第225話 前菜の現代肉
「カケル、この肉は?」
「サガリと言う部位で……一応は内臓です」
「内臓っ!?」
「そ、そんなものまで食べるのですか?」
あー……。
海外の人でも内臓って言うと拒否反応示す人居るよね。
それ言うとタンの時点で嫌がるって話だけども。
「何と言うか……エルフってしゃっくりとかします?」
「たまにあるな」
「魔力切れが主な理由になるが、エルフもしゃっくりをするぞ」
そうなのか。
初耳だわ。
この外見でヒクッ! とか言ってんの? 何それ見たい。
「ええっと、そのしゃっくりって、内臓の一部が痙攣することで起こってるんですけど」
「そうなのか!?」
「初耳ですわね」
「人間ではそうなのでは? エルフだとまた別の要因がある様に思える」
確かに。
横隔膜の痙攣が原因でしゃっくりを起こすの、人間だけかも。
……本当にそうか? 他の動物も同じ理由だったような……。
まぁ、いいか。
「とりあえず、その内臓がこのサガリって部位になります」
「……美味いのか?」
「滅茶苦茶美味いです。柔らかい肉質とジューシィな肉汁がたまりませんよ?」
「ゴクリ」
と言うわけでお次に焼くのはサガリなり。
サガリを焼くならサンチュと、その他調味料などもご一緒に、と。
「これらの物は?」
「焼けた肉を巻く野菜と、そこに乗せる薬味や調味料ですね。まずはタレで食べて貰って、そこから好みの物を乗せて包んで食べてください」
当然ラベンドラさんが興味を持つから、ざっと説明。
そうこうしている内に、サガリが焼き上がりまして。
……こいつ、見た目だと分かりにくいんだよな、焼けたの。
ホルモン並みに悩む部位だと思うわ。
「焼けた肉をサンチュに乗せて、巻いて、食べる!」
で、百聞は一見に如かずってことで、みんなの前で実践して咀嚼。
う~ん。美味い。
さっぱり瑞々しいサンチュと、コクて濃厚なタレ。
その奥からやや遅刻気味に顔を出す肉汁と肉本来のうま味ね。
もう最高。
白米が進みますわ~。
「いけますわ!」
「これが……内臓?」
「全然臭みが無いし、普通に美味い……」
「さ、酒が飲みたくなるわーい!!」
お? いいのかな? そんな事を言って。
もちろんあるぞ!! 焼き肉に酒無しは大人に対する拷問だからな!!
……あと、ちょっと試したいこともありましてね。
「ありますよ、酒」
「なんじゃと!?」
「ビールとウイスキーがあるんでハイボールが出来ますけど……」
「むむむ……ビールじゃァ!!」
何がむむむだ。
さてさて、本日のビールは金色ラベルのプレミアムなやつでござい。
しかも500ml缶。 ま、たまにはね。
「むほほー! ビールじゃビールじゃ!!」
「はぁ……」
「飲み過ぎるなよ?」
「ドワーフじゃぞ? 飲み過ぎるという概念は無いわい」
なんてはしゃいでますけど?
まだ俺のお酒フェイズは終了してないぜ!!
「ちなみに、肉料理に合いそうなワインもご用意いたしました」
「何!?」
「飲みますわ!!」
「コクコク」
と言うわけで、冷蔵庫でキンキンに冷やしてた一本をば。
なんかね、美味しい飲み方でよく冷やすってあったのよ。
それに倣ったわけ。
「ワインに詳しくないんで、合わなかったらごめんなさい」
「基本赤なら肉には合う。大丈夫だ」
「こちらのワインの品質を考えたら、その謙遜も嫌味になりかねませんわよ?」
「ワイン……」
待ちきれなさそうなので、ワイングラスをそれぞれ配布。
で、俺にも用意しまして、と。
本日のワイン、ランブルスコって種類のアマービレ? って奴を買って来てみました。
はい、懺悔します。最近見た動画で美味しそうに飲んでた配信者がいたんです。
それで飲みたくなったんです、はい。
「深紅と言うよりは華やかな赤」
「香りは……この間頂いたこの世界の果物のような爽やかさですわね」
「よく冷やされている。香りはやや閉じているようだがな」
この人らのワイン評価、ソムリエ味があって怖いんだよな。
ま、大丈夫だろうけど。
「次の肉、焼けたぞい」
なおワインのやり取りをしている間にガブロさんが次のお肉を焼いてくれてた。
出来るドワーフは違うね。
……もう二本目に突入してるけど大目に見よう。
「こちらのお肉は?」
「カルビですね。この世界では人気かつ一般的な部位になります」
何だかんだ焼肉行ったら絶対に頼むし、何なら一番頼んでるまである。
なお、最近はやや重たくなってきた模様。
いいかい学生さん。油物をな、油物を今のうちにいっぱい食べておきなさい。
歳重ねると思うように食べられなくなっちゃうから。
「これもタレか?」
「ですです」
焼いてもらったお肉をタレにつけ、いざ口の中へ。
肉厚かつジューシィ。あと、脂が美味い。
ここに白米! ではなく、赤ワイン!!
「……あ、美味い」
こう、恥ずかしながらあまりワインとか飲まないからさ。
マリアージュって言うの?
ワインと一緒に食べ合わせた相性的なの。
全然知らなかったんだけど、これだけは言える。
この赤ワイン、肉に合う。
「期待以上の品質だな……」
「口の中の肉のうま味と、ワインの果実味が物凄くマッチしますわね」
「冷えて香りが閉じていると言ったが、冷えているおかげでこのフレッシュな果実感が出ているのだろう」
「微炭酸なのもいいですね。口の中の脂をまとめて洗い流してくれてる感じで」
このワイン、いわゆるスパークリングワインなんだけど、炭酸がそこまで強くないのよ。
全然焼肉の味の邪魔をしない。
いや、マジで美味いな。
「これは少し残して我々の世界に持ち帰ろう」
「神への献上品、ですわね」
「この品質だ。諸手を挙げて喜ぶに違いない」
「そんな高いワインじゃ……」
いつの間にかこのワインを神に捧げる話になってるし。
いいのか? デパートで買いはしたけど別に高くなかったぞ?
他界の基準によるかもだけど、ぶっちゃけウイスキーのボトルと大差なかったぞ?
「値段が張らないのにこの美味しさなのだ。十分献上に値する」
「下手に高級な方が面倒ですわ。毎回それを所望されてみなさいな」
「というか、手軽に買えるのか? この美味しさのワインが?」
あ、やべ。要らん情報だったかも。
値段に関しては次から言わないようにしよう。
「次も焼けたぞい」
「に、肉焼けたんで食べましょ!」
ナイスガブロさん、助かった!
……なんでもう三本目を開けてるんです?
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