第385話 ステイステイステイ
紫の魔法陣から現れる、ほくほく顔の『夢幻泡影』。
神様が言ってた通り、宝石ギッシリのミミックとエンカウント出来たんだろうなぁ。
「なんか、宝石がギッシリ入った宝箱を手に入れたみたいな浮かれ具合ですね?」
「分かるのか!?」
チッチッチ。
分かるんじゃない、知ってたんだ。
「……なるほど?」
「という事はカケルの行いのおかげ?」
「となると神様を巻き込んでの事じゃな?」
まぁ、マジャリスさんだけだね、驚いたの。
後の三人は早々に正解に辿り着いたよ。
「正解です。ちなみにどんなことか分かります?」
「無理では? ……いや、そうでもないか」
「神様の事じゃからワイン関係じゃろう?」
「新たなワインの種類か……いや、製法の開示か?」
「材料という線もある。最近蜜のようなブドウを食べただろう?」
……にじり寄られてますけど。
というか、神様関連=ワインの図式がもう確定なの笑っちゃうんすよね。
(別にいいじゃろうが。わしの唯一の楽しみじゃぞ)
別に悪いとは言ってないじゃん。
あと、この世界の神様にもお酒をお供えするって習慣はあるから気にする事じゃありませんよ。
お神酒って言うしね。
「分からん」
「情報が足りなさすぎる」
「まぁ、ですよねー」
なお、四人はゴーレムの土がランクアップしたという答えには辿り着けなかった模様。
むしろ辿り着いたら怖いけど。
「一旦庭に来てもらえます?」
「??」
というわけで、見た方が早い。百聞は一見に如かずって事で、庭へとご案内。
「餌として現代の土を与えたらランクアップしたらしくて……」
「ンゴ♪」
ランクアップした上機嫌なゴーレムをお披露目したら……。
「……」
止めて! 無言で魔法陣出現させるのやめて!!
何する気!?
「カケル、どけ」
「そいつ連れてけない!」
「こうなった原因を渡しますから落ち着いてください!!」
「……」
……ふぅ。
危ない危ない。
有無を言わせず向こうの世界に持っていかれる所だった。
……あれ? 回収して貰った方が良かったのでは?
「あ、やっぱ持って行ってもらって――」
「ンゴーーッ!?」
あ、ダメだ。
ゴーレムが、この裏切り者! みたいな目でこっちを見てくる。
「やっぱなしで!」
そんな目で見ないでくれ……。
持って行っていいなんて言わないから。
だからリリウムさん? もう既に半分くらい魔法陣に取り込まれてるゴーレム、戻してもらっていいです?
「それにしても……たった一日で土がランクアップするとは……」
「しかも無属性化してますわよ!? 農業ギルドが喉から手どころか腕とか肩出して欲しがりますわよ!?」
怖すぎるだろその絵面。
というか、喉から腕とか肩とか見えたらそれはもう食ってるんよ、人を。
ぺってしなさい! ぺって!
「いやほんと、何を与えたんじゃ?」
「こっちの世界で普通に手に入るものですよ……。腐葉土と言って、土の状態を改善してくれる堆肥ですね」
調べて知ったんだけどね? 腐葉土自体には、栄養とかってのは無いらしい。
ただ、土の状態を良くすれば、それがそのまま植物の成長に繋がるんだって。
だから腐葉土を混ぜた土で育てた植物は育ちが良くなるんだってさ。
「それだけでこのゴーレムの状態に?」
「後は抗菌土と言って、清潔な土も与えましたね」
異世界に細菌なんて概念無いっぽいし、説明に困るな。
金属イオンをコーティングして~とか、絶対に翻訳魔法さん困るだろうし。
というわけで広く取れば間違っていないであろう言葉でお茶を濁す。
「なるほど。それが無属性化のトリガーになった可能性があるのか」
んで、ラベンドラさん理解が早い。
「です。ちなみに神様が皆さんに宝箱を与えた対価として……」
「ゴクリ」
「これらの土をお渡しするので、上手い事ワイン作りのブドウの栽培に使って欲しいとの事です」
「……………なるほどな」
そもそもブドウ作りに腐葉土とか使うのかは知らん。
でも、試してみる価値はありそうよね。
「適当にダンジョンで手に入れたという事にするか?」
「『無頼』はともかく『ヴァルキリー』に確認が行ったら厄介じゃぞ?」
「むしろ神様にお願いしてこれらの土もダンジョン内に隠してもらいます? で、手に入れたら不自然じゃないでしょう?」
「それもそうだな。カケルにお願いしておいてもらおう」
「宝箱に土が入っているのも不自然極まりない。一部をマンドラゴラの群生地にして、その土壌にこれらの土を使っていてもらおう」
「それ、マンドラゴラが新種になりませんこと?」
なんて話をしてますけども、神様的に大丈夫です?
(ん? 別に問題ないぞい。ただ、ハイエルフの言う通り新種のマンドラゴラが出来そうじゃわい)
強さ皆無で逃げ特化のレアなマンドラゴラに出来たり?
(可能じゃ。……そうじゃな、戦闘能力一辺倒に進化させてもつまらん。魔力ステルスやら超スピードあたりを付与させておくか)
……やだなぁ、透明になるマンドラゴラとか。
あと、超スピードで逃げるマンドラゴラとか。
……あの四人なら苦も無く捕まえそうだけど。
「と、はしゃいでいて忘れていたがカケル」
「なんでしょう?」
「食事の準備は?」
「もちろん、すぐにでも」
というわけで難を逃れたゴーレムに手を振り、庭を後にして。
これから食事タイムですわ。
……ちょっとゴーレムの体が削れてたりしたけど、多分見間違いだな、うん。
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