突撃！ 隣の世界の晩御飯！

第261話 ワイワイガヤガヤ

「本当に野菜ばっかだね」

「だからそう言ったじゃん」

　テーブルに並んだ料理の数々を見て、姉貴が一言。

　電話でちゃんと伝えてたはずなんだが？

「でもどれも美味しそうですわよ？」

「美味しそう、ではなく確実に美味いだろう」

　ま、ちゃんとリリウムさん達がフォローしてくれたんですけどね。

「まぁ、食べずに文句言うのも違うし……。まずはキャベツからいただきますか」

　と、初めから文句言う前提の姉貴が手を伸ばしたのはやみつきキャベツ。

　そのお味は……？

「え、美味しい」

　だろう？

　というわけで俺もパクリ。

　うん、美味い。

「野菜の味が濃く、それに調和するように混ぜられた塩昆布の旨味がたまらん」

「ごま油の香りとコクも素晴らしいですわ」

「軽く食べられて食欲が増すような料理。前菜にピッタリだな」

「これだけで酒が飲めるぞーい！！」

　四人にも好評ですわね。

「まだまだマンドラゴラの頭葉はあるからお代わりが可能だ」

「すぐ作れるのもやみつきキャベツの利点ですね」

　火を通す必要も無いし。

　……てことはマンドラゴラを生で食ってるのか、やみつきキャベツ。

　そう思うとちょっと尻込みしちゃう感じが……。

「野菜臭くなくて、ホント癖なく食べれるわね」

　姉貴は気にして無さそうだしいっか。

　んでお次は出汁トマト。

「これも前菜か？」

「前菜想定で作りましたね」

「お箸で切るだけでトマトからジュワッと出汁が溢れてきますわ！」

「ありがてぇ……っ！！　キンッキンに冷えてやがる……っ！！」

　あ、翻訳魔法さん定番ネタあざーす。

　ところで、ラベンドラさんにそれを言わせた理由をですね小一時間ほど……。

　そういうネタ台詞はマジャリスさんだって相場が決まってませんでした？

「口に入れ、噛んだ瞬間にトマトの果汁と共に溢れるダシが、口の中を一杯に満たす」

「その旨味が残っとるうちにビールを流し込むともう自然と笑みがこぼれるわい」

「日本のビールより麦の風味が良くて、コクも深いからこういう軽い料理に合うわね」

「トマトの味が強いのも凄いよ。甘さや酸味のバランスが取れてるから、出汁を吸っても自身の味を強調してる」

「冷やしてあるのもいい。冷やされたことでより鋭い味わいに変化しているように感じる」

　さっきまでの喧嘩腰の姉貴はどこへやら。

　たった二品食べただけで、もう満足そうに野菜食ってますわよ。

「次はどれにするか……」

「多くて迷いますけれど、私はこれですわね」

「気になっている唐揚げを貰おう」

「ポテトサラダー」

「わしは人参の奴じゃな」

　で、もうこの辺から早速各々が食べたい物へ。

　俺？　ちゃんとコースの順番守って、姉貴と同じポテトサラダに向かいましたよ？

「このお料理、煮込まれた白菜のとろんとした甘みと、クリーミィな口当たりが最高ですわね」

　リリウムさんが口にしたのは白菜のクリーム煮。

　美味しいよね。一人暮らしだったらメイン料理になるもん。

　豚肉入れてさ、仕上げにチーズを混ぜるんだ。

　米にもパンにも合う悪魔みたいな料理だぜ。

「――肉ではないのにしっかり美味い……」

　ラベンドラさんはブロッコリーの唐揚げをまじまじと見つめながらそんな事言ってる。

　確かに肉でしかから揚げした事無いし、どんな味か気になるな。

　後で俺もしっかり味わうか。

「マヨネーズも合う……。まさかここまでとは……」

　なんて言ってますけど？　ブロッコリーにマヨネーズとか最適解では？

　後はサウザンドレッシングとかね。

「このブッコロリ……まだまだポテンシャルがありそうだ……」

　翻訳魔法さ～ん？　今日はラベンドラさんの翻訳適当すぎやしませんかー？

　なんでそんな物騒な名前になっちゃったんですか～？

「あ、マジャリスさん」

「？　どうした？」

　オニオンスープに手を伸ばしたマジャリスさんに声をかけ、一度その動きを止め。

　とろけるチーズを見せれば、納得したように頷いて。

　焼いたバゲットをマジャリスさんのスープに沈め、上からチーズをかけまして。

「チーズに焦げ目がつく位の火力で炙って貰えます？」

　と聞けば。

「お任せくださいな」

　リリウムさんが横から返事。

　そして、数瞬後には俺の想像通りの綺麗な焦げ目付きオニオングラタンスープに大変身。

「美味そうだ……」

　そうしてスプーンを差し込み、バゲット、玉ねぎ、チーズをバランスよく掬って口に運んだマジャリスさんは。

「～～～♪」

　美味しさからか、スプーンを持ってない方の手でガッツポーズ。

「これ凄いな！！」

　目をキラッキラさせながら二口、三口とスープをスプーンでさらっていきますわ。

　美味しそうに食べるねぇ。

「中のチーズが最高じゃわい……」

　で、こっちは人参餅を食べたガブロさんの感想っと。

　動画で見てずっと作りたかった人参餅。上手に出来てたようで何より。

「人参の変な癖が無く、甘みが強い。そこにバターの塩味とコク、チーズの塩味とコクの合算が凄まじい相性を発揮しとる」

　と言いつつビールをグビー。

　美味しそうに飲むなぁ。

「当然ビールに合う！！　最高じゃわい！！」

　それで思い出したけどワインは？　買って来たんでしょ？

「ポテサラうめー！！　ほんと今までで一番美味しいんだけど！！」

　話聞いてますー？　ワインはどうしたって言ったんだけど？

「あ、うめ」

「でしょー？」

「姉貴作ってないだろ」

　まぁ隣で美味そうにポテサラ食ってたから俺も食べたらさ。

　マジで過去一美味しく出来た自信があるわこのポテサラ。

「ベーコンの塩味とマヨの味がまず最高。そこに炒り卵とびっくりするくらい美味しいじゃがいもの味が合わさってド最高」

　ただの最高じゃない。ド級の最高――ド最高だ！！

「じゃがいも美味いね。このじゃがいもなら粉吹き芋にするだけで美味そう」

　新じゃがのようなもっちり、ねっとりとした食感。

　マヨに包まれているはずなのに、そのマヨからちゃんと抜け出して顔を出すうま味。

　ジャーマンポテトとかでもくっそ美味いだろうな。コロッケも間違いなく美味い。

「異世界の野菜って美味しいんだね」

「結構難易度高いダンジョンで手に入れた素材らしいから、それが作用してるんじゃない？」

　なんて俺の考え喋ってたら。

「姉御！！　ワインは！？」

「あ、ごめん。忘れてた。ハイこれ！！」

「ひゃっほい！！　今日は飲みますわよー！！」

　姉御て。今日日聞かんぞマジャリスさん。

　あとひゃっほうって……はしゃぎ過ぎだよリリウムさん。