第527話 どうしてくれようか

 いや、確かにフグって河豚って書くけどさぁ。

 それに倣って豚の味しなくていいじゃん。

 ただまぁ、何と言うか、普通の豚肉じゃなくて、高級なというか……。

 ブランド豚っぽい味わいはある。

 ……って、そうか。魚って事は刺身いけるじゃん。

 生の豚肉だと食べられないけど、この『イセカイカワブタ』は刺身いけるじゃんね。

 ……わざわざ豚肉を刺身で食べる理由いず何?

 ユッケとか作ってみるか?


「一応生でも食べておくか」


 味を知らないと料理も作れないし。

 薄切りにして入り塩水にしゃぶしゃぶ……と。

 絵の具みたいな緑色出て来たわ。

 確か、毒属性の呪いがこの色だったよね?


「神様、これ、食べても平気?」

(十分呪いは解呪されとるぞい)


 こればっかりは俺に判断付かないからね。

 異世界の神様が居て本当に助かる。


(そう思うなら早急にワインをじゃな?)


 姉貴から送られてくるのを待ってて下さい。

 ……味見だし、最初は何も付けずに食うか。

 ――っ!? あ、そう!!

 これ、美味いわ!

 生で食べるとフグっぽさが強い。

 なんと言っても身の弾力よ。

 歯が押し返されるんじゃね? と思うほどに強い弾力。

 薄切りにして良かったと思う。これ、ヘタにスーパーで売られてるマグロみたいな厚さに切ってたら噛み切れてない。

 そんぐらい弾力ある。


「噛めば噛むほど美味いな」


 その弾力を楽しみながら噛めば、じんわり広がっていく強いうま味。

 そう言えば、フグ鍋ことてっちり鍋は、最初にフグの身を鍋に入れてポン酢で食べて、その後でフグの出汁が出た鍋に野菜とかを入れて楽しむんだってね。

 それくらい出汁が美味いってのも、こうして食べてみると納得するわ。

 ……いや、まぁ異世界の河豚なんですけれども。


「つまり鍋の方に旨味が出ちゃったのか……」


 塩茹でにして食べた時と、あまりにも味に違いがあり過ぎる。

 茹でた方に旨味が出ちゃったからだろうね。


「とすると鍋は絶対美味い。……これで煮付けとか最高なのでは? 後は……」


 ダメだ。

 ワクワクする。

 このイセカイカワブタで何を作ろうかと思考がマッハで駆け巡る。

 ……脳が……震える。


「……とりあえず、寝るか」


 明日も仕事だし。

 興奮した脳を落ち着けなければ。

 さーて、明日は何を作ろっかなー!!



「フワフワ、美味しい」

「がっつくと喉に詰まるぞ」

「このコーヒーっての、うめぇな」

「じゃろう?」


 現代日本から異世界に戻って来た一同は、セーフゾーンの中で就寝。

 その後、持ち帰ったパンケーキを仲良く頬張っていた。


「リリウム、チョコソースを取ってくれ」

「使い過ぎですわよ?」

「あるのがいけない」

「こっちにも……頂戴」


 ……仲良く頬張っていた。


「もうアイスが無い……」

「一人で使い過ぎだアメノサ! 俺の分が無くなったぞ!!」

「一人で半分以上使ったあなたが言う権利はありませんわよマジャリス?」


 仲良く、頬張っていた。


「にしても、今まで散々お前らが作っていた料理の出処があンなところだったとはな」

「ちなみに先日食わせたラメーンも、俺があの場所で食べて感銘を受けてこの世界に広めたものだ」

「国王会談の時に振舞われたカレーもそうですわよ?」

「チョコもあの場所で知った物じゃわい」


 『無頼』の何気ない一言から始まった、翔が始点の料理の数々。

 当然、『無頼』、アメノサ共に食い付くが……。


「港町のたこ焼きもそうだし、米だってそう。現在醸造ギルドが躍起になっているアイスワインやデザートワインもカケルから教わったな」

「いやいやいやいや、多すぎンだろ……」


 おおよそ、ただの人間一人が与える影響力の範疇を越えており。


「本当に……人間?」

「ちなみにバハムートの身を完全に解呪出来る存在じゃぞ?」

「――大神官?」

「お前の国の大神官は同じことが出来るのか?」

「無理だろうな」


 話を聞けば聞くほど、『無頼』とアメノサの中で翔の存在が大きいものとなっていく。


「まぁ、ああしてフレンドリーに接して飯を作ってくれるが……」

「話した通り、報酬は必須」

「無論、そんな存在に会う事を黙認してくれる神様にもな」

「不敬を働いたらどのような罰が下るか分かりませんもの」


 と、『夢幻泡影』が言ってる中で。


「……お前、血を採ろうとしたりしてねぇよな?」

「――弾かれた」

「お前さぁ……」


 二人は、小声でそんな話をしてたりするが。

 アメノサによって翔の血が採られることは、異世界の神ではなく八百万の神たちの妨害であり。

 その後で、お前の所の住人どうなってんの? と、異世界の神が八百万の神に詰められたりしたものの。

 それは異世界組にはあまり関係の無い話。


「にしても、ああやって食材渡すだけで飯作ってくれるのか」

「しかも確実に美味い奴をな」

「さらに調理法まで教えてくれる」

「……もしかしてあのカケルって奴――神の使いなのかもな」


 本人の知らないところで、何故だか自分の存在がどんどん大きくなっているのだが。

 それは翔が知れない話でもある。



「……香木ってさ。普通流木みたいなものじゃないの?」


 弟の翔から連絡があった通り、いつもの異世界宝石と一緒に、香木も送られてきた。

 送られてきたのだが……。


「こんな延べ棒みたいに加工されたの……売れるかな……」


 その見た目は、あからさまに人の手の入った加工品であり。

 さらに言えば、かなり大きな木を加工して作られたものであり。

 香木を売る伝手はあると言ったものの、果たしてこれが本当に売れるのか、姉貴こと咲苗は僅かに頭を抱えるのだった。

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