第193話 エルフと鋏は使いよう
「今日のメニューは唐揚げか」
魔法陣を通って来たラベンドラさんが、用意された食材を見て即看破してきた。
へへへ、好きでしょ? 唐揚げ。
「奇遇な事に、私たちもお昼は唐揚げでしたのよ?」
「ありゃ。じゃあ別メニューの方が良かったです?」
なんて思ってたら、何と四人はお昼に唐揚げ食べちゃったんだって。
じゃあ違うのがいい? って聞いてみたら、
「いや、唐揚げがいい」
「昼に食べた唐揚げにはワイバーンの肉を使ってなかったからな」
「あっちはあっちで美味しかったですけれどね」
だそうです。
まぁ、俺でも別に唐揚げが二連続になっても特に不満は出ないかな。
……というか、
「ちなみに聞きますけど、どんなお肉を使ったんです?」
何肉で唐揚げを作ったかの方が気になるよな。
で、聞いてみたところ……。
「『――』の肉を使った唐揚げじゃな」
うん、個体判別不可能っと。
「ワイバーン肉と違い、あっさりさっぱりとした肉だったな」
「身の繊維のキメが細かく、上質な甘い脂としっとりした肉質が美味だった」
「肉自体の味は弱めでしたけれど、タレをよく染み込ませていて凄くジューシィでしたわ」
「エールにも合ったぞい」
……くっそ美味しそうな感想飛んできやがった。
気になるじゃん! そんな感想だけ聞かされたら!!
「ちなみにその肉って……」
ここまで言って気が付いた。
ほんとさ、翔ってどこまでも警戒心がないよね。
こんな事言ったら、
「あるぞい」
デンッ!!
ってなるじゃん!!
分かってたじゃん!!
バカ!! まだまだワイバーン肉もあるのに!!
「あ、今貰ってもまだまだワイバーン肉がありますので……」
「む? そりゃあそうか」
あっぶねー。よくやったぞ翔。今回だけは対応が見事だったと褒めてやろう。
だが、今後あのような迂闊な発言を繰り返してたら擁護できないからな?
肝に銘じておけ?
「次回渡せばいいだろう」
まぁ、逃げられないんですけど。
悲しいなぁ。
「それじゃあカケル、私は唐揚げを作っていけばいいのか?」
「あ、はい。そうですね。お願いします」
で、ぬるっと始まるラベンドラさんの調理。
まぁ、唐揚げさえ出来てしまえばこっちのもんだし。
とりあえず、揚げて貰うとして。
「えーっと、リリウムさん?」
「なんでしょう?」
「この野菜を徹底的に叩いてペースト状にしたいんですけど……」
「お安い御用ですわ」
リリウムさんにお願いし、包丁が自立式ニラ叩きマシーンへと魔法によって変貌したのを確認。
しかも丁寧に、ある程度叩いたら一か所にまとめてまた叩く、を繰り返すように魔法をかけてた。
器用かよ。
んじゃあ、俺はその間に……まずはニンニクをマグカップに水ごとぶち込み、電子レンジで加熱。
加熱してる間にヤンニョムタレを作りますわぞ~。
ボウルにコチュジャン、はちみつ、ケチャップ、ごま油、醤油を気の向くままに入れまして。
おまけで豆板醤を追加し、ゴマをふりかけてよく混ぜる。
ここらで加熱してたニンニクが出来上がるので、ガブロさんに渡して皮を剥いてもらい、またまたリリウムさんに頼んで自立式ニンニク叩きマシーンを作成。
オリーブオイルを垂らし、岩塩を意味もなく高い位置から振りかけまして。
ニラの方もだいぶいいので、醤油とごま油を垂らして最後の叩きへ。
「揚がったぞ」
タイミングよく一陣の唐揚げが揚がったので、それをフライパンへ滑り込ませ。
出来立てのヤンニョムタレを絡めながら中火で熱し、全体に絡んだら一つ目完成。
第二陣の唐揚げは、別フライパンに陸揚げしまして。
今度は照り焼きのタレでもって、熱しながら絡めていく。
この時点で匂いがヤバい。
もう美味しいのが確定した美味さ。
換気扇回すと近所への飯テロになるんじゃないかってくらい美味い。
回すけど。
照り焼きもタレが絡んだらお皿に揚げまして、ゴマと刻み海苔を振りかけて完成。
「次だ」
第三陣は簡単よ。揚がった唐揚げをそのままお皿に盛り、唐揚げの上にもうどっさりとニンニクペーストを乗っけるだけ。
明日どころか向こう一週間はデートとか出来ないだろうなー。困っちゃうな―。
……そんな予定はないです。
第四陣も同じくお皿に乗せまして、こっちはたっぷりとニラペーストを乗せて完成。
以上! 四色唐揚げの完成でござる!!
「強烈なにおいが食欲をそそる……」
テーブルの上に置いただけなのに、香ってくるニンニクの匂いを嗅ぎながら、マジャリスさんがそんな事を。
えーっと、ブレスケアは確かあったはずだから大丈夫っと。
「カケル、サラダは?」
「あ、忘れてました」
ラベンドラさんに言われ、冷蔵庫から千切りされた袋詰めのミックスサラダを取り出しましてっと。
危ない危ない。
ワイバーン肉とご飯だけで晩御飯にしちゃうところだった。
……一人暮らしだったらそれでもいいんだけどねぇ。
やっぱりこう、野菜は取っとかなきゃって思いはあるよね。
という事でお皿にこんもりとミックスサラダを盛りまして。
本日の味噌汁は白みその大根とほうれん草のやーつ。
お漬物は沢庵にしました。
特に意味はない。
「それじゃあお待たせしました」
さて、と。
それじゃあ向かおうか。
美味いが確定している、勝ち戦へ!!
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