第200話 魔法って便利だなぁ

「じゃまするぞい」


 というわけで皆さん来ました。

 早速調理を始めましょう。

 違うな。始めて貰いましょう、だな。


「……餃子か?」

「ですです」


 エプロンを取りつけながらラベンドラさん、本日の晩御飯を看破。

 まぁ、材料見たら分かるよね。

 ……分かるか? だいぶ現代料理に浸食されてないか? その思考。

 まぁいいや、


「材料はもう切ってあるので、混ぜて包んで焼くだけですね」

「この肉はワイバーンの肉か?」

「はい。軟骨も混ぜて叩いてあります」


 ラベンドラさんに説明しつつ、餃子のタネを仕込んでいく。

 ……その前に、


「これつけてください」

「? ……手袋?」


 調理に使うビニール手袋を配布。

 タネ自体に辛みを付ける都合上、香辛料をどうしても混ぜるからね。

 手に付くのはもちろん、爪の間とかに入ったら多分痛いでしょ。


「今日の餃子には香辛料をたっぷり使って辛ーい味を付けますからね。その辛み成分が肌に付かないように、です」

「なるほど」


 というわけで、ボウルに叩いたワイバーン肉、刻んだ白菜、ニラ、長ねぎ、シイタケをぶち込み。

 登場!! 香辛料の数々!!

 まずは普通に味付けの為、豆鼓とうちを刻んだ奴、紹興酒、醤油、塩、胡椒をぶち込みまして。

 ……豆鼓ってあれね? 黒豆を塩やらで発酵させた中華で使われる調味料ね。

 何故か家にあったから使ってみた。

 んで、そこからさらに、甜面醤と豆板醤、さらに花椒と唐辛子もドバーっと投入。

 ニンニクと生姜のチューブも忘れずに絞り、仕上げに味覇ウェイパー!!

 中華最強の万能調味料!! 半練りタイプ……ッ!!

 も入れてしっかり混ぜていきますっと。


「色が……凄いな……」


 既にタネは真っ赤になっているが、何を勘違いしているんだ?

 まだ俺の味付けのフェイズは終了してないぜ!!

 ドロー!! 強欲な調味料を発動!!

 戸棚から、適当な二種類の調味料を追加することが出来る!!

 俺は、一味唐辛子とレッドペパーをボウルに加えるZE!!


「後は皮で包んで焼くだけですね」

「お前ら、集合!」


 んで混ぜる作業が終わったら、ラベンドラさんの号令でリリウムさん達三人が招集され。

 俺のスマホから流れる、餃子の皮の包み方動画を鑑賞のち、作業開始。

 餃子の皮を持ち、スプーンでタネを掬って皮に乗せ、指先を水に浸して皮の縁に塗り、皮を密着させ、折ってヒダを作る。

 っていう作業を俺とガブロさんで仲良くやってたら、


「結構難しいですわね」

「五個も同時にするからだ」

「お前たち、形が崩れているぞ!!」


 このエルフ共ときたら、空中に全部浮かせて同時に五個とか並行作業してやがった。

 ズルすぎる。俺にも魔法を使わせてくれよ……。


「あ、中にチーズを入れた奴も作りましょう」

「いいですわね!!」


 というわけでとろけるスライスチーズを折りたたんで四つに分割し、タネに仕込む作業も同時開催。

 まぁ、エルフの魔法で全部やってもらったんですけど。

 というわけで出来上がった餃子たち。

 延べざっと三百個。


「皮が足りなくて包めなかった具はどうする?」

「そのまま焼いて美味しいんで、餃子と一緒に焼いちゃいましょう」


 なお、皮が足りなくなった模様。

 張り切ってタネを作り過ぎちゃったね。

 まぁ、割とよくある事だし、タネが残る分にはそこまで困る事も無い。

 ……あ、むしろタネは持ち帰り用にしちゃうか。

 わざわざ餃子と一緒に食べなくちゃなんて決まりはないわけだし。


「それで? 焼いていけばいいんだな?」

「お願いします」


 というわけで取り出したるはホットプレート。

 これなら、焼きながら食べられるし、フライパンより並べられる数も多いし。

 何より、ラベンドラさんに任せとくだけで俺も食べられるし。


「スープだけ用意しますね」


 というわけで、俺はさっさとスープだけ作りましょ。

 ケトルでお湯を沸かし、沸いたお湯を鍋に入れまして。

 人参玉ねぎもやしニラ。こいつらが既に刻んで入れられてるスーパーのスープ用袋詰め野菜をぶち込ーみ。

 卵を溶いて回し入れたら、味覇……っ!! 二度目の登場……っ!!

 を、溶いて塩コショウ振って完成っと。


「カケル、水と蓋を」

「ほいほい」


 ホットプレートの餃子も蒸しの工程に入ったようで、言われた通りに水と蓋とを渡しまして。

 ジャワ~~! っと耳に心地いい蒸し焼きの音を聞きながら、ご飯をよそい、タレ用の小皿を配りまして。

 胡椒、酢、ポン酢、醤油があればいいか。

 味が濃そうだから何も付けなくてもいけそうだけど。


「よし、出来上がりだ」

「「おお~~~」」

「皮から中の具の赤さが透けて見える……」

「我慢ならんから食うぞい!!」

「待て。カケル、餃子を乗せる皿を」


 先走りそうになったガブロさんを制止し、ラベンドラさんがお皿の要求。

 というわけで、焼き上がった餃子を乗せるお皿を人数分渡すと。

 リリウムさんの魔法により、餃子は宙を浮いて自らお皿に着地。

 ヘラとかフライ返し要らずじゃん。

 便利すぎる。


「それでは、いただきますわ!」

「いただくぞ!」

「いただくわい!!」


 で、満を持していただきますを宣言し、餃子に箸を伸ばす三人。

 あれ? ラベンドラさんは? と思って見て見たら、空いたホットプレートに餃子を敷き詰める作業をしてくれてた。

 ありがとう、ラベンドラさん。

 ――というわけで、いただきます!!

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