第380話 エルフ式あ~ん

「果物と生クリームの相性が……もう」

「どちらの果物も我々の世界には無いものだな」

「こんな美味いのにお預けとはのぅ……」

「どうしてこちらの世界の食材はどれもこれも美味しいのでしょうか?」


 えー、フルーツ&生クリームクレープ、ペロリです。

 まじで一瞬で無くなりました。


「酸味と甘みのバランスでやはりイチゴが……」

「いやいや、バランス云々より甘さが正義だ。つまりメロンが最強」

「甘さではマンゴーも引けを取りませんわよ!? どころか特有の風味が唯一無二過ぎて私これ気に入りましたわ!!」


 やはりクレープには果物ですよ。

 まぁ、イチゴかバナナが定番ではあるんだけれども。

 バナナを用意しなかった理由? 察してください。


「カケル!? 次の段階は!?」


 おーっと鼻息が荒いマジャリスさん。

 かかってしまっているようです。落ち着きを取り戻せるといいんですが。


「アイスを――」

「おおっ!?」

「と思いましたけど、それだけじゃあ足りませんよね?」


 というわけで。

 こちら、デパートで買って来たチーズケーキ、ティラミス、ブラウニーになります。


「これは……?」

「ケーキ?」

「これを?」


 あの、三人が三人同じベクトルなのに別の疑問抱くのやめて貰っていいですか?


「アイス、生クリーム……後は苺ですかね。果物で合いそうなのは」


 マンゴーもメロンも、申し訳ないけど単品で完結してるような果物だし。

 苺みたく、チョコとかチーズとかに合う柔軟さはない気がする。

 あくまで俺の主観だけど。


「ケーキを……クレープに……」

「サイズを考えないと不格好になるな。薄くなるように切り、足りないようならば追加で足しながら巻くか」


 というわけで残ったメロンとマンゴー。

 こちらは俺がいただきますね?


「苺とレアチーズだ! 絶対に間違いない!!」

「チョコと苺に決まっていますわ!! つまりブラウニーですわ! パクパクですわ!!」

「ティラミスとアイスじゃな」

「飲み物用意しますけどコーヒーの方~」


 三人がそれぞれラベンドラさんに注文している中、俺は飲み物のオーダーをば。

 コーヒーがガブロさん、ラベンドラさん。


「二人は紅茶で大丈夫です?」

「ああ」

「よろしくお願いしますわ」


 で、マジャリスさんとリリウムさんが紅茶と。

 なんか、この別れ方も定番になって来たな。


「ガブロさんはブラックですよね?」

「うむ。甘いのはクレープだけで十分じゃわい」

「ラベンドラさんはミルクだけ?」

「そうだな。それで頼む」


 こう、喫茶店でもこんな感じなんだろうか。

 マスター、いつもの。みたいな流れ。


「お二人は紅茶に何か入れますか?」

「ストレートで」

「同じくですわ」


 ふむ。まぁ、生クリームでミルク分は足りてるのかな?

 というわけで淹れていきますか。

 と、お湯を沸かしていると、目の前にふよふよとクレープが漂ってくる。

 何事かと思って見渡せば、クレープ生地を焼きまくっているラベンドラさんの口の前にもクレープが。

 そして、


「……」


 俺の視線に気付いたラベンドラさんがサムズアップ。

 あの人……エルフの仕業か。

 まぁ、いただきますけどね?

 というわけで浮いているクレープにパクリ。

 ……うま~。

 中身はメロンと生クリーム、そしてアイスか。

 それぞれ甘いんだけど、ちゃんと別種の甘さでさ。

 どれがどの甘さなのかはっきり認識できちゃうの凄いな。

 あと、生クリームとメロンの相性はやっぱりしゅごい。

 もちろん、アイスとの相性もばっちり。

 もしかしてメロンと牛乳の相性っていい?

 今更すぎか。


「美味いですねぇ」

「だろうな」


 追加で俺の分のコーヒーを用意しつつ、ラベンドラさんとそんな会話。

 ちなみにクレープ生地は、焼けたのを放り投げたら三人で取り合いが発生し。

 取り合いを制した一人が、好みのトッピングでかぶりつく。

 そんな感じになっていました。

 魔法が使えないガブロさんが劣勢かと思いきや、ガブロさん、反応速度だけは滅茶苦茶早くてさ。

 魔法発動前にクレープ生地を確保するのが珍しくないんだよね。

 ……結果、リリウムさんとマジャリスさんに魔法で初動を妨害されたりしてるけど。

 あと、甘いのは……なんて言いながら全然がっついてるからね、あなた。


「カケル、まだフルーツが残っているが?」

「残りは神様たちへお供えしようかと」


 マジャリスさんが残ったメロンとマンゴーを物欲しそうな目で見ている。

 どうしますか?

 ……なんて、そうはいかんのよ。

 キュウリとかで喜んでた翻訳魔法さんにもお供えする予定だし、神様にはマンゴークリームクレープを。

 翻訳魔法さんにはメロンクレープをお供えする予定。


(助かるぞい)


 何がどう助かるかは聞かないでおきますよっと。


「飲み物お待たせしました」

「すまんな」

「待ってましたわ!」

「よし、これでまだまだ楽しめる!!」


 飲み物持って行ったら、こんな事言うんだもん。

 既にどれだけ楽しんだんだって話よ。


「ちなみにどれが美味しかったです?」


 食べてるペース的に、用意したケーキを一通りは試したはずだし、好みの組み合わせは見つかったか?

 という気持ちで聞いたんだけどね?


「全部!」

「全部ですわ!!」

「例外なく美味いわい!」


 そうじゃないんだってば。

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