第18話 酢ブタノヨウナナニカ

 う~む……。

 今夜は何を作ろうか。

 薄切りにしてしょうが焼き……にするか。

 パンに挟んでも合うだろうし、タレをちょっと味濃いめにして一味マヨかけて食おう。

 なんて考えながら仕事をしていると、


「臥龍岡! 飯行くぞ!!」


 と、先輩に誘われた。


「あ、行きます!」


 とりあえずキリのいい所で仕事を切り上げ、先輩と食事へ。

 今居る会社から徒歩五分。

 和洋中なんでも揃ってる定食屋があって、基本そこで昼ご飯を食ってるんだけど。

 値段の割に量が多く、何より提供が早い。

 社会人の味方なその定食屋は俺も誘ってくれた先輩も常連というわけだ。


「今日は何食おうかな~」


 と先輩がメニューを広げて思案中。

 俺も同じくメニューを広げてたんだけど……。

 しょうが焼き……美味そうだな。

 さっきまで今夜はしょうが焼きにするかとか考えてたせいか、メニューにある生姜焼き定食って文字だけでうまそうに思えてくる。

 ……いやいや、ここでしょうが焼き食ったら夜のメニュー考え直しじゃねぇか!

 と自分を叱るも……美味そうなんだよ。


「俺は唐揚げ定食にするけど、臥龍岡は?」

「俺はしょうが焼き定食ですかね~」

「うい。んじゃ呼ぶぞ? すいませ~ん!!」


 誘惑には……勝てなかったよ。



 ふぅ。

 買い物終えて、無事帰宅。

 いやぁ、まさか夜のメニューを繰り上げて昼に食う事になるとは。

 美味しかった……しょうが焼き。

 追加でマヨネーズを頼んで、卓上の一味も振ってしっかり一味マヨまで添えました。

 で、じゃあ夜のメニューは? ってなるんだけど、定食屋で垂れ流されていた昼のバラエティ番組でさ。

 見つけたのよ。夜のメニュー。

 なんか、大盛り特集みたいなのやってたんだけど、中華屋さんが紹介されててさ。

 そこで、こぶしくらいの大きさの豚肉がゴロゴロ入った酢豚が出てきてさ。

 ピンと来たよね。これだ!! って。

 というわけで今夜は酢豚です。

 材料は既に購入済み。

 というわけで番組に倣ってブタノヨウナナニカ肉を成形。

 こぶし大だと流石に大きすぎるから、それの半分ほどの大きさに切り出して。

 切った肉はボウルにぶち込み、酒、醤油、みりんで作ったタレに浸しておく。


「とと、ご飯炊かなきゃ」


 毎度忘れがちなご飯をここで準備。

 米を研ぎ、炊飯器にセットしてスイッチオン。

 次に野菜……だけど、皮向いてほぼほぼ乱切りでいいからそこまで時間掛からんのよね。

 玉ねぎ、にんじん、ピーマンをそれぞれ皮剥いたり、種取ったりして乱切り。

 肉がある程度デカいから、野菜が多少デカくても相対的に普通に見える。

 んで、今のうちに甘酢あんの準備。

 醤油、みりん、酒、砂糖に、本日は黒酢を買って来てみました。

 こいつらをボウルにぶち込んだら最後に片栗粉を入れてとろみをつける。

 間違ってもダマになって貰ったら困るから、親の仇のように混ぜ合わせましたわよ。

 片栗粉のダマって名状しがたい触感してるよな。

 妙にプルプルしてるのに変に弾力あってさ。


「邪魔するぞい」


 下ごしらえはこんなもんかと思ったら、ちょうどよく四人が登場。

 お待ちしてました~。本日のメニューは酢ブタノヨウナナニカです~。


「既に調理が始まっているのか?」

「違うな。調理の前準備という所だろう」

「ラベンドラがうるさく言いますものね。料理は準備が一番大事ですと」


 お、ラベンドラさん分かってるじゃん。

 ……って、料理人なら当たり前か。

 食材の良さを引き出すために、ひいてはうまい料理を作るためには下ごしらえや下処理が一番大事なんだよな。

 魚とかイメージすると分かりやすい。

 下処理とかしないと生臭さが抜けなかったりするからね。


「野菜は適当な大きさに適当に切って、肉は切った後に下味をつけてます」

「浸している液の材料は?」

「醤油、みりんと酒ですね」

「酒を飲まずに料理の下準備に使うじゃと!?」


 ああ、ラベンドラさんに説明してたら飲兵衛が食って掛かってきた……。


「使ったのはそういう用途に使う為に作られた酒ですよ。飲めない事はないと思いますが、飲んだことありませんし、おススメしませんよ?」

「むぅ……」


 実際料理酒って美味いのか? わざわざ料理酒飲むくらいなら、俺は普通に日本酒買うけど。


「それで? こっちのタレは?」

「酒と醤油、みりんに砂糖。それから黒酢が入っていて、片栗粉でとろみをつけています」

「ふむふむ、なるほどなるほど」

「じゃあ、今から調理していきますね」


 そう言って俺は、ラベンドラさんに観察されながら。

 酢豚……でいいよね? 酢豚の調理を開始するのだった。

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