻製作業。

 ちゃんと出来てるかな? と思って見に行ったんだけど、凄いね。

 窯の形状的にどうしても入口というか、塞げない場所があるはずで。

 そこから煙が本来は出て行くものだと思うんだけど……。

 どうやら魔力的な防壁を作っているらしく、中から外に煙が出て行ってないんだ。

 まぁ、覗き込んでも煙まみれで一切中の様子はわからなかったけどさ。

 それでも、燻製って工程はちゃんと進んでるみたい。

 ……ちなみにヒツジナゾニクには特に何の味付けもせずに燻製に放り込んだ。

 元の味があるし、あと面倒だし……。

 にしても、燻製をゴーレム君がしてくれるとなれば、今後は魚とか、肉とか定期的に燻製にしたいわね。

 またジャーキーを作るのもいいかもしれない。

 ……待てよ?

 このヒツジナゾニク、脂身無いし、実はジャーキー適正高いのでは?

 今度の休みで仕込むか。いや、四人の時間跳躍魔法があるわけで、別に仕込みに時間掛からないんだった。

 んじゃあ明日作るか。むしろ今から作るか。

 ヨシ、そうしよう。


「んでも優先はアヒージョの方だけどね」


 解凍を終えた食材たち……主に魚介類の処理をしますわぞ。

 イカ! 一口大に切りまして。

 エビ! 殻を剥き、背ワタを取って終わり。

 タコ! 一応吸盤の中にゴミが無いか、竹串を入れてほじくり返し、無い事を確認して一口大に。

 ホタテ! 元から一口サイズだからそのままで。

 こいつらを、しっかり水気を切って準備完了。

 オリーブオイルヨシ! 国産ニンニクヨシ! 鷹の爪ヨシ!

 アヒージョの準備を終えたことを確認し、続いてヒツジナゾニクをジャーキーにする準備。

 ……をしてたらですよ。

 賢い僕は気付きました。

 パンを買って来てない事を。

 アヒージョするのにパンを買って来てないってマ?

 ド戦犯やんけ。

 という事で車を走らせ向かうは昨日も買いに行ったパン屋さん。

 本日はバゲットを大量購入です。

 ……店員さんから、


(こいつ昨日も来てなかった? しかも昨日も大量にバタールを買っていったような……)


 みたいな目で見られたけど気にしない、いいね?

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