第381話 土食うゴーレムも好き好き

「持ち帰りはピザ生地とクレープ生地でいいんですよね?」

「ああ、大丈夫だ」

「あの美味しかったソースも頂きましたし!!」

「フルーツも各種貰ったからな!!」


 というわけでデザートをしっかり食べ終えて。

 持ち帰りの生地を現在は用意中。

 まぁ、ピザ生地は発酵まで進めたらそのまま渡すだけだし、クレープ生地はラベンドラさんが焼いちゃうし。

 俺がすることは特にない。


「それにしてもブラウニー……美味かったな」

「あら、やはりチーズケーキと苺、アイスの組み合わせが一番でしてよ?」

「わしはマンゴーとクリームだけのが好きじゃったな」

「全部だ全部」


 なお、まだクレープの中身議論は続く模様。

 まぁ、多分結論は出ないと思うよ。

 どれもこれも美味しいし。


「……そうだ、カケル」

「なんでしょう?」

「一つリクエストをいいだろうか?」


 ……天地明察。

 多分明日の晩御飯だろう。

 となると……なんだ?

 ヒツジナゾニクを使った料理……だよな?

 

「聞きましょう」

「あの肉を使って、最初の頃に食べた煮込み料理を食べてみたい」


 ……ほう。

 なるほど?

 確かに美味しそうだな?

 最初の頃の煮込み料理って言うと角煮の事なんだろうけど、角煮にするには脂身が無さ過ぎるなぁ……。

 でも、間違いなく美味しくなるはず。

 となると、煮込む時に色んなスパイスを入れて洋風角煮みたいにしてしまうか。

 ちょっと今からワクワクが止まらん。


「間違いなく美味そうですね」

「だろう? サワークリームや侯爵芋を付け合わせに、焼いたバゲットを添えてな」


 じゅるりら……。

 というか、ラベンドラさんも当たり前に洋食イメージか。

 まぁ、あの肉自体が洋風チックな味わいだもんね。そうなるか。


「分かりました。じっくり煮込んでおきますね」

「楽しみにしている」

「では、いただいていきますわね」

「ゴーレムの餌やりを忘れるなぞい」

「次なるデザートも楽しみにしているぞ!!」


 なんて言いながら、魔法陣へと消えていく四人。

 さて……と。


「腐葉土っていくらくらいするんだ?」


 庭に放置されたゴーレム用の土を検索しなきゃ。

 ……思ってたより安いな。とりあえずでっかいの買って、ちょっとあげてみて気に入るか様子見るか。

 ――ハッ!? なんかペット感覚に思ってしまった。

 ゴーレムなのに。

 ……こう、ちっちゃいゴーレムとかなら可愛いかもだし、ペットにしてる異世界人とか居そうだなって。

 トテトテ歩いて自分の後ろついてくるゴーレムとか良くない?

 顔はまぁ……自分で好みに描くとしてさ。


「よし、じゃあとりあえず寝るか」


 明日に備えて寝ませう寝ませう。

 というわけで風呂に入り就寝。

 片付け? 起きたら明日の翔君がするでしょ。



「ん」


 起きました。

 伸びをして、時刻を確認。

 昼前。休みの日はゆっくり寝なくちゃね。

 確か、昨日の洗い物が残ってたはず……。

 それ片付けなくちゃ……。

 そう言えば、ゴーレムってどうなったんだろ?

 動いてはないよね?

 と、不安になって庭のゴーレムを見に行ったら、


「大丈夫!?」


 なんか昨日より元気無い。

 多分。

 いや、確証はないんだけど、明らかに昨日より体が崩れてきているというか、平坦になって来ているというか。

 ともかく、人間なら確実に元気無い判定を貰うような雰囲気出してる。


「……ひょっとして、お腹すいた?」


 と俺が聞くと、ゴーレムの目がゆっくり上下した……ように見えた。

 はぁ……頼んだ腐葉土はすぐには来ないだろうし、近くのホームセンターに買いに行くか。

 なんかあの四人に出費の元を増やされちゃった感じがするなぁ……。



 はい、というわけでね。

 一人暮らしの最強の味方、食器洗浄機に洗い物を全て一任しまして、車走らせ買って来ましたよっと。

 腐葉土と、砂場用の抗菌土? って奴。

 いや、土って種類あるんだなぁ、なんて。

 というわけで庭に運びまして……、


「ほーら、土だぞー」


 恐らく俺以外の人間が発さないであろう言葉を言いつつ、窯の中へまずは腐葉土を。

 ……。

 ……。

 ……。

 特に変化ないな。

 ご飯じゃなかったのかも? なんて思い、後ろを向いた瞬間。

 ゴクン。と、割と大きな音が聞こえた。

 で、振り返ったら窯の中の腐葉土が奇麗さっぱり無くなってまして。


「……っ!」


 ゴーレムが、エナジードリンクキメたみたいな目つきに変わってた。

 お気に召した……のかなぁ?


「まだいる?」


 と声をかけると、目線は腐葉土ではなく抗菌土に注がれて。

 こっちもか……。と窯の中へ抗菌土をぶち込んで。

 後ろを見ると、またもゴクン! と。

 食べる所は見られたくないのか……。

 で、反応は? とゴーレムの目を見て見たら、


「そんなに良かった?」


 なんと言うか、恍惚な表情の時の目をしてた。

 いい目してんねゴーレムね。

 まぁ、値段的にも抗菌土の方がいい値段したし、そっちの方が気に入ったならよかったよ。

 それにしても……。

 製作者? のエルフ達に似て、お前もグルメなのか……。

 ペットは飼い主に似るっていうけど、やっぱりお前扱いペットなのでは?

 ……でもそうなると飼い主は俺になる?

 ……面倒だから考えない事にしよう。

 さて、それじゃあヒツジナゾニクの煮付けでも開始しますかね。

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