第354話 エルフが黙って首を振るレベル

 さて、本日のデザートなんですがね?

 俺としては、結構ギリギリかなって。

 時期としても、デザートって枠に入るかとしても。

 まぁ、とりあえずは作りますけど?


「今から用意か?」

「すぐ出来ますよ」


 というわけでミキサーどん! 牛乳と、それから買って来た各種アイスをドン!!

 ちゃんと季節限定の味ばかり揃えましたわ。


「何をする気だ?」

「本日はシェイクを作ろうかと」


 身近な所だとファストフード店には当たり前に置いてあるし、某アイスクリーム屋さんでも頼めばそこのアイスで作ってくれる。

 アイスと牛乳を混ぜて作る飲み物、それがシェイク。

 というわけで、まずはミキサーに牛乳、それからバニラアイス。

 そして最初は、一箱に六個入りの同梱されたピックを使って食べるアイスの、焼き芋ブリュレ味とか言う最高に美味しそうなやつ。

 もちろん全部入れまして。

 スイッチオン!!


「なるほど、アイスとミルクを混ぜるのか」

「美味しいですよ~」

「だろうな」


 ちなみに会話はずっとラベンドラさんと。

 マジャリスさん? もう既にストロー片手にスタンバってますよ?

 ほい、混ぜ終わり。

 そう言えばだけど、海外のシェイクは普通にスプーンで掬って食べてる動画見たことある。

 あと、ポテトにシェイク付けて食べてるとかなんとか。

 いやまぁ、完全に蛇足なんだけどね?


「最初は焼き芋シェイクです。欲しい方!?」

「俺だ!!」


 名乗りRTA世界記録おめでとうございますマジャリスさん。

 ギリ食い気味と取られない絶妙なスタートダッシュでした。


「? 吸っても出てこないぞ?」

「最初は固いので結構強めに吸わないとダメです」


 最初の一口って滅茶苦茶固いよね、シェイク。

 子供の頃全然吸えなかったの覚えてるわ。

 

「わぷっ!?」


 ……一体誰が想像出来ただろうか?

 強めに吸えと言ったらガチ吸いして口の許容量を超える量を吸い出し。

 慌てて口を離して顔をシェイクまみれにしたエルフが誕生するなど……。

 これが大体の作品で知的に描かれることがあるエルフの姿か?

 ――最近だとどうもエルフよりエロフの方が多い気もするけど……。

 それでもエルフ=森の賢者としてあるはずの存在が顔中シェイクまみれとは……。

 とりあえずティッシュティッシュ。


「……」


 何故俺を見る。

 俺のはアドバイスな訳で、実行したのはマジャリスさんでしょ。

 他責にしないの。


「バカは無視でいい。我々にも早く」

「あ、はい」


 辛辣なラベンドラさんの言葉に促され次のシェイクへ。

 お次はカップアイスの中ではお高めなブランドのアイスね。

 イタリア栗のタルト、だそうですわよ?

 同じくバニラアイス、牛乳と一緒にミキサーに入れ、シェイク。

 出来ましたわぞ~。


「んまぁいいっ!!」


 バカ(ラベンドラさん談)がうるさいけど無視無視。

 

「イタリア栗のシェイクのお客様~」

「私がいただきますわね?」


 というわけでイタリア栗シェイクはリリウムさんの手に。

 お次は……シャリっとした氷の食感が特徴のラクトアイス。

 それのシャインマスカット味ですわぞ~。

 フレッシュかつ爽やかな味わいで、絶対に美味い奴。

 というわけでミキサーへゴー。


「香ばしい香りと濃厚な甘さ。それをミルキーなバニラやミルクの味わいやコクが折り重なる事で……」


 ……リリウムさんは顔にぶちまけなかったか。

 良かった良かった。

 マジャリスさんがどうこうというより、リリウムさんが顔にシェイクをぶちまけてたら絵面的にね?

 別に深い意味はないけど、こう……。

 いけないものを見ちゃった気分になりそうな気がしてね。


「シャインマスカットシェイクお待ち!」

「貰ってくぞい」


 シャインマスカットシェイクはガブロさんの手に。

 さてさて最後はコンビニで調達したフルーツアイスバー。

 フレーバーは和梨。やっぱりね、秋と言えばよね。

 ……そう言えばリンゴ系を見なかったな。俺が探せてないだけか?

 さて、和梨にはバニラアイスを使わないでおこう。 

 そのままを味合わせたいからね。というわけでシェイク!


「わぴゅ!?」


 ガブロさんや、貴方もかい?

 なんで男どもがこう……顔にシェイクをぶちまけるかね……。

 もしさ、この人らにゴム風船にバニラアイスを注入した、卵を模したアイスを食べさせたら大惨事になるんじゃないの?

 絶対に与えないでおこう。


「おー! サッパリとしていてべた付かない甘さじゃな!」


 えー、無事に吸えたガブロさんの反応です。

 もうね、しっかりしてもろて。

 んじゃぁ、最後に俺のを作りますか。

 俺はね、カップアイスのティラミスを買って来たの。

 期間限定にこだわる必要なかったからね。

 ティラミスシェイクが何だかんだ一番美味しいんだから。

 というわけでシェイク。


「サッパリとしていて瑞々しい。香りも華やかでかなり美味い」


 和梨シェイクもお気に召したようで。

 ……マジャリスさん? 今作ってるのは俺のですよ?


「じー」

「飲み終わったんですか?」

「うむ」


 うむ、じゃないが?

 ……まぁ、こんな事もあろうかとアイスはちゃんと各種類を人数分買って来てるんですけどね?

 これ位しないとこの人ら満足しないだろって読み、当たってた。


「お代わり作るんで、とりあえず俺が飲むまで待ってください」

「大丈夫だ。作り方は簡単そうだし俺でも出来るはずだ」

「……」


 なんてこと言ってますけどラベンドラさん? リリウムさん?

 ――あの、黙って首を横に振らないでもろて……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る