第260話 エルフの手も借りたい

「何を手伝えばいい?」


 魔法陣を潜ってやってきたラベンドラさん。

 最初は料理が出来てる……みたいな表情だったけど、作業途中の物も見つけて一気に表情が明るくなってね。

 もうウッキウキでエプロン付けながら寄ってきたよね。

 可愛いなコイツ。

 ……動きは、な。顔はもうバッチバチのイケメンなんだけども。

 

「じゃあ、用意してある唐揚げを揚げて貰って、その後やみつきキャベツをお願いしていいです?」

「任せろ」


 というわけで下ごしらえが終わってる料理や、すぐ出来る料理をお任せ。

 そうだ、ゴボウのマンドラゴラも居たし、ゴボウの唐揚げもやってもらおう。

 刻んだコンソメをオニオンスープに投入し――あ、やべ、忘れてた。

 遅ればせながら刻んだ人参とセロリをオニオンスープに投下。

 人参はマンドラゴラだけど、セロリはスーパーで買って来たよ。

 居なかったんだよね、セロリのマンドラゴラ。

 

「カケル、他にやることは?」


 で、ブロッコリーに片栗粉をまぶして油に沈め、やみつきキャベツを作り終えたラベンドラさんから追加の指示を仰ぐ声が。

 手際良いね。


「じゃあ、ゴボウの皮を剥いて、一口大に切って水に浸して貰えます?」


 ちなみにゴボウのマンドラゴラは居ました。

 頭葉は無かったです。

 つまりハゲって事。


「分かった」


 で、俺の指示を素直に聞いてゴボウの皮剥きをしてくれるラベンドラさん。

 ……ピーラーとか使わず魔法で一瞬で皮が剥けちゃうの凄すぎて笑っちゃうね。


「じゃあ、順調なのですね!」

「そうそう! ほんとリリウムさん達のおかげだよ!! お礼にあの愚弟はどこまでもこき使っていいからね!!」


 んでそこぉっ!! 

 人が料理してる途中でとんでもない会話してるんじゃねぇ!!

 姉貴ちょっとマジでお前かなぐり捨てンぞ?

 あの四人にこき使われるって、俺何作らされるの?

 懐石料理とか? あれって家で作れるのかな……。


「カケルは何を?」

「人参を切ってます」


 当然皮は剥いてね。

 で、カットした人参をボウルに入れて電子レンジで加熱。

 その間に白菜のクリーム煮の準備。

 白菜洗ってーざく切りしてー。


「フライパンに油を引いて、ニンニクを炒めてもらっていいです?」

「うむ」


 人参の加熱も終わったので、クリーム煮はラベンドラさんに丸投げもとい押し付け――失礼、お願いし、俺は人参とのランデブーに勤しみますわ。

 加熱の終わった人参をマッシャーで潰し……。

 結構力要るなこれ。ラベえも~ん。


「ごめんなさいラベンドラさん、これ潰してもらっていいですか?」

「お安い御用だ」


 ほぅら、見てください。

 あんなに俺が潰すのに苦戦していた人参たちが、瞬きの間に綺麗に潰されていますよ。

 やっぱ魔法って便利だわ。


「ニンニクを炒めた後は?」

「ベーコンを焼いて、焼けたら白菜を投入です」

「了解」


 そろそろゴボウのあく抜きが済んだかな?

 そしたら唐揚げ味付け三点セットの酒、醤油、ニンニク、ショウガを加えましてー。

 ――一個多かったか? まあいいや。

 また少し放置。


「ブロッコリーが揚げ終わったが?」

「お皿に並べといてください」


 さてさて、ここからは完成ラッシュですわよ。

 出来上がった料理がどんどん盛られていくからね。


「姉貴ー、出来た料理運べー」

「リリウムさんよろしくぅ」

「お任せくださいませ」


 客人を使うな客人を。

 あとリリウムさんも任せてなんて言っちゃダメよ。

 いくらその場から動かさずに魔法でお皿動かせるとしても。


「そういや姉貴はどんな酒買って来たの?」

「ドイツに行ってたから、まずビールでしょ?」

「ビール!! わしの血じゃぁっ!!」


 やだよ体にビールが流れてるドワーフとか。

 

「あとドイツワインをたーっくさん」

「ワイン!!」

「お姉さま! 素晴らしいですわ!!」

「楽しみだな」


 ……シレっとリリウムさんが姉貴の事お姉さまとか呼んでたけどさ。

 年の差何歳よ。あと、絶対にリリウムさんの方が年上だからね?

 こう、背中に寒気がするから詳しく掘り下げたりはしないんだけど。


「白菜に火が通ったら?」

「火を弱めて、小麦粉を入れて炒めます。全体に馴染む様にですね」


 白菜のクリーム煮ももうすぐ完成だし、人参餅の方も少しだけ急ぐか。

 潰した人参に片栗粉と、砂糖を少々加えて混ぜ。

 ハンバーグみたく、中にチーズを入れて包んで空気を抜き。

 たっぷりのバターをフライパンに溶かしたら、そこへ並べてじっくりと焼いて行く。


「そろそろゴボウに味が染みたはずなんでそっち揚げてください」

「ラジャー」


 で、揚げ物のゴボウの唐揚げをラベンドラさんに任せ、俺は白菜のクリーム煮へとバトンタッチ。

 牛乳とコンソメを入れ、沸騰するまで弱火で煮たら完成。

 塩コショウで味を調えるのを忘れずにっと。

 後は食べる直前に焼いたバゲット入れて、チーズかければよろし。

 ……今ラジャーって言ったか? また翻訳魔法さんだろ、多分。

 深く考えたら負けよ。


「ほう。随分と豪華な食事じゃな」

「いっぱい野菜がありましたからね、気合入れて作りましたよ」


 テーブルの上に並んでいく料理の数々に、感嘆の声を上げるガブロさん。

 これくらい作らないと姉貴がなんて言うか分からないしね。

 人参餅をひっくり返し、白菜のクリーム煮はお皿に盛り付け。

 冷蔵庫から出汁トマトを取り出し、テーブルにリザーブ。

 冷蔵庫から各種調味料などを取り出していれば、その間に人参餅も焼き上がりまして。


「ゴボウの唐揚げ出来上がりだ」

「こっちも完成です。お待たせしました」


 しっかり計ったように、同じタイミングで俺とラベンドラさんが調理を終える。

 こうやって時間計算しながら料理して、それが上手くいった時の達成感よ。


「もう先程から腹が減って仕方がない」

「どれから食おうか迷うわい」

「ワインも最初から開けてしまいましょう」

「どれもこれも美味そうだ」

「野菜食べるぞー!」


 というわけで、姉貴が一人増えただけで、普段よりさらに賑やかになりそうな晩御飯の始まりである。

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