第185話 犠牲にはならなかったのだ

 さぁて?

 デカクカタイタマゴがそろそろ終わるし、今日で使い切っちゃおう。

 まず作るのはカルボナーラ!

 パスタの定番で何なら人気もほぼトップじゃない?

 ミートソース……ボロネーゼとツートップ張ってるイメージしかない。

 俺としてはイカスミも捨てがたいけど、子供からも好かれるのはカルボナーラでしょ。

 というわけで――麺は茹でなくていい。

 焦る必要もなくラベンドラさんが来てからでいい。

 ソースも同様。別に時間掛かるソースでもないし。

 じゃあ何をするかというともちろん……、


「デザート……作りますか」


 そう、デザートですね。

 無いと多分マジャリスさんが暴れちゃう。

 あと、最近作るの楽しくなってきた。

 いやぁ、一人暮らしだと中々デザートなんて作らないしさ。

 作っても自分で消化するだけじゃん?

 でもマジャリスさんたちが居れば、美味い美味いと某柱みたく笑顔で食ってくれるし。

 それがデカいかなぁ、やっぱり。


「ん~と? まずは買って来たビスケットを砕いて型に敷き詰める、と」


 てなわけでレシピ様に教えて貰いながらデザート作り。

 まずは買って来たココナッツビスケットを粉々に砕いて型に敷き詰め。

 あー……個人的にオレオとかにしとけばよかったかも。

 まぁいいや、今回のが上手くいったら次からはそうしよう。

 サスケェ!! お前の前のたなのオレオ取ってオレオ!!


「んで、卵黄っと」


 ボウルに卵黄を掬ってぶち込み、そこに砂糖、クリームチーズにコーンスターチ。

 そして、レモン汁をこれでもかとぶち込み。

 レッツら混ぜ混ぜ!!

 もはや慣れたけど親指の付け根が痛くなる混ぜの工程。

 そろそろ自動泡だて器買うか……。

 あるいは、ラベンドラさんに自立式の泡立て魔法とかをかけておいてもらうか。

 出来るのかな? 出来そうだな。エルフだもんな。


「会社行ってる間にホイップクリームとか作っといてくれると嬉しいんだけど」


 無人の台所でひたすらに宙に浮いて生クリームを泡立てる泡だて器……か。

 ホラーかな?

 やってること泡立てるだけなんだけど。

 んでまぁ、混ざったものがこちらになります。


「卵白と、砂糖……」


 続いてメレンゲを作ります。

 そしたら、最初に混ぜた奴とやっぱり混ぜて、ビスケットが敷き詰められた型に流し込み。


「オーブンで湯せん焼き……。湯せん焼き?」


 全然初めましての単語出てきたが?

 なんぞそれ?

 ――ほへー、いわゆるお湯に容器を沈めてオーブンで蒸し焼きにすることを言うのか。

 プリンとかもこれで作るレシピもあるらしい。

 初めて知ったわ。

 というわけでバットにケトルで沸かしたお湯を注ぎ、折りたたんだクッキングペーパーを敷いて容器がズレないようにいたしまして。

 スフレレモンケーキを、170℃のオーブンで50分。

 いってらっしゃい!!



「滅茶苦茶いい匂いする」


 というわけで焼き上がりました。

 開けてみましょう。


「ふぇ?」


 で、開けたら飛び込んできた景色は、突いたら破裂するんじゃね? と思うほどに膨らんだスフレチーズケーキ。

 しまった……スフレオムレツで似たようなことになったの忘れてた!

 じ、時間たったら萎むし平気か……。


「それはそれとしてすこーし味見……」


 フォークで直接スフレ部分を少し掬い、そのまま口に。

 この部分は切り分けた時に俺が食べる部分にするから遠慮はいらん。


「はち……うま」


 焼きたてという事も有り熱かったものの、味は滅茶苦茶美味しかった。

 まずやっぱり何と言っても軽いね。

 口に入れた瞬間シュワっと溶ける。

 んで、チーズの香りとレモンの風味、そして酸味が最高。

 もちろん甘いんだけど、その甘さの後に酸味と風味で爽やかに流される。

 ベタッとしてない甘さ。鼻に抜ける感じから涼しい風みたいな印象になる。


「これタルトとかでも絶対に美味いな」


 というわけで今度は土台のビスケットと一緒に味見。

 ……あーやっばい。

 美味すぎる。

 ビスケットのサクサク感がより爽快さに拍車をかけてるな。

 あとココナッツの香りも最高。

 チーズ、レモン、ココナッツ。

 香りのジェットストリームアタックに思わずノックアウト寸前ですわよ。

 まぁ、たかがメインブレインをやられただけなんですけど。

 メインの脳がやられても、俺には煩悩がある。つまり無敵って事。


「これも革命的な美味しさだったな。どのスフレチーズケーキよりも美味しかった」


 と、作った本人がご満悦。

 こいつはあらかじめ切り分けてお皿に取っておこう。

 えーっと、まずは俺の分を切り出して……。

 こんなもんか。

 そしたらまずは直径計って、分度器で俺の分の角度を測定。

 ジョウダンデス。大体目算で四等分にしてお終い。

 ……角度は計ってもよかったかもね。

 

「じゃあ、後は四人が来るまで待機っと」


 作るのが楽なパスタだからね。

 他やる事も無いし、蒸気が出るアイマスクを装備して、人をダメにするクッションにダイブ。

 仕事の後はこれに限るよ。

 寝ないようにだけ注意しなきゃだけど(n敗)。

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