第374話 獲物だ
さて、生地とワインを用意しろと言われたので買って来ましたよっと。
ワインは色々調べてみたけど、微発泡の赤が丸いって事で。
もはや定番とも言っていいランブルスコ君を買って来ました。
神様もそれでいいよね?
(構わんぞい)
よし。
……一人一本は要るだろうなぁって思って買ったけど、これじゃあまるで俺が飲兵衛みたいじゃないか。
しかも瓶ごと持ち帰るからゴミとしても出ないって言うね。
大丈夫? 周囲からゴミ屋敷なのでは? とか噂されてない?
まぁ、そんな近い所に家なんてないんですけどね、ガハハ。
これが田舎の良いところでもあり怖い所。
犯罪に巻き込まれたら気が付くまでに相当の日数経ちそう。
最近強盗とか多いらしいし、注意しなくちゃね。
――襲われたら返り討ちからの加害者焼却で証拠隠滅までフルオートだからな。
リリウムさん印の防衛魔法、ちょっと過剰過ぎるんだよなぁ……。
(心配せんでも、犯罪に巻き込まれそうになったらそっと教えるぞい?)
大丈夫です? こちらの世界の神様に色々怒られません? それ。
こちらの世界に干渉するなって。
(わしの独り言じゃからなぁ)
うわぁ。
まぁ、ありがたく頂戴するけどさ、その忠告は。
……さて、というわけで生地の準備ですわよ?
まずは強力粉と薄力粉をボウルに振るって合わせまして、ここに塩とドライイースト。
こいつを混ぜ合わせたら、オリーブオイルとぬるま湯を入れてしっかりまとまるまで混ぜますっと。
まとまったら、ボウルに打ち付けて練ーり練り。
何度も打ち付けて、練ってを繰り返し表面が滑らかになったらストレス発散終了。
濡れ布巾を被せ、ラップをして一時間ほど放置。
その間に洗濯物やら風呂掃除やら家事を終わらせますわぞ~。
(ワイン、ちょっとくらい飲んじゃいかんか?)
ダメですねぇ。しっかり待っておいてください。
(むぅ)
欲しがりさんめ。
飲んじゃダメとは言って無いでしょ。ちゃんと待ってればお供えするんだから。
ちなみにこのピザ生地、今の発酵が終わったらガス抜きして、一枚分に分けて更に二次発酵をさせる必要がある。
生地だけで結構時間掛かるんだよね。
まぁ、これはパンとかでも同じことだけど。
というわけでアラームセット! 額に冷えピタ、ヨシ!
蒸気が出るアイマスク装着、ヨシ!
心が落ち着く自然音動画、ヨシ!
これより、リラックスタイムへと突入する!!
*
「へー、こりゃあうめぇ」
「甘くて美味しいです!」
「美味……しい……」
ダンジョン内で迎える朝。
それぞれセーフゾーンを共有し、ラベンドラが持ち帰って来たクレープ生地に、それぞれが持ち寄った具材を巻いて食事とし。
『ヴァルキリー』達は、マジャリスが激推しした生クリームとチョコレートの組み合わせに舌鼓。
『無頼』は、ガブロおススメのトキシラズのスモークサーモンとクリームチーズ、マンドラゴラの頭葉のサラダクレープを食べて満足気。
……『夢幻泡影』は、当たり前にここにアイスや果物ジャムを追加していたりするが。
「手軽に食えるってのがいいな。このダンジョンじゃなきゃ、食いながら移動だって出来ちまいそうだ」
「ながら探索は周囲への注意が散漫になる。罠にかかる可能性が上がるぞ?」
「俺を誰だと思ってンだよ。罠なンざかかりゃしねぇよ」
そう言って、食べ終わった後に指を舐めた『無頼』は。
ぴょんと跳びあがって立ち上がると。
「ン? この匂いは……」
セーフゾーンから顔だけを出し、スンスンと鼻を動かして匂いを嗅ぐ。
どうやら、彼だけに反応できる『何か』の匂いがするらしく。
「敵か?」
その発言に、『ヴァルキリー』のタラサが警戒を強め。
腰に差した剣の柄を握りながら――クレープを咥えて立ち上がる。
――が、
「敵は敵だが警戒しなくていい。これは俺の大好物な匂いだ」
そう言って、ニタリと犬歯を覗かせる『無頼』。
獣人の、しかも銀狼種という珍しい――というよりは一部地域にしか居ないその種族は。
とりわけ、『ある魔物』に対する嗅覚が優れているとされる。
そして、その系統の魔物は狩り過ぎているらしく。
まるで、遊戯のように楽しみながら狩りを行う。
その種族とは――、
「チッ、タングリスニの方だったか」
セーフゾーンから見える、ヤギ型の魔物であり。
「タングリスニ!?」
「確か、幻獣種の……」
その存在に、慌ててクレープを飲み込み、警戒を強める『ヴァルキリー』を余所に。
「初めて見ましたわ」
「肉はどんな味だろうな?」
「お代わりだ。チョコとクリームマシマシで」
「酒に合う味だと良いのぅ」
のんびりマイペースな『夢幻泡影』。
そんな『夢幻泡影』に、『ヴァルキリー』が何かを言おうとしたとき。
「あンたらも、のンびりしてていいぜ」
拳同士をぶつけ、臨戦態勢に入った『無頼』が、手出し無用とばかりに言い放つ。
「丁度いいや、ここらで俺の実力でも見せておくか」
などと言いながら、相撲の四股を踏みだした『無頼』は。
「『
そう呟き、突貫。
某格闘ゲームの相撲キャラの如く、頭から。
真っ直ぐタングリスニへと突っ込んだ『無頼』は。
「吹きすさべ! 闘いの風よぉっ!!」
ハイテンションに、タングリスニへと強烈な頭突きをお見舞いするのだった。
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