第231話 察しが良くない翔君

 さて、と。

 一体いつから、私が普通のお茶漬けを作ると錯覚していた?

 あれだけ異世界食材で餌付けされた俺の身体が、今更現代のありふれた食材じゃあ満足出来ねーんだ。

 というわけで取り出したるは――今日の朝食の為に切り出して残しておいたウマイウナギマガイ!

 こいつを使って最高の朝食のお茶漬けを作っていこうと思うわけ。

 いざ!


「まぁ、お茶漬けの素は使うから特に面倒な事はしないんだけども」


 流石にね? 朝から出汁引いたりはしないよ?

 というわけでケトルでお湯を沸かしまして。

 お湯が沸くまでに薬味の準備。

 アサツキをみじん切りにして、冷蔵庫からチューブわさびを取り出して準備完了、と。

 お茶碗にご飯をよそい、お茶漬けの素をパッパ。

 そしたらウマイウナギマガイを湯引きをしまして~。

 氷水にさらし、しっかり水気を切ってと。

 一口大の大きさに切ったら、ご飯に乗せて。

 ここで熱湯をしっかりウマイウナギマガイにかかる様に注いで完成。

 ――な訳ねぇよなぁ!?

 ここで刻み海苔と刻んだアサツキ、ワサビを乗っけて完成じゃおらぁっ!!

 ウマイウナギマガイのお茶漬け。ご機嫌な朝食だ。


「不味いわけが無いんだから」


 ワサビを少し溶かし、ウマイウナギマガイの脂っぽさを消しつつお茶漬けを掻っ込んでく。

 海苔の風味も手伝って、非常にサッパリとした後味なり。

 ワサビのツーンとする風味が、寝起きの頭にダイレクトアタックですわ。

 いい目覚ましですこと。

 湯引きした事で余分な脂も流れてるのがいいな。

 身のうま味や脂の甘みはちゃんと残ってるし、こうして食べるのも美味い。

 ……まぁ、もう残りのウマイウナギマガイは全部ラベンドラさん達に渡しちゃったんですけど。


「ご馳走さまでした」


 大変美味しゅうございました。

 さて……と。

 それじゃあお弁当を作っていきましょう!!

 もうね、作る段階からテンション上がるね!

 という事でまずは早速肉!!

 フライパンに牛脂を転がしその間にデリシャスビーフイッシュを切っていく。

 まずは薄ーくスライス。

 その後に焼き肉の厚さを真似してスライスっと。

 テンダーロインの方も同じくね。薄切りにはしないけど。

 んで、焼き上がったらすぐにご飯に乗せたいから、先にご飯をどか弁に盛りまして。

 ――ん? 物凄く違和感があるが……?

 ご飯……弁当の中に入ってるよね? なんか、重さが変わらないような……。

 あ、やべ。フライパンが放置するなって呼んでる。

 すぐ行きますよッと。

 十分に熱されたフライパンに、薄切りビーフを乗せてやれば。

 一瞬で色が変わり、肉汁を周りに溢れさせながら。

 色がすぐに変わるから、速攻でひっくり返し。


「よし」


 焼き肉のタレを投下し、絡めて焼く事数秒。

 火が通ったのを確認したら、どか弁のご飯の上へ。

 やっぱり軽いな? ……気のせいじゃないよな?

 なんか腑に落ちないものの、出勤時間も迫っているので、ここで足を止める訳にもいかず。

 焼き肉の厚さに切ったデリシャスビーフイッシュとテンダーロインの両方をフライパンに並べ、焼いてる間にどか弁にご飯をよそう。

 これで、ご飯とご飯の間に薄切りデリシャスビーフイッシュを挟まった焼肉弁当が出来るって寸法よ。


「やっぱり重さ変わってないよな?」


 もうこの辺から疑問が確信に変わったよね。

 絶対あの人たちが何かしたんだって。

 まぁ、重さが変わらないだけなら可愛いもんか。

 可愛いか? 物理法則とか色々無視し過ぎてない?

 ま、魔法ってスゴイナー。


「おっと、焼けた焼けた」


 というわけでご飯の上に乗せる肉も焼き上がったので、それらをご飯の上に。

 ちなみにご飯にはきざみのりを敷き詰めております。

 で、ここで終わらないのが俺なんですわ。

 人参、玉ねぎ、ピーマンを、肉を引き上げたばかりのフライパンで炒めまして。

 肉から出た脂とかうま味を野菜にまとわせてっと。

 当然のように隙間が空いてるどか弁に詰めていくっと。

 あとはフライパンに焼き肉のタレを流し入れ、肉の脂と合体させた特製タレへと変貌させて。

 ご飯に満遍なくかかる様に回しかけて、完成!!

 俺特製デリシャスビーフイッシュ弁当の完成!!

 もう弁当箱の重さが変わらない事は気にしない方向で。

 俺に何か不利益があるわけでもないし、多少はね?

 んじゃあ、この弁当を楽しみに、お仕事に行ってくるわぞ~。

 早く夕方にならんかなぁ。



「なにこれ……」


 えー、お昼です。

 先輩から、


「臥龍岡、滅茶苦茶豪華な弁当持って来てるな!」


 とか言われたんだけど、ごめんなさい、それどころじゃないです。

 あの、未だに弁当に詰めたご飯とか、肉とか、野菜から湯気出てるんですけど……。

 ただのどか弁だよね!? 保温機能とかないはずだよね!?

 ばあちゃんが使ってた弁当箱だから、時代的にもそんな機能は無い。

 というか、ただの箱でしかないはずなんだが?

 これもあの人らの仕業か? 重さが変わらない? しかも温度が詰めた時のまま保たれる?

 ……常温解凍の冷凍食品が使えんやんけ! おま、どうしてくれるんだお前!!

 あっつ、うっま。

 美味いけど!! ありがたいけど!! 時には不便にもなるぞこの機能!!

 こりゃあちょっと、今夜は四人に説教ですかねぇ……。

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