第194話 唐揚げワイワイ

「いただきます」


 全員で手を合わせ、しっかりと合唱し。

 まず飛び出したのはガブロさん。

 一目散に箸を伸ばし、ヤンニョムチキンをゲットだぁっ!!


「むほっ!!」


 一口で頬張った瞬間に出てくるのは……うん。

 出来れば誰の口からも聞きたくない言葉なんだよなぁ。

 この言葉に関しては、たとえリリウムさんから聞こえてきたとしても眉をひそめるぞ。


「ガツンとパンチのある味! そして舌にピリリと来る刺激!! そしてそれらを押しのけて流れ込んでくる肉のうま味!! これは完璧で究極の唐揚げじゃあぁっ!!」


 はい、ヤンニョムチキンの感想ありがとうねー。

 で、多分だけど翻訳魔法さんかな? ゲッターとか言い出さなかったから大目に見てやろう。


「うおっ!? こ、口内が燃えるようだ……」


 なんて言いだしたマジャリスさんの方を見たら、ニンニクペーストをたっぷりと乗せた唐揚げが、一口かじられた状態で発見された。

 あー……そういや、ニンニクも希少なんですっけ?

 こんなたっぷり使う事無いかー。


「つ、強すぎる刺激かと思えば、鼻の奥で膨らんで急に角が取れる……。そこから肉のうま味を大いに引き立てる役割に変貌する!!?」


 いや、あの。

 そんな、『僕のデータには載ってないぞ!?』みたいな表情でニンニクペーストを見つめられましても……。

 というか、ニンニクのデータ如き載ってないならデータキャラ辞めちまえ。

 ……多分データキャラではないんだろうけど。


「まぁっ!! 肉をかき消すような強い風味かと思いましたけれど、こちらも時間経過でマイルドになっていきますわ!!」


 リリウムさんはニラペーストか。

 正直、一番心配ではあるんだよね、ニラペースト。

 俺が見てる配信者さんが、これさえあれば他に調味料いらない、って言ってたから作ってみたんだけど、なにせ言ってたのは焼肉やってた時だったからな。

 牛肉とかには合うけど、鶏肉にはどうなのか。我々はその謎を解明するため、エルフ達にニラペーストを振舞った……。

 まぁ、結果は御覧の通りというか……。


「強い風味とワイバーンの肉ががっぷりよつに組み合ったまま、これでもかと口の中を暴れてきますの!」


 ……がっぷりよつとか今日日聞かなくない?

 翻訳魔法さん、割とマジで現代日本語をどう勉強してるんだ?


「お肉のうま味、脂の甘みが引き立てられ、強い風味のおかげでさっぱりと食べられる。これこそ! 唐揚げの真意と見たり! ですわぁ!!」


 さぁ! リリウムさんが盛り上がって参りました!

 というか凄いな、ニラペースト。

 そんななるんだ。


「うむ。やはり甘めのタレが絡んだこれはバランスがいい」


 なお、最後の砦たるラベンドラさんは、落ち着いて照り焼き唐揚げを食べている模様。

 多分だけど、完璧に味のイメージを頭の中で構築出来てたんじゃないかな。

 これまでも照り焼きって作ったことあるし。

 なんと言うか、ラベンドラさんなら全然それくらいの事しそうだよね。


「海苔とゴマの風味がいいな。甘いタレから香る事で、肉や肉汁との間にワンクッション挟まる。それが美味さの要因だな」


 なんかよく分かんないことまで言ってるし。

 なんだろう、俺より詳しく分析するのやめてもらっていいですか?

 それってあなたの感想ですよね?

 

「あ、ちなみに照り焼きにはマヨネーズも合いますよ?」


 悔しいから計算を狂わせてやろう。

 べ、別に! ラベンドラさん達に美味しく食べて貰うためで、全然あんた達以外の為じゃないんだからねっ!

 勘違いしないでよ!!


「なるほど。照り焼きマヨか」


 なお、マヨネーズを差し出したら目を輝かせてこちらを見てきた模様。

 こういうふとした瞬間に見せる、童心みたいな仕草がズルいよなぁ。


「リリウム、そっちの緑のペーストのやつを寄越せ」

「とても美味しいですわよ? あ、ラベンドラ、私にもマヨネーズ付きで照り焼きをくださいな」

「ほれ。もはや安心する味とまで言えそうな代物だ」

「ラベンドラ、こっちを食ってくれ。俺は是非ともこの焼ける様な、燃えるような刺激を向こうの世界でも味わいたい」


 で、エルフ達は自分たちが食べてた唐揚げを独占せずに、みんなに回しながら食べ合ってる。

 ……もう面倒だからと、相盛りにしちゃったけど特に気にしてる様子は無いね。

 流石に鍋とかはまだ出しかねるけど、大皿に盛ってドン! でも特に問題無さそう。

 助かる~。洗い物が減るんですよ。大皿で提供できるようになると。

 というわけで安心できたので俺も食べますか。

 ど・れ・に・し・よ・う・か・な。


「あ、うめ」


 選ばれたのは、照り焼きでした。

 ちゃうねん。ヤンニョムやニンニクペーストは味や刺激がまず強いじゃん?

 ニラペーストもリリウムさんの反応見るに強そうで、だったら照り焼きから食べとかないと味とかを楽しめないんじゃないかって思ったわけ。

 ちなみに俺用の唐揚げはちゃんと別皿に移してある。

 理由は単純、下手したら俺が唐揚げを数個しか食べることが出来ずになくなりそうだから。

 なお、提案はラベンドラさんである。

 出来るエルフは違うね。


「食べ慣れた照り焼き味も、ワイバーン肉だとちょっと感じ方違うな」


 俺が今まで食べてきた照り焼き唐揚げってさ、どうしても照り焼きの味が強くって、メインが照り焼き! って奴ばっかりだったんだけど。

 このワイバーン肉に関しては、そんな事無いんよな。

 しっかりと肉のうま味とか、主張があって、そこに照り焼きの味が合わさってる感じ。

 照り焼きの味に負けてない肉とか、マジで初体験ですわ。


「さぁて、次はっと――」

「カケル、申し訳ありませんけどこちらのおかわりをお願いしても?」


 次はどれにしようか、なんて狙いを定めてたら、リリウムさんからおかわりの大号令が。

 希望はヤンニョムチキンですか。

 ……ラベンドラさん、出番です。唐揚げを揚げるのです。

 ……もう揚げ始めてるじゃん。じゃあ、ついでにタレを絡める所までよろー。

 俺は引き続き唐揚げを食べ進めるでな。

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