第202話 現代フルーツを味わえ

 冷蔵庫から苺を取り出しまして。

 それぞれ品種ごとに皿に盛り、皆に提供。

 一応、コンデンスミルクも冷蔵庫に転がってたのでお持ちしました。

 ……ただなぁ、さっきつまみ食いしてみた感じ、コンデンスミルク無しでも全然美味しかったんだよなぁ。

 なんと言うか、苺っぽさって言うの?

 久しぶりに苺を食べた俺が言うのもなんだけど、苺そのものの味だけでバランス取れてたんだよなぁ。

 別にコンデンスミルクをかけることが悪って言ってるわけではないんだけども。


「……美しいな」

「果物ですの?」

「ですです。苺と言って、この世界で人気な果物ですよ」


 さて、翻訳魔法さんはこの『苺』をなんと翻訳してるんだろうな?

 ……頼むから変な翻訳だけはしないでくれよ。


「形や色が違うな」

「姉貴からの贈り物で、四つの品種の食べ比べセット、みたいなもんです」

「という事は全部味が違うのか?」

「そこまで大きく違いはありませんけど、それでも、確実に分かるくらいの違いはありますよ」

「ふぅむ……楽しみじゃわい」


 というわけでみんな思い思いの苺に手を伸ばす。

 まずはガブロさんがあまおうに手を伸ばした。

 うん、イメージ通り。


「……む! 噛んだ瞬間に濃厚な甘みの果汁が溢れてくるわい!!」


 苺の半分くらい? を最初の一口としたガブロさんは、そこからボタボタと零れる果汁を吸いながら感想を話す。

 凄いんだよね、あまおうって。果汁が。

 その果汁も甘くって、微かな酸味を隠しててさ。

 まさに名前の由来に恥じない品種だよ。


「スッキリとした酸味と甘さのバランスが素晴らしいな」


 マジャリスさんはとちおとめが初手。

 これも何と言うか、予想通り。

 ザ・苺! って感じのとちおとめだけど、それは言わば高い部分でまとまってるって事だもんね。

 酸味、甘み、風味、食感。そのどれもが調和してるって事。


「香り高い苺だ……。美味い」


 こちらはかおりのを食べたラベンドラさん。

 多分四人の中で一番驚いた顔をしてるよ。

 まぁ、それくらいかおりのは本当に香りがいいからね。

 あー……焼いてタルトとかにしても香りが飛ばないなら物凄く苺感の強いタルトとか作れただろうな。

 ……そこまで来ると店で買った方が安いか。失敗とかも無いし。


「この……この苺……」


 と思ってたらリリウムさんが淡雪を一口かじって、口元を手で隠して固まってた。

 なんと言うか、淡雪を食べるのはイメージ通りなんだけど、ちゃっかり一番高いやつを選んでる辺りもリリウムさんぽいよな。

 んで? どしたん? 話聞こうか?


「こんな上品な味わいの果物が存在しましたの……?」


 ……分かる。

 何なら、初めて苺で上品な味と感じたまである。

 別に他の苺が下品とかってわけじゃあないのよ。

 ……そりゃあ、あまおうとかは見た目無骨だなとは思うけどさ。

 けどなんだろうな。淡雪はマジで雲の上というか、一段とは言わなくても0.3段くらい上な感じ。

 香りも、甘さも、酸味も。しっかりとそこにあるのに、ふわりと溶けて抜けていく。

 俺の少ないボキャブラリーではこの味を完璧に表現することなんて出来ない……。


「他のも食いたい」

「カケル、それは何だ?」

「コンデンスミルクと言って、苺に合う甘いシロップみたいな奴です」


 練乳って言っても通じるか分かんなかったし、この説明でも大きくは間違えてないはず。


「ちょっと貸してくれ」


 というわけで練乳初体験はガブロさんから。

 手にはとちおとめが握られてござい。


「むっ! 舌にズドンと甘みが来るな!! そして苺の酸味が際立ち、その中から甘みが顔を出す感じじゃわい!!」


 最初に食べたのはあまおうだったしな。

 それに比べたら、とちおとめは酸味が強いだろうよ。

 ……んでまぁ、酸味があった方が練乳は合うと思う。


「粒がデカい……」


 こちらはあまおうに挑戦するラベンドラさんです。

 練乳はかけずに行くみたい。


「食感も違うな。甘みが強い……。酸味はあまり感じられないが、くどい甘さじゃない分さっぱりしている」

「こちらのも美味しいですわね」


 リリウムさんもあまおうを食べてた。

 安心してくれ。不味い苺なんてこの場には存在していないんだ。


「色も真っ赤で奇麗だ。……何か塗っているのか?」

「塗ってないと思いますよ? 自然な果実の赤味なはずです」


 確かに色は奇麗だけどさ。

 何か塗って見栄えを良くするって、流石に売り物にはしないんじゃないか?

 こう……言い方悪いかもだけど、カタログとかの撮影とかではやってても不思議じゃないけど。

 第一、そのまま口に入るものに変なもの塗らんて。


「これほどの赤が自然に?」

「凄いですわね。私たちの世界ならば、『食べられる赤い宝石』とか言って重宝されますわよ」


 ……似たようなことは言われてた気がする。

 あれ? 皮肉だっけ? 日本のフルーツは高すぎて中に宝石が入ってる的な。

 んでもシャインマスカットとかは宝石みたいな呼ばれ方してなかったっけ?

 記憶が曖昧ミーマインだわ。


「まぁ、そういう謳い文句は付いてたりしますよ」


 これくらいでお茶を濁しとくか。


「この白い苺は凄いな。……なんと言うかこう、凄く美味い」


 で、淡雪食べたマジャリスさんが語彙をどこかに落としてきちゃった。

 それはリリウムさんの役目では? 俺は訝しんだ。


「これをかけても美味いが、私はかけない方が好きかもしれない」

「なんでじゃ!? かけた方が甘みも強く、酸味も引き立って美味いじゃろうが」

「それと引き換えに苺の繊細な風味が飛んでしまいますわよ?」

「その風味とコンデンスミルクの甘さとの調和がだな!」


 はいそこ! コンデンスミルクのあり無しでケンカしない!!

 あんまり喧嘩すると苺引っ込めちゃうよ!!

 ……ん、待てよ?


「ラベンドラさん、提案なんですけど」

「なんだ?」

「イチゴと生クリーム、後はチョコなんかも挟んで、デザートサンドにして持って帰るというのは?」

「「やらいでか!!」」


 そんな綺麗にハモんなくても。

 ……やらいでかって言葉で聞いたの、初めてかもしれん。

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