第384話 この人でなし!

「……出来たりしない?」


 ゆで卵の為に剥いた、リボーンフィンチの卵の殻。

 それらを集め、俺は庭のゴーレムの所へ。

 ほら、家庭菜園で卵の殻を肥料にする、みたいなのあったじゃん?

 まぁ、調べたら卵の殻をそのままぶち込んでも肥料にはならないらしいけど。

 酢に付けて、希釈して使うんだって。

 んでまぁ、土が餌のゴーレムなら、土で分解出来る卵の殻も食べれるかなって。

 というわけで口の中に押し込んだんだけど……。


「やっぱり嫌か?」

「んご」


 ……。

 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!

 アイエェェェェ!? 喋れる!? 喋れるナンデ!?


(お主が与えた土がゴーレムの進化を促したんじゃろうなぁ……)


 神様からありがたいお告げが来ましたわね。

 それはそうとして、土食べるだけで進化するの? ゴーレムって。


(普通はせんぞい。ただ、この世界のお主が与えた土がこっちの世界では普通ではないというか……)


 腐葉土と抗菌土ですよね? 異世界には無い?


(腐葉土とかいう土は、こっちの世界だとマンドラゴラが大喜びじゃろうな)


 まぁ、栄養満点の土ですしね。


(抗菌土という方は、あらゆる場面で使われるじゃろう)


 子供の砂遊び用ですけど?

 んでもまぁ、その両方を食べさせた結果、言葉が……。

 待て? そもそも庭に誕生した時に喋ってなかったか?

 うぼあぁぁぁぁ! って。

 ほな元から喋れたのか。

 驚いて損した。


「ん~……卵の殻だけじゃ嫌?」

「んご」

「土と混ぜてもダメ?」

「…………んご」


 今めっちゃ葛藤してなかった?

 つまりは土と混ぜたら考えるけど嫌だったってこと?

 えぇっと、確か抗菌土の方が食い付き? が良かったから……。


「抗菌土でもダメ?」

「――――ン…………ゴ」


 もう一押しか?

 んでも他に土は思い当たらないし……。

 いや、むしろ肥料ならばあるいは?


「ちょっと待ってて」


 ふと思いついたので車を走らせホームセンターへ。

 買うのは液体肥料。

 希釈して使う奴ね。


「よし、まずはしっかり用量を守って……」


 もうほんのちょっと。ほぼ数滴レベルの液体肥料をしっかり希釈し、ゴーレムの口の中へ。

 そのまま体に振りまいても良かったんだけど、土を食べるなら肥料を飲むんじゃね? という考えで一旦ね。

 なお、その予想は当たる模様。


「ンゴゴ~~~!!」


 と、突如叫んだと思ったらコップに入れてた液体肥料は消え、ついでに卵の殻も奇麗さっぱり無くなっていた。

 ……マジ?

 出来るんだ。すご。


「ンゴ♪」


 というか、液体肥料どんだけ美味しかったんだよ。

 あと、肥料だけだと心配だから腐葉土も食べときなさい。

 もう感覚がほぼペットのそれなんだけど……。

 まぁ、いいか。うん。


(あー……)


 ? どうしたの神様?


(その……なんじゃ。あの四人が来たらゴーレム解体されるかもしれんぞい?)


 ほわい? 一体なぜそんな事を?


(ゴーレムのランクが上がっとる。そうなると体の土が上等なものになる)


 ……つまり?


(こっちの世界では難しい事なんじゃよ。土のランクを上げるという行為は)


 んでも土食わせて肥料飲ませただけですよ?

 ……自分で言っておいてなんだけど、字面だけ見ると虐待なんだよな。

 相手ゴーレムだけど。


(いや、だからわしも驚いておる。こんな簡単に土のランクを上げられるとは……)


 肥料と腐葉土で簡単に上がっちゃったんだけど……。

 そんなに異世界だと土のランクって奴は上がらないものなのか。


(まず肥料じゃがほぼほぼ魔物の素材じゃ。入手の難易度もそうじゃが、土とその素材の魔物の相性もある)


 相性? 属性とかってこと?


(ほぼそうじゃが、土が取り込んでおる魔力との相性じゃな。当然育てるマンドラゴラもその魔力との相性で決まるんじゃが……)


 じゃが?


(何をすれば無属性の土になるのか……)


 無属性の土……。

 それはただの土では?


(否。そもそもゴーレムは地属性の召喚生物じゃ。ゆえに、ごく自然にその属性も地属性となる)


 まぁ、地属性じゃないゴーレムは一応ゲームの知識としてはあるけど、基本的にゴーレムは地属性だろうし。


(それが、まるで属性だけ削ぎ落したみたいな感じじゃな。今のそのゴーレムは)


 属性だけ削ぎ落した……?

 なんで?


(知らん)


 んでも、多分だけど食べさせたものが原因よね?

 ってなると、属性が消えそうな食べ物……。

 ちなみにリボーンフィンチの卵の殻は何属性です?


(火じゃな)


 さよか。

 火と土で相殺したとか……無いか。

 後は腐葉土と抗菌土……。

 いやまさかね? 抗菌土が属性を洗い流しましたとかある?

 そうなると属性とは菌の一種である、みたいな感じにならない?


(分からんが……少なくともこっちの世界では喉から手が出るほど欲しい土じゃぞ、そのゴーレム)


 ……仮にですよ?

 この土でブドウ作って、ワインにしたりしたら……?


(徴収してよいか?)


 鬼ですか?


(神じゃが?)


 ……土と肥料をあの四人に渡すので、それを農業ギルドに持ち込んでもらいましょう。

 そうすれば、異世界でもこのゴーレムと同じ品質の土が出来上がるはずでしょう?


(……乗った)


 見返りに、何かください。

 割とバカにならない出費なんで、土。


(ふむ……。奴らの手にする宝石量を増やすとしよう。あのダンジョンは……ふむ。三階層下に宝箱を動かして……ミミックか、邪魔じゃな。宝石箱に変換……と)


 なんか、思考垂れ流しでダンジョンクラフトし始めたんだけど神様。

 いいのか? それで?

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