第365話 知らん知らん知らん
さて、デザートなわけだ。
今日はデパートで普段買わないようなお高めのジャムを買って来た。
もちろん今が旬の果物ジャムを中心に。
更に冷凍庫にはバニラアイスもあるし、生クリームホイップだって買って来てある。
後は……サワークリームなんかも買って来てみた。
という事で本日のデザート、お好みパンケーキなり!!
「カケル、デザートだが」
「はい。今から焼きます」
そんなわけで、ラベンドラさんから声をかけられたからそう返したんだけどさ。
「作ってみたい物がある。私に任せて貰えないだろうか?」
こう言われちゃった。
……まぁ、ジャムはそこそこ日持ちするし、アイスや生クリームは冷凍庫にぶち込んでるから悪くならない。
サワークリームもそんなすぐ悪くなるものじゃないし、大丈夫でしょ。
ホットケーキミックスなんて悪くならないしね。
「構いませんよ、お願いします」
「実は『無頼』から酒のお礼にと渡された食材があってな」
「おお! あれか!」
「カケルにも分ける、と言っていたのでしたわね」
ん? ……食材を分ける?
既にリボーンフィンチの卵貰ってますけど?
あと、こいつ、分身するせいでほぼ無限に食べられちゃうんですけど?
そこに追加食材? 一体何を?
……んでもデザートに使うような食材か。
だったらまぁ――なんて、思っていた時期が僕にもありました。
「よいしょっと」
デン!!
ラベンドラさんが掛け声を出して取り出したその食材は、多分きっと恐らくは隕石。
うん、見た目的に間違いない。
参ったな、隕石を食べるのは某ピンク玉以外知らないぞ……。
「こいつは『侯爵芋』と言ってな」
なんて? なんかさも当然のように翻訳されてるけど、知らないからね? そんな芋。
俺が知るのは男爵まで。男爵芋なら知ってるよ。馬鈴薯でしょ?
「歩行種ではないマンドラゴラの大群を率い、とあるダンジョン内を占拠しとったらしい」
「かなり統率が取れていて、倒すのに苦労したそうだ」
指揮官タイプかぁ……。
あ、確かに見上げたら目みたいなところあった。
「追い詰めても部下のマンドラゴラに時間稼ぎをさせ、その間に逃げおおせるらしくてな」
捨て
壮絶なトカゲの尻尾切り作戦ね。
「一週間追い続けてようやく倒したらしいぞい」
逃げる方も逃げる方なら追う方も追う方かな?
一週間も追い続けるの、普通に凄ない?
「鬱憤が溜まっていたのか、処理の仕方が雑過ぎるがな」
「まぁ、思う所はあるが、わしのように解体士というわけでは無いからのぅ」
「カケル、安心して欲しい。カケルに渡すところは痛みなどの問題が無い所を渡すから」
あ、心配してないです。
と言うか、色々と入って来てないです。
……じゃがいも、ジャガイモでいいんだよね?
何作ろうかな……。
「よし、というわけでポテトパンケーキを作っていくぞ」
あ、そうか。先にラベンドラさんのデザート調理があるんだった。
……んで? ポテトパンケーキとは。
ちょっと……いや、かなり気になるぞ。
「まずは材料から」
という事で侯爵芋に包丁を突き立て、今回使う分をくり抜いていく。
って、ラベンドラさんもパンケーキ作るのかよ。
だったら買って来たジャムとかアイスとか使えるじゃん。
「こいつをすり潰し、別で細切りにする」
で、切り出した侯爵芋を細切りとすり潰すのね。
それでそれで?
「追加で玉ねぎ、こっちもすり潰す」
ちなみに磨り潰すとか言ってるけど、魔法に任せて空中でやってらっしゃる。
俺は素直にフードプロセッサーを使うかなぁ。
「フライパンに油を引き、両方を焼いていく」
すり潰した侯爵芋と玉ねぎを混ぜ合わせ、油を引いたフライパンに落として伸ばしていくラベンドラさん。
細切りの方は、フライパンに落とした後に上からすり潰した玉ねぎをソースみたいにかけてたね。
「しっかり焦げ目がつくまで焼き、ひっくり返して同様に焼けば完成だ」
焼けた面に塩を軽く振って完成か。
なんか、思ったよりもパンケーキ感ないかもしれない。
いや、見た目は似てるっちゃ似てるけど。
全然粉を使わないしね。
「後はここに果実を添えれば、我々の世界の定番デザートの出来上がり」
「あ、定番なんだ」
そう言えば、あまりラベンドラさん達の世界のデザートの話聞かなかったなぁ。
こういうのが定番なのね?
「定番と言っても、毎日のように食べられるのは一部の貴族位なもので、一般的な冒険者ならば月に一度くらいの頻度だろうな」
「今月も生き延びた事を祝すご褒美とかですわね」
……そりゃあそうか。
ダンジョンとか、どう考えても死と隣り合わせだろうしなぁ。
『夢幻泡影』の四人がバグってるだけで、普通は生活の為に大変な思いしてるんだろうなぁ。
「……カケル」
「はい?」
なんて考えてたら、マジャリスさんから声が掛かった。
そして、何かを訴える目。
あ、これ把握デス。
お前は次に、アイスを寄越せという。
「もし無かったら流して欲しいのだが、この間使ったバニラアイスは残っていないか?」
ほらね。
まぁ、何となく考えてることは分かったよ。
このポテトパンケーキに乗せたいんでしょ?
任せたまえ。
「実は、俺も今日のデザートはパンケーキの予定でしてね?」
ジャムをドン。
目を輝かせるマジャリスさん。
「こうして、色々とトッピング出来るものを買って来てたりするんです」
サワークリームドン!
口を手で押さえるリリウムさん。
「もしよければ、ポテトパンケーキに合わせてみませんか?」
バニラアイスドン!
キョロキョロと落ち着きが無くなるガブロさん。
「賛成!!」
「異議なしですわ!!」
というわけで最後に生クリームをドン!!
そして、ついでに蜂蜜なんかも持って来ちゃいまして。
「じゃあ、食べましょう」
「「いただきます!!」」
全員で目を輝かせながらの大合唱をするのでした。
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