第437話 親近感

 牡蠣食えば 俺が喜ぶ 法隆寺。

 んっん~、渾身の俳句が出来たな。

 ちなみに季語は法隆寺。


「カキフライの揚げ加減完璧ですね」

「だろう? 私に任せろ」


 カキフライ、牡蠣の中心に火が通るギリギリの加減で揚げられててさ。

 身の周りは加熱されてしっかり食感があるのに、中央に行くにつれてトロリと流れ出てくる感じ。

 レモン汁の酸味、とんかつソースの濃厚な味。

 そしてタルタルの三連コンボを受け止める、魔牡蠣のポテンシャルの高さよ。

 もちろん米にもあう。

 まぁ、その米は今日は炊き込みご飯なんだけど。


「出汁を吸った米が物凄く美味い」


 その炊き込みご飯を頬張ってるマジャリスさんが、ポツリと感想を漏らす。

 人参とか、混ぜても良かったかもね。

 まぁ、今日はシンプルな魔牡蠣尽くし御膳だからいいけども。


「しぐれ煮の生姜との組み合わせが最高」

「ホイル焼きの美味さよ。やはり油と牡蠣の相性は最高じゃな」

「それで言うならガリバタ醤油との相性ももちろん最高ですわよ!」


 全員参戦。

 俺はホイル焼きにいこう。


「うむ。いい塩梅に揚がっている」

「お世辞でも何でもなくマジでカキフライ美味いです。揚げる時のコツとかってあったりします?」


 自分で揚げたカキフライを褒めてたラベンドラさんに一つ質問。

 秘訣があるなら教えて欲しいところ。


「余熱でどれくらい火が通るかを計算して揚げるんだ。食べるまでの時間から逆算するといい」

「……どれくらい火が通ってるかとか見た目じゃわかりませんよね?」

「それは感覚だな」

「ですか……」


 ……おかしいな?

 揚げ物って、多分だけど俺がラベンドラさんに教えたよな?

 と言う事は、揚げた回数的には多分俺の方が勝ってるんだよ。

 ――おのれエルフめ。

 学習能力高すぎだろ。


「一時はほとんどが揚げ物ばかり作らされたからな。揚げてる時の音や油から出る泡の変化である程度分かる」


 ……か、観察眼。

 いや……だってさ。レシピ見たら何分揚げるとかちゃんと書いてくれてるんだもん。

 それに従えば美味しく出来ちゃうんだもん。

 僕は悪くない。


「ガリバタ醤油炒めサイッコー!」

「酒が欲しくなるのぅ」

「いいねぇ! 翔! ビール!!」

「無いよ」

「無いって。――無い!?」

「買い出し行った時に言ってくれなきゃ」

「……今度帰ってくるときにダース単位で届くようにしとく」

「それがいい」


 あと姉貴がノリノリでビールを宣言したけど、無いんだよなぁ。

 フルーチェを頼む時に言ってくれれば間に合ったのに、残念。


「炊き込みご飯が美味し過ぎて、これで白米が食べられますわ」

「完全に同意だ。と言うか、しぐれ煮やガリバタ醤油炒め、ホイル焼きで白米を掻っ込みたい」

「分かる~」


 うん、それには俺も同意。

 でも、炊き込みご飯もやりたかったんだ、我慢してくれ。


「ガブロが言っていたが、オリーブオイルと牡蠣の相性がいい」

「ニンニクとも相性がいいですし、そこに加わる鷹の爪のピリッとした刺激が最高ですよね」

「こちらは白米と言うよりパンの方が合いそうだが」

「残ったオリーブオイルを浸して食べたいですねぇ」


 ラベンドラさんとアヒージョ風ホイル焼き談義を開始。

 これだけは洋食じゃなく、外国の料理って感じがするんよな。

 アヒージョってスペイン料理だっけ。


「何だかんだたくあんが一番安心するわい」

「漬物を食べた後のお吸い物がもう本当に……」


 こういう御膳の漬物ってたくあんのイメージ無い?

 俺だけかな。

 後は青菜の漬物とかもイメージあるか。


「炊き込みごはんとも相性良いぞ」

「しぐれ煮の前後でも美味い」

「料理と料理の橋渡しのような感じだな」


 ……お漬物って箸休めとか、香の物なんだけどな。

 料理と料理の橋渡しは初めての解釈かもしれん。

 でも、言い得て妙なり。


「今日は特に品数が多くて、どれを食べようか迷ってしまいますわね」

「箸が常に動いとるわい」

「だがその分満足感も高い」

「色んな味の変化で飽きも来ないしな」


 ずず~。

 はぁ、しぐれ煮の後のお茶がうめぇ……。

 ちなみに寒くなってからお茶はホットで出してたりする。

 ケトルがあればすぐにお湯が沸くしね。


「カキフライ……カキフライが本当に……」

「分かる、分かるぞ」

「タルタルが暴力的なまでに戦闘力を高めているんだ……」

「どのお店のカキフライよりも美味しい!!」


 ……分かる、分かるぞ、みんな。

 今日のカキフライ、マジで美味いよな。

 俺とラベンドラさんで並んで後方腕組みシェフ顔して頷いてますわ。


「このカキフライならマジで無限個食べられる」

「……出すぞ?」

「――訂正しよう、三桁行くまで食える」

「十分食べ過ぎなんですけど……」


 調子に乗った発言をしたマジャリスさんに、すぐさま冷たい反応で制するラベンドラさん。

 直後にマジャリスさんが訂正するけど、カキフライ百個は普通に食い過ぎなんよ。

 俺なんて十個くらいでいいわ。


「それくらい美味いっちゅー例えじゃろ」

「牽制しておかないとこいつは自分で食べられない量を作れと言い出すからな」

「あ、分かる。私も自分が食べられる量を見誤りがちだから」

「そのしわ寄せ全部俺に来てたからな」


 残すのも悪いからと頑張って食べきってた思い出が……。


「カケルも同じ思いをしていたのか……」

「なんか似た者同士じゃな、二人」


 この言い分だと、ラベンドラさんもマジャリスさんのしわ寄せを受けて来たか。

 身近にわがままが居ると大変ですね、お互いに。

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