第373話 お好きにどうぞ

「絶対にチョコソースとアイスの組み合わせは外せん!! そこにバナナを入れたクレープ is GOD」

「アイスは同意ですけれどそこにクリームチーズとサワークリームですわ! さっぱりとした酸味が加わる事でいくらでも食べられましてよ!?」

「甘いもの一辺倒なのはいただけんぞい。生ハムにリーフサラダ、クリームチーズを入れたクレープが飯にもツマミにもなる!!」

「今はデザートの話をしている!! そして酸味を加える事には賛成だが、その酸味は果物由来の方が美味い!!」


 みんな熱量凄いなぁ……。

 あれだけ食べたのに、クレープいくつ食ってるんだよ。

 と言うか、思ったけどクレープのバリエーションって凄いね。

 それこそ、用意した材料の階乗分パターンがあるわけだし。

 そこにさらに、材料の取捨選択も合わされば文字通り無限に近いパターンになり得る。

 ――でも、このエルフ達なら生涯かけて全パターン試しそうだなと思ってしまうのは俺だけ?


「ちなみにカケル」

「へぁ? あ、はい」


 急に話題振られて変な声出た。

 なんでせう?


「カケルのお気に入りの組み合わせはどれだ?」

「あー……」


 チョコバナナを作ったは作ったけど、それが一番好きってわけじゃないんよな。

 んでもなぁ……俺の好きな組み合わせって、用意した材料じゃ出来ない組み合わせなんだよなぁ。


「俺が好きなのは、イチゴカスタードチョコにアイスを乗せた奴ですね」


 ま、いいか。

 何か? と聞かれただけだし。


「イチゴ……?」

「カスタード……?」

「チョコにアイス……?」


 苺もカスタードも無いけど? みたいな感じでガブロさんを除く三人がこちらを見てくる。

 えぇと、取り繕うか。


「ほ、他にもイチゴレアチーズとか」

「レアチーズ……?」


 ……がっ、墓穴。

 と言うか、またイチゴ出してて草。

 いや、挙げたのは俺なんだけどさ。


「……明日のデザートもクレープにします?」

「是非!!」


 俺に残された手段は、明日に全部丸投げする事だった。

 すまない、明日の翔よ。

 クレープに使えそうな材料を求めて東奔西走してくれ。


「クレープか……。甘くないクレープのバリエーションは無いんかい?」

「チリソースとソーセージとか、後はチーズを入れてピザソースとかです?」

「おお! それらもええな!!」

「と言うか待て、ピザ、ピザだと?」

「?」


 何か変な事言ったか?

 もしかして異世界にピザが無い?

 あるいは、ピザって現代と違う立ち位置で、何か希少な料理だとか?


「ワインに合うじゃないか!!」


 その時、『夢幻泡影』に電流走る。

 あーあ、気付いちまったか。


「確かに!!」

「カケル! 明日の料理はピザにしよう!!」

「材料はこちらで用意する! だから生地とワインだけ用意して貰えないだろうか!?」

「まぁ、いいですけど……」

「ひゃっほい!!」


 テンション高いなぁ……。

 てか、今飯食ったばっかでよく明日の晩御飯の話が出来るな。

 俺は腹が減らないと次の食事の事なんて考えたくないよ。


(わしにもピザとワインを頼むぞい)


 神様もか。了解しました。


(あとクレープもの)


 はいはい。

 ……あ、クレープの材料にメロンでも買ってくるか。

 ――高いけど、翻訳魔法さんにも何か差し入れしといたほうがいいだろ。


(めっちゃはしゃいどるぞ)


 姿見えないけどきっと可愛いんだろうな、翻訳魔法さん。

 これで見た目クリーチャーだったらどうしよう?

 こう、「おぼろげぼろばぁっ!!」みたいな鳴き声の。


(安心せい。恐らくお主が想像しとる精霊と姿は大差ないわい)


 良かった。

 得体のしれないクリーチャーに餌付けとかしたくないからね。

 やはり、可愛い。可愛いは正義。


「よし、カケル。持ち帰りの食べ物だが……」

「コロッケバーガーの予定でしたけど……?」

「うぐっ……間違いなく美味そうだ……」


 いや、あのコロッケやぞ?

 味わったでしょう?

 あれにソースをたっぷりかけて、千切りキャベツと一緒にバンズに挟むんよ。

 最高でしょう?


「クレープにしたいんですね?」


 まぁ、言わんとしてることは分かるよ?

 でもさぁ、こっちの侯爵芋の消化ペースの事も考えてくれないと。

 

「したい……だがバーガーも捨てがたい……」


 それを捨てるなんてとんでもない。

 だがまぁ、妥協案を提示する事なら出来る。


「では、今からバーガーを作ると同時に、クレープの生地を焼きましょう」

「……ほう?」

「で、生地だけ持ち帰って向こうで好きに包むんです」

「いい考えですわね」

「そうすれば、明日の昼ご飯も確保出来るでしょう?」

「……採用」


 というわけで、ラベンドラさんとピシガシグッグッ。

 俺とリリウムさんでコロッケの方を担当しまして、マジャリスさんとラベンドラさんでクレープ生地の方を担当。

 ……生地の寝かせ? 彼らには時間跳躍魔法とかいう文字通りのチートがありますのでね。

 時間なんてあってないようなものよ。

 バーガー用に俵型コロッケではなく、ハムカツみたいにやや平べったい形にリリウムさんに固定して貰って揚げたら、熱い内にたっぷりのソース。

 バンズに千切りキャベツを敷き、ガブロさんの要望でチーズを敷き、からしを乗せて。

 コロッケを乗せ、バンズで挟む。

 これにて、持ち帰り用ご飯の完成也。

 ……ところで、クレープ生地、何枚焼く気?

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